速すぎる!広島・辰見がプロ野球記録タイ 今季代走で25盗塁 残り26戦現ドラから歴史作る 逆転勝ち3位4差CSへ突っ走る
「中日2-5広島」(3日、バンテリンドーム)
速すぎる!広島・辰見鴻之介内野手(25)が代走でのシーズン25盗塁目を決め、1979年の藤瀬史朗(近鉄)のプロ野球記録に並んだ。七回1死で出塁したモンテロに代わってさっそうと登場。坂倉の打席でスタートを切り、一度はアウトが宣告されるもリクエストで判定が覆り、大記録に肩を並べた。チームは2カードぶりの勝ち越しで、4位・ヤクルトに1ゲーム差に接近した。
獲物を狙うような鋭い眼光を飛ばし、その時をうかがう。「まあまあいいスタートを切れたと思います」。一瞬でトップスピードに乗ると、代名詞のヘッドスライディングで二塁に到達。アウトが宣告されるも、辰見は“成功”を確信していた。ベンチにすぐさまリクエストを要求。判定が覆ると敵地にどよめきが広がる中で小さくうなずいた。
七回1死からモンテロが右前打で出塁。「代走・辰見」がコールされると、赤く染まった左翼席が沸いた。続く坂倉への5球目にスタートし、今季26盗塁目に成功。代走では25盗塁とし、1979年の近鉄・藤瀬史朗のプロ野球記録に並んだ。1日の試合後に「早く終わらせたい」と意気込んでいた中、有言実行の記録到達となった。
移籍を機に封印を解いたヘッドスライディング。それに伴って足以外にも傷が増えた。当初は新たな“勲章”にしみる水を痛がりながら浴びていたシャワーも盗塁を積み重ねるうちに「もう慣れました」と静かに笑う。しびれる場面で相手バッテリーの警戒を何度もかいくぐってきた代走の切り札。ここまでのベスト盗塁は-。「まだないです。スタートもスライディングもまだまだです」。グラウンドを駆け抜けるスピードスターの進化は、まだ止まらない。
辰見が「心の支え。感謝してもしきれない」と語るのが、赤松外野守備走塁コーチの存在だ。同コーチが指導の根底に置くのは「まだ1年目」という考え方。今季が4年目だが1軍に1年間帯同するのは初めて。「失敗したらどうしようとか、ホームにかえれなかったらどうしようとか気負わずにやってほしい」。この日もけん制で逆を突かれ「かかり気味だった」と振り返る辰見に、「焦るなよ」と声をかけ、成功を後押し。二人三脚で積み重ねてきた努力が、最高の形で実を結んだ。
代走としての仕事は「ホームを踏むこと。盗塁はその手段に過ぎない」と辰見は言う。この日は坂倉の適時二塁打で今季13得点目をマーク。「盗塁を決めるだけよりも得点できるとうれしい」と、充実感を漂わせた。プロ野球記録に肩を並べても、「シーズンの中の1盗塁という認識。シーズンが終わった時に(記録達成を)感じたい」。鯉の韋駄天(いだてん)にとっては偉業すらも通過点。さらなる高みと本塁を目指して走り続ける。
◇代走のエキスパート藤瀬 近鉄に75年ドラフト外で入団した藤瀬史朗は、抜群の脚力を生かし主に代走で活躍した。1軍デビューの77年に10盗塁をマーク。79年にはキャリアハイの27盗塁を決め、同年から3年連続でチーム最多盗塁を記録した。79年広島との日本シリーズでは「江夏の21球」で知られる第7戦九回裏に代走で出場。1死満塁で相手バッテリーにスクイズを見破られ、三本間に挟まれタッチアウトとなったことでも知られる。実働7年ながら117盗塁は近鉄歴代9位。
