「男性ホルモン」が少ない「男性の特徴」はご存知ですか?性格や行動の特徴も医師が解説!
男性ホルモンが少ない男性の特徴とは?メディカルドック監修医が体型の変化や顔・性格や行動面の変化などを解説します。
監修医師:
石川 智啓(医師)
2013年名古屋大学医学部卒。初期研修修了後、JCHO中京病院泌尿器科、小牧市民病院泌尿器科、名古屋大学医学部附属病院泌尿器科を経て、現在水野内科クリニックで勤務。日本泌尿器科学会専門医、da Vinci Surgical System コンソールサージャン・サーティフィケートの資格を有する。
「男性ホルモン」とは?

男性ホルモンとは、男性らしいからだつきや性機能をつくり出すホルモンの総称で、専門的には「アンドロゲン」と呼ばれます。その代表格が「テストステロン」で、男性ホルモンの働きの大部分を担っています。アンドロゲンにはこのほか、テストステロンから作られてより強く作用する「ジヒドロテストステロン(DHT)」や、その前段階の「DHEA」などがあります。血液中のテストステロンの多くはタンパク質と結びついて運ばれており、実際に効果を発揮するのは、タンパク質と結合していない「遊離テストステロン」と呼ばれる一部です。加齢などでこのテストステロンが不足し、心やからだの不調が現れる状態は「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症、いわゆる男性更年期)」として知られています。
男性ホルモンはどこから分泌されるの?

テストステロンの95%以上は、精巣(睾丸)の中にある「ライディッヒ細胞」という細胞から分泌され、残りは腎臓の上にある副腎からわずかに作られます。その分泌量は、脳が司令塔となって調整しています。まず脳の視床下部(ししょうかぶ)から指令が出て、その下にある下垂体(かすいたい)から「黄体形成ホルモン(LH)」が分泌され、これが精巣を刺激してテストステロンを作らせる、という流れです(この一連の仕組みを「視床下部-下垂体-精巣系」と呼びます)。血液中のテストステロンが増えると脳が指令を弱め、量が一定に保たれます。また分泌には一日の中でリズムがあり、朝に高く夕方に低くなるため、血液検査は午前中に行うのが基本です。
男性ホルモンの働き(役割)

筋肉や骨を強く保つ働き
テストステロンには、筋肉のもとになるタンパク質の合成を促し、筋肉量や筋力を維持する作用があります。また骨を作る細胞に働きかけ、骨の強さ(骨密度)を保つ役割も担っています。そのため不足すると、筋力の低下や骨のもろさにつながります。
性欲や生殖機能を支える働き
性欲(リビドー)を保ち、勃起の機能や、精子がつくられる過程を支えるのもテストステロンの重要な役割です。男性の性機能と深く関わるホルモンで、不足すると性欲低下や勃起障害(ED)が起こりやすくなります。
血液(赤血球)をつくる働き
あまり知られていませんが、テストステロンは赤血球を増やす働きも持っています。腎臓から出る「エリスロポエチン」という赤血球を作る指令ホルモンを増やし、鉄の利用を調整することで、造血(血液づくり)を助けます。そのため不足すると、貧血傾向がみられることがあります。
気分や意欲など心の安定を支える働き
テストステロンは、やる気や集中力、気分の安定といった精神面にも関わります。十分に分泌されていると意欲が保たれやすく、不足すると気分の落ち込みや疲れやすさにつながることが知られています。
男性らしい外見や代謝を保つ働き
思春期にヒゲや体毛を生やし、声を低くするなど、男性らしい第二次性徴を促すのもテストステロン(主に活性型のDHT)の働きです。さらに内臓脂肪を減らし、糖や脂質の代謝を整える作用もあり、生活習慣病とも関わります。
男性ホルモンの分泌が減少する原因

加齢による自然な低下
テストステロンは20~30代をピークに、中年以降ゆるやかに低下していきます。女性の閉経のような急激な変化ではなく、少しずつ減っていくのが特徴です。この加齢に伴う低下と心身の不調が重なった状態が、LOH症候群(男性更年期)です。
肥満・メタボリックシンドローム
内臓脂肪が多いとテストステロンが下がりやすく、テストステロンが下がるとさらに内臓脂肪が増える、という悪循環(双方向の関係)が知られています。肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪の蓄積に高血圧や高血糖などが重なった状態)は、男性ホルモン低下の大きな原因の一つです。
睡眠不足
睡眠はテストステロンの分泌に欠かせません。健康な若い男性でも、睡眠を1日5時間に制限する生活を1週間続けただけで、日中のテストステロンが約10~15%低下したという研究があります。慢性的な寝不足は分泌を妨げます。
慢性的なストレス
強いストレスが続くと、ストレスホルモン(コルチゾール)の影響などによって、テストステロンの分泌が抑えられます。精神的な負担の大きい生活は、男性ホルモンを低下させる要因になります。
生活習慣や持病・薬の影響
運動不足、過度の飲酒、喫煙といった生活習慣も分泌を低下させます。また糖尿病などの慢性疾患や、精巣・下垂体の病気、一部の薬(ステロイドや医療用麻薬など)が原因となることもあります。
男性ホルモンが少ないと男性の体型にどんな変化が現れる?

お腹まわりの脂肪(内臓脂肪)が増える
テストステロンが減ると脂肪が蓄積しやすくなり、とくにお腹まわりの内臓脂肪が増えます。これはメタボリックシンドロームの一因にもなります。
筋肉量・筋力が落ちる
筋肉を維持する作用が弱まるため、筋肉量が減り、力が入りにくくなったり、疲れやすくなったりします。
骨がもろくなる
骨の強さを保つ働きが低下し、骨密度が下がります。進行すると骨粗鬆症(こつそしょうしょう=骨がもろくなり折れやすくなる状態)や骨折のリスクが高まります。
体型のメリハリが失われる
筋肉が減り脂肪が増えることで、引き締まりのない、たるんだ体型に変化しやすくなります。
血糖や脂質の異常を伴いやすい
低テストステロンは、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)や脂質異常とも関連し、メタボリックシンドロームを招きやすいことがわかっています。
男性ホルモンが少ないと男性の性格や行動にどんな変化が現れる

やる気・活力の低下
テストステロンが不足すると、何事にも意欲がわきにくくなり、以前は楽しめていたことにも関心が持てなくなることがあります。活力の低下は、LOH症候群の代表的な症状です。
気分の落ち込み(抑うつ)
気分が沈む、憂うつになるといった抑うつ的な状態が現れやすくなります。うつ病と見分けがつきにくいこともあり、注意が必要です。
イライラや不安感
些細なことで苛立ったり、理由のない不安を感じたりと、感情が不安定になることがあります。
集中力・記憶力の低下
頭が働きにくく、集中力や記憶力が落ちたと感じることがあります。仕事の能率低下につながることもあります。
疲労感や睡眠の乱れ
十分に休んでも疲れが取れない、よく眠れないといった症状もみられます。日中の強い眠気や倦怠感を伴うこともあります。
男性ホルモンが少ないと顔にどのような特徴が現れる?

顔つきや見た目から男性ホルモンの量を判断できるという情報を見かけますが、その多くは科学的な根拠が十分ではありません。ここでは、関連が指摘されている点と、注意すべき点を整理します。
ヒゲや体毛の変化
テストステロン(活性型のDHT)は、思春期のヒゲや体毛の発育に不可欠です。ただし大人になってからの体毛の濃さは、毛根の感受性や遺伝の影響が大きく、「ホルモンが少ない=必ず体毛が薄い」と単純には言えません。
肌の変化
皮脂の分泌などに関わるため肌質に影響する可能性はありますが、「肌を見ればホルモン量がわかる」といえるほどの確かな証拠はありません。
むくみや脂肪による顔つきの変化
直接の作用というより、体脂肪の増加などからだ全体の変化を通じて、顔まわりの印象が変わることはあります。
表情の乏しさ・生気のなさ
意欲や気分の低下(前述)に伴って、表情が乏しく元気がなさそうに見えることがあります。これはホルモンが顔に直接作用した結果ではありません。
男性ホルモンの分泌を整える・コントロールする方法

運動を習慣にする
適度な運動は、体脂肪を減らし筋肉を保つうえで有効です。ただし「筋トレをすれば必ずテストステロン値が上がる」というほど単純ではなく、数値そのものより体調や体組成(筋肉と脂肪のバランス)の改善を目的に、無理なく続けることが大切です。
適正体重を保つ(減量)
肥満はテストステロン低下の悪循環を招くため、減量は分泌を整えるうえで重要です。食べ過ぎを避け、バランスのよい食事を心がけましょう。
十分な睡眠をとる
睡眠不足はテストステロンを下げます。毎日しっかり眠り、睡眠の質を保つことが、分泌の維持につながります。
禁煙・節酒とストレス対策
喫煙や過度の飲酒は分泌を妨げます。禁煙・節酒に取り組み、趣味やリラックスの時間を持って、ストレスをためないことも大切です。
医療機関への相談と補充療法(TRT)
生活改善で十分でない場合や症状が強い場合は、泌尿器科などを受診しましょう。検査でテストステロンが低いと確認され、症状がある場合には、テストステロン補充療法(TRT=注射などで不足分を補う治療)が選択肢になります。ただし前立腺がんなどでは行えないため、専門医の判断が必要です。
「男性ホルモンが少ない男性の特徴」についてよくある質問

ここまで男性ホルモンが少ない男性の特徴について紹介しました。ここでは「男性ホルモンが少ない男性の特徴」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
射精が少ないと男性ホルモンはどうなりますか?
石川 智啓 医師
ネット上には「禁欲すると男性ホルモンが大幅に増える」という説がありますが、その根拠とされた研究は、二重投稿(同じ内容を別の雑誌にも発表していたこと)を理由に2021年に撤回されており、科学的な裏づけとしては使えません。仮にその結果を踏まえても、上昇は一時的な一度きりのもので、禁欲を続ければ男性ホルモンが高く保たれることを示すものではありません。射精や自慰の頻度が、長期的な血液中のテストステロン値を大きく上下させるという確かな証拠は、今のところ乏しいのが実情です。心配な症状があるときは、頻度を気にするよりも、医療機関で検査を受けることをおすすめします。
まとめ自己判断せず、生活習慣の見直しと専門医への相談を
男性ホルモン(テストステロン)は、筋肉や骨、性機能、造血、意欲など、からだと心の幅広い働きを支えるホルモンです。加齢や肥満、睡眠不足、ストレスなどで低下すると、内臓脂肪の増加や筋力低下、気分の落ち込みや意欲の低下といったさまざまな変化が現れることがあります。
一方で、「顔つきや体毛だけで男性ホルモンの多い・少ないがわかる」といった話は科学的な根拠が弱く、見た目だけの自己判断は禁物です。気になる症状があるときは、まず運動・減量・睡眠・節酒といった生活習慣の見直しを心がけ、それでも改善しない場合や症状が強い場合は、泌尿器科などの医療機関で血液検査を受けましょう。必要に応じて、テストステロン補充療法などの治療も選択できます。適切な対処のために、自己判断せず専門医に相談することが大切です。
「男性ホルモン」と関連する病気
「男性ホルモン」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
泌尿器科系
LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症)
男性性腺機能低下症
勃起障害(ED)
前立腺肥大症内科系
骨粗鬆症メタボリックシンドローム2型糖尿病精神科系
うつ病単なる年齢のせいだと思っていた不調の裏に、男性ホルモンの減少による病気が隠れていることがあります。
「男性ホルモン」と関連する症状
「男性ホルモン」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
性欲低下
勃起障害
疲労感
倦怠感ほてり発汗
筋力低下
抑うつ
意欲低下
集中力の低下
男性ホルモンの低下は、意欲や気力の減退から性機能の低下まで、多岐にわたる症状となって現れます。
参考文献
LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き|日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会
男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)|日本内分泌学会
LOH症候群・男性更年期とは|日本メンズヘルス医学会
男性の性腺機能低下症(LOH症候群)|長寿科学振興財団健康長寿ネット

