元国税局員が断言「ワンルーム投資で節税できるのは年収2200万円超だけ」…〈蔵前・家賃10万4000円〉の物件を年収690万円の運送業男性が買った衝撃結果【不動産Gメンが解説】
物価上昇が続くなか、安定収入を増やす目的で不動産投資を始める人が増えている。こうしたなか、不動産業者から「節税になりますよ」「リスクが低いですよ」と勧められ、初心者が「ワンルーム投資」に手を出すケースも後を絶たない。しかし、『その家、買ってはいけない』(PHP研究所)の著者で、YouTube登録者数70万人超の“不動産Gメン”滝島一統氏だけでなく、元国税局員でさえも安易な不動産投資に警鐘を鳴らす。同書より、その理由を見ていく。
年収400万~500万円の人のワンルーム投資は節税にならない
業者が使う売り文句の中で、「節税になる」というトークほど根強いものはない。このトークはパワーカップルや高収入層に特に刺さりやすい。私はこれを「損をしているだけで節税ではない」と繰り返し主張してきたが、それを税務の専門家が明確に裏付ける機会があった。
財務省のキャリア官僚として勤務し、高松国税局で税務調査・査察に携わってきた専門家と対談した際の話だ。
私が「年収400万~500万円の人がワンルームを買っても、節税にならないと思うのだが」と問うと、即座に「絶対ダメです」と答えが返ってきた。その理由はこうだ。
ワンルーム投資で得をするのは「年収2200万円超」だけ
ワンルーム投資の「節税効果」とは、減価償却によって所得を圧縮し、税金の還付を受けることを指す。しかしこれは税金の「繰り延べ」にすぎず、売却時に結局まとめて課税される。繰り延べた分の税率と、売却時の税率を比較して初めて得か損かが決まる。
売却時の税率(譲渡所得税。5年超保有で約20%)が低くなる人、すなわち「節税になる分岐点」は、年収がおよそ2200万円を超える水準だという。
「年収400万~500万円の人は、ワンルームを買っても損にしかならない」─-これが元国税局員の断言だ。さらに「手出しがある時点でやってはいけない」とも言い切った。
実際、税金は戻ってくるが…業者が言う「節税」の本当の意味
業者が「節税になる」と言うとき、彼らは噓をついているわけではないかもしれない。帳簿の上では確かに税金が還付されるからだ。
しかしその還付額よりも大きな実損が出ているのに、「税金が戻ってきた」という事実だけを切り取って「節税」と呼ぶのは、意図的な誘導だ。年間24万円の赤字を出して31万円の還付を受けても、差し引きのプラスは7万~8万円にすぎない。
重ねて言うが、売却時にそれまで還付された税金を、実質的に一括返納することになる。さらにその間にも物件の価値は下がり続ける。これを節税と呼ぶことには、私は強い違和感を覚える。
税務の専門家は「情弱ビジネスになっている」と表現していた。その言葉通り、ワンルーム投資の「節税」トークは、不動産に詳しくない人の知識の空白を突くものだ。
「節税になる」という言葉を聞いたとき、まず「自分の年収はいくらか」「手出しはいくらか」「売却時にいくら課税されるか」をしっかりと確認してほしい。そのプロセスを飛ばして契約させるのが、業者のやり方だからだ。
“リスクが低い”と謳われる「サブリース契約」の問題点
ワンルーム投資の問題を語るとき、サブリース契約の話を避けて通ることはできない。サブリース契約とは、物件オーナー〈大家〉から不動産会社が一括で借り上げ、それを入居者に転貸する仕組みだ。不動産会社が間に入ることで、空室時も一定の家賃が保証されるという売り文句で、「リスクが低い」と説明される。
だが、問題は2点ある。
1.「保証家賃」は変動する
第一に、「保証家賃」は変動する。たとえば入居者が払う家賃が10万円であれば、サブリース後にオーナーに払われる金額は9万~9万5000円程度だ。
この差額が不動産会社の利益だが、空室が続けば会社は「保証家賃」を引き下げようとする。契約書の細かい条項を読まずにいると、気づかないうちに家賃が下げられていることもある。
2.解約が難しい
第二の問題が、解約の難しさだ。借地借家法の下では、賃借人の権利は強く保護されている。サブリース契約の場合、不動産会社が「賃借人」の立場にあるため、オーナーが一方的に契約を解除することは難しい。
悪質な業者の中には、「解約できない」という条項を契約書に明記しているケースもある。「本契約期間中、甲及び乙いずれも相手方に対し正当な事由がない限り途中解約することはできない」─そんな文言が小さい字で書かれている。
年収690万円・運送業男性が買った「利回り3.56%のワンルーム」
運送業で年収690万円の男性が購入したワンルームマンションの事例を紹介しよう。
東京・台東区のJR蔵前駅から徒歩3分、購入価格3500万円、金利1.65%、35年ローン。家賃は10万4000円で、サブリース後にオーナーである男性に振り込まれるのは9万2000円だ。固定費を引くと月々1万9000円の赤字になる。
利回りは3.56%。この数字は不動産投資として危険水域を超えている。港区南麻布などの一等地であれば、高い価格が維持されるため、このくらいの利回りでもいいかもしれない。
蔵前は最近オシャレなカフェなどができて人気が出ているというが、不動産投資でそこまでのポテンシャルはない。そんな低い利回りになるのは、例によって相場よりも高い金額で買わされているからだ。
さらに深刻なのは、サブリース契約の内容だ。この物件の購入は、融資の条件としてサブリース契約の締結が求められていた。銀行にとっては空室リスクが下がるから貸しやすく、販売会社にとっては毎月の差額収入が入り続ける旨みがある。損をするのはオーナーだけだ。
「解約できない」…サブリース契約に記されていた“最悪の一文”
さらにそのサブリース契約には、「解約できない」という条項があった。最悪のパターンだ。サブリースが解約できなければ、物件を売るのが難しくなる。買い手にとって、サブリース付きの物件は不確定要素が多く、価値が下がるからだ。そうして、身動きが取れないまま、毎月の赤字だけが積み上がっていく。
結局この男性は、サブリース付きで売値が下がっても物件を売却することを決めた。販売会社の担当者からは「蔵前はこれから値上がりしますから」と2時間にわたって説得されたという。最後は「うちに売ってくれれば手数料はかかりませんよ」と言われたそうだ。
「絶対にその会社に売ってはいけない」と私は伝えた。相場よりも高い金額で売りつける業者が、相場通りの値段で買い取るわけがない。1~2%の手数料を取らない代わりに、500万円安く買い叩くのが彼らのやり口だ。顧客が離れるときでさえ、利益を搾り取ろうとチャンスをうかがっているのだ。
滝島 一統
株式会社光文堂インターナショナル
代表

