「娘にやらせたくない」アスリートのユニフォーム“男女で露出の差”に物議…現役女子陸上選手が本音を激白「言いたいことは分かるが…」科学的根拠を専門家が解説

アスリートのユニフォームにおける男女の「面積差」がSNS上で物議を醸している。きっかけとなったのは、インターハイの陸上競技に関する投稿。「同じ大会なのに面積差が…」「ユニフォームで男女差があるのはナゼ?」「親として娘に陸上やらせたくない」といった声が上がっている。
疑問視される一方で、「空気抵抗などの理由があるのでは?」「文句を言っているのは当事者なの?」といった意見も寄せられ、議論を呼んでいる。
ニュース番組『わたしとニュース』では、アスリートのユニフォームにおける男女の面積差を巡る問題について、弁護士の三輪記子氏とともに考えた。
■「やらせたくない」親の不安と、女子選手が「セパレート型」を選ぶ理由

SNS上の投稿に対し、日本スポーツとジェンダー学会の会員でありハラスメントにも詳しい三輪氏は「親として娘がこの格好を晒すのが嫌だという人がいること自体はなるほどなと思った」と理解を示す。その一方で、自身も陸上競技の経験があることから「こういう格好で堂々と出られるのがかっこいいと思う人もいる。どうしてこういう差があるのかという気づきや問題提起については、一緒に考えていけばいいのではないか」と語る。
実際に陸上競技を行っている女子選手は、どのように考えているのだろうか。
短距離走や走り幅跳び、砲丸投げなど7種目の陸上競技を行う七種競技の選手であり、大学の陸上部で現役学生の指導も行っているS&B SPICE所属の泉谷莉子氏は、高校時代からセパレートタイプのユニフォームを着用してきた。
着用し始めたきっかけについて、泉谷氏は「『みんなが着ているから』という形だったので、『強豪校のユニフォームってああいうものが多いんだな』となんとなく思っていた。自分も陸上の強豪校と言われる高校や大学に入ったので、あまり違和感を感じず(セパレートタイプを)着用していた」と振り返る。
自由度が高まる社会人以降もセパレート型を選んだのは、動きやすさを重視してのことだったという。「セパレートの方が試合の時は記録が出やすいというか、動きやすいなとは個人的には感じる」と説明する。一方で、「タンクトップとショートタイツでユニフォームを選択してトップ層で活躍されている女子の陸上選手もいるので、セパレートを着たくない、動きやすさなどもあまり気にならない方々はそういう選択をしているので、個人の自由なのかなと思う」と語った。
また、ユニフォームの面積差がSNSで物議を醸していることについては「言いたいことは分かる」と一定の理解を示しつつも、「だけど、その人たちは実際の陸上選手じゃないと思う。本当に動いたことないよね、本当に競技したことないじゃん。『女子の服もそれで統一、男子と全く一緒』とされても、それはそれで違うなと思いながら…。でも『自己防衛のためにそういう服を選べばいいじゃん』という意見もすごく分かる。だから、個人が選択すればいいと思う」と述べた。
■「男女同じにしろ」の議論に潜む、性差への思い込み
泉谷氏の「個人が選択すればいい」という言葉を受け、三輪氏は「基本的には個人の選択の自由。『こういう服を着ろ』『こういう服を着るな』は両方とも強制であり、ふさわしくない。自分が好きなスタイルで好きにプレーをすればいいと思う」と同調した。
強豪校というキーワードについても、「強そうに見えるユニフォームを着たいというのはあると思う。強そうに見えるユニフォームを着ることで、自分自身が心がリラックスして競技に臨めるのであれば、それは競技力向上という意味でもその通りだと思う」と指摘する。
さらに、男女のユニフォームの面積差を巡る世間の議論については「男女同じにしろという時に、男に合わせろと多くの人が受け取ったと思うが、それもおかしい」と疑問を投げかける。「男性が女性と同じユニフォームを着ろという意見が出てきてもおかしくないのに、そういうのは基本的には出てこない。そこに男女の不均衡が表れている。そこには、みんなの思い込みがあると思う」と持論を述べた。
■科学的に有利なのは? スポーツ流体工学から見たユニフォームの機能性
では、女子選手に多い「お腹の出たセパレート型」と、男子選手に多い「お腹の隠れたユニフォーム」では、どちらがパフォーマンスに有利なのだろうか。
スポーツ流体工学を研究する工学院大学の瀬尾和哉教授によると、「腹部を出すことで動きやすさや放熱といったポジティブな側面はある」としつつも「(科学的に)お腹がむき出しになっているよりも、ユニフォームで覆った方がいい」のだという。
瀬尾氏によると、体にぴったり合ったユニフォームを着用すると、空気が体の表面に沿ってスムーズに後ろに流れていく。しかし、お腹の部分がむき出しになっていると風をコントロールする生地がないため、どうしてもデコボコが生じて風が体の表面から離れてしまう。その結果、背中側に空気の渦ができてしまい、体を後ろに引っ張るブレーキになるという。
お腹が隠れていても、体にフィットしていない服であれば生地がバタバタと揺れ、空気の渦がさらに大きくなってしまう。そのため、空気抵抗だけを考えた場合に最も効率が良いのは「体にフィットしてお腹まで覆っているユニフォーム」であり、次に良いのが「セパレート型」、最も抵抗が大きいのが「ゆったりしたタイプのユニフォーム」となる。
また、女性選手に多い「胸をしっかり支えた方がいいのではないか」という観点について、瀬尾氏は、揺れによる不快感やエネルギー消耗を抑える効果はあるものの、空気抵抗を減らして速度を上げるという面においては特に影響はないと解説した。
科学的な効率性はあるものの、何を着るかは最終的に選手自身の精神面に左右される。三輪氏は「人間がやることなので、すごくメンタルで左右される。だから、ユニフォームによってメンタルの状態が変わるのなら、工学的な理由よりも、もしかしたらメンタルの方が影響が大きいかもしれない。トータルで考えると、やっぱり自分で選べばいいという話になる」と語り、アスリート自身が自由にユニフォームを選択できることの重要性を訴えた。
(『わたしとニュース』より)
