ヨルダン川西岸の丘陵地帯にあるE1地区。奥はマアレ・アドミム入植地(8月23日)=福島利之撮影

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 【エルサレム=福島利之】イスラエル政府は8月中旬から、エルサレム東郊にあるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のE1地区に入植地を設けるため、建設業者など向けに入札を始めた。

 英独仏などの欧州各国や日本は撤回を求める中、イスラエルはパレスチナ人住民の追い出しを進めている。

南北に分断 

 E1地区は、西岸の最大規模の入植地マアレ・アドミムと東エルサレムの間にある12平方キロ・メートルの丘陵地で、数千人のパレスチナ人が暮らしていた。

 イスラエルは1990年代からこの地区を入植地にしようと、開発を計画してきた。しかし、ヨルダン川西岸が南北に分断され、パレスチナ国家樹立の際の首都となる東エルサレムが西岸と切り離されるため、イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」がさらに困難になる。このため国際社会が反対し、計画は凍結されてきた。

 しかし、パレスチナ国家の樹立を認めないベンヤミン・ネタニヤフ政権は昨年8月、計3401戸の入植地建設の計画を承認し、先月18日からこのうち1234戸の入札を開始した。入札は、イスラエルの総選挙が行われる10月27日の直前の19日に締め切られる。

 入植地を監視するイスラエル国内のNGO「ピース・ナウ」は「選挙前に建設業者と契約することで、仮にネタニヤフ政権が続かなくても、次の政権が中止できないようにしている」と既成事実化を進めているとみる。

「全て奪われた」 

 E1地区のパレスチナ住民は、立ち退きを余儀なくされている。タクシー運転手ムハンマド・ムーサさん(28)の自宅には昨年8月、イスラエルの治安部隊が現れた。「家を壊す」と通告され、両親やきょうだいの一家12人は住み慣れた場所を離れ、隣接する地域にあるアパートへ移った。ムーサさん一家は、1970年初頭からこの地区に住んでいたという。「故郷の土地や家屋の全てを奪われた」と憤る。

 トラック運転手ムハンマド・タウードさん(54)は、E1地区で所有する8000平方メートルの土地で羊を飼い、オリーブの木を栽培してきた。しかし、昨年夏にイスラエル当局から「土地を去れ」と命令され、近づけなくなった。タウードさんは「パレスチナ人を追い出してユダヤ人の巨大な入植地を作るのだろう」と語った。