「投資商品は何を買えばいいですか?」と相談されるFPが〈資産運用を誤解している…〉と感じたワケ【資産運用会社32年勤務のFPが解説】
「資産運用を始めたいのですが、何を買えばいいですか?」--FPとして相談を受けていると、この質問を非常によく耳にします。世の中では、「資産運用」と「投資」がほぼ同じ意味で使われているケースが少なくありません。しかし、本来の意味で考えると、資産運用と投資は同じではありません。投資は資産運用において活用される選択肢の一つであり、資産運用はもっと広い概念です。では、本来の資産運用とは何なのでしょうか。今回は、資産運用の本当の意味についてFPの前田敏氏が解説します。
資産運用は何のために行うのか
資産運用について考える際、まず整理したいのは、「何のために資産運用を行うのか」という点です。例えば、以下のような目的が考えられます。
老後を安心して暮らしたい 子どもに十分な教育機会を与えたい マイホームを取得したい 相続に備えたい 将来のお金に対する不安を減らしたいこれらの目的を実現するために、「老後資金を準備する」「教育資金を確保する」「住宅購入資金を計画的に準備する」といった具体的な目標が生まれます。
資産運用とは、こうした目標を達成するために資産を管理・活用する手段です。つまり、資産運用そのものが目的ではありません。人生で実現したいことがあり、その実現を支える手段として資産運用があるのです。
資産運用は投資商品だけを考えるものではない
資産運用というと、投資信託や株式だけをイメージする方が少なくありません。しかし、FPが実際に確認するのは、下記を含めたさらに広い範囲です。
預貯金 株式 投資信託 債券 不動産 保険 公的年金 企業年金 退職金さらに、住宅ローンや自動車ローン、その他の借入金といった負債も重要な要素です。なぜなら、資産運用を考える際には、保有している資産だけでなく、負債も含めた全体像を把握する必要があるからです。
資産運用の本質は「資産配分」
「私は投資をしていないので、資産運用はしていません」
そう話される方がいます。しかし、それは必ずしも正しくありません。
例えば、「預金を●●万円保有している」という人も、資産運用を行っていることになります。なぜなら、「預金を選択する」という選択も資産運用の一つだからです。預金には元本割れのリスクが低く、必要なときにすぐ使えるというメリットがあります。一方で、インフレに弱く、大きな資産成長は期待しにくいという側面もあります。
つまり、重要なのは投資をしているかどうかではなく、どのような資産配分を行うかということです。
資産運用の相談では、
「どの投資信託を買えばいいですか」
「おすすめのNISA商品はありますか」
といった質問を受けることがあります。しかし、私が最初に確認するのは投資商品ではありません。
まず把握するのは、
預貯金や有価証券などの金融資産 不動産や保険などの保有資産 住宅ローンなどの負債 毎月の収入と支出 将来実現したいライフプランや目的などです。これらを把握しなければ、その人にとって適切な資産配分を考えることはできません。
例えば、住宅購入を予定している人と老後資金の形成を優先している人では、望ましい資産配分は異なります。また、多額の住宅ローンを抱えている人と十分な金融資産を保有している人でも、望ましい資産配分は変わります。
それぞれの状況や目的に応じた資産配分を考えることが重要なのです。
投資は資産運用における選択肢の一つです。まずは「何を買うか」ではなく、「どのような人生を実現したいのか」を考えること。そして、その目的に応じた資産配分を考えること。それが資産運用の出発点といえるでしょう。
前田 敏
マネー・マネジメントFPオフィス
代表

