(※写真はイメージです/PIXTA)

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子どもが独立したあとも、家族で暮らしていた広い家にそのまま住み続ける人は少なくありません。住宅ローンを完済していれば住居費を抑えられる一方、固定資産税や修繕、庭の手入れなど、持ち家ならではの負担は残ります。老後を迎え、必要な広さそのものを見直すケースもあります。

「一人なのに、どうして5部屋も…」広い家に感じ始めた負担

浩一さん(仮名・69歳)は、月約15万円の年金で一人暮らしをしています。

30代で購入した5LDKの一戸建てで、2人の子どもを育てました。住宅ローンは60歳になる前に完済。10年前に離婚してからは一人で暮らしていましたが、子どもたちが帰省したときのためにと、家を手放すことは考えていなかったといいます。

ところが、60代後半になると気になることが増えてきました。

日常的に使うのは1階のリビングと台所、2階の寝室くらい。残りの部屋には、子どもが残していった本や衣類、使わなくなった家具が置かれたままでした。

「掃除をしていて、ふと思ったんです。一人なのに、どうして5部屋も必要なんだろうって」

さらに負担だったのが家の維持です。

庭の草取りをして、雨どいを掃除し、数年ごとに設備の修理も必要になります。ある年には給湯器の交換で20万円以上かかり、その翌年には外壁の補修も勧められました。

固定資産税も毎年支払います。

「ローンがないから家賃ゼロみたいなものだと思っていました。でも、住んでいるだけで何もかからないわけじゃないんですよね」

総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、高齢単身世帯の67.5%は持ち家に暮らす一方、借家に住む人も32.2%を占めています。高齢者のいる世帯全体では持ち家が81.6%であり、単身世帯では借家を選ぶ割合が比較的高くなっています。

転機になったのは、子どもたちに家のことを相談したときでした。

浩一さんが「この家、お前たちのどっちかが将来使うなら残してもいいけど」と尋ねると、長男も長女も「自分たちの家があるから大丈夫」と答えました。

長女からは、「お父さん一人であの家を維持するほうが大変じゃない?」とも言われました。その言葉で、浩一さんは初めて具体的に住み替えを考え始めました。

「家を持たない老後も悪くない」2DKの団地で始めた生活

浩一さんが探したのは、新たに購入するマンションではなく賃貸住宅でした。

「また家を買ったら、結局その家を最後まで管理しなきゃいけないでしょう。老後はもっと身軽に暮らしたかったんです」

選んだのは、駅から徒歩10分ほどの場所にあるUR賃貸住宅の2DKでした。スーパーやドラッグストアも徒歩圏内にあり、家賃は共益費を含めて月6万円台です。

長年暮らした一戸建ては約2,100万円で売却。家の中にあった家具や荷物も、この機会に大幅に処分しました。

5LDKから2DKへの引っ越しで最も困ったのは、何を持っていくかを決めることでした。

「最初は全部いるような気がするんです。でも、食器棚なんて一人には大きすぎるし、客用の布団も何組もいらない。捨て始めたら、こんなに物を抱えていたのかと思いました」

引っ越して数週間は、戸建てとの違いにも戸惑いました。庭はなく、以前より収納も少なくなりました。月々の家賃も発生します。

それでも浩一さんが「楽になった」と感じたのは、休日でした。

以前なら晴れた日は庭を見て、「草を刈らないとな」と考えていました。台風のあとには屋根や雨どいも気になります。今はそうした心配をする必要がありません。

掃除も午前中だけで終わります。

「自分が管理しなきゃいけないものが減ったんです」

売却代金は引っ越し費用などを除き、老後資金として残しました。年金15万円から家賃を支払うため毎月の固定費は増えましたが、大規模な修繕費をいつ求められるか分からない不安はなくなったといいます。

子どもが泊まりに来るための部屋もありません。それでも、長女が遊びに来たときには近所で食事をし、長男一家が来る場合はホテルを利用してもらうことにしました。

「昔は、家を持っていることが安心だと思っていました。でも今の自分には、広い家を残しておくより、必要なものだけで暮らせるほうが気楽です」

持ち家と賃貸には、それぞれ異なる負担があります。賃貸なら家賃を払い続ける必要があり、年金生活ではその支出を長期的に見込んでおかなければなりません。一方、持ち家にも税金や設備交換、修繕などの費用が発生します。

子どもが独立し、世帯人数が変われば、現役時代に必要だった家が老後にも適しているとは限りません。今ある家を残すことだけを前提にせず、これから何を維持し、どこにお金や時間を使いたいのか。住まいの大きさを見直すことも、老後の暮らしを考える選択肢の一つといえるでしょう。