【長谷 淳夫】【独自】EV事業の元統括部長が「不当解雇」でソニーを提訴していた…事業の中止決定との関係は

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巨艦ソニーが、自動車部門の元トップと泥沼の訴訟を繰り広げていると判明。その真相を探ると、EVをめぐる「失敗の本質」が見えてきた。

【前編を読む】【独自】「懲戒解雇に追い込まれた」ソニー元幹部が実名告白、幻のEV事業で起きていた「ガバナンス問題」

ソニーがEV事業から撤退した背景

だが、この事件の真の不気味さは、一社員に対する不当解雇という枠組みにとどまらない。現場の司令塔であった佐々木氏が排除されていったプロセスは、巨大企業ソニーが「モビリティ事業そのもの」から身を引いていった歴史と重なっているのだ。

'20年の「CES」(世界最大級のテックショー)でソニーが発表した試作EV「VISION-S」は、世界に衝撃を与えた。佐々木氏をはじめとするエンジニアたちは当時、「自前で新しいモビリティ(移動手段)を創出する」と意気込んでいた。

しかし、'22年にホンダとの合弁会社を設立。'23年には新ブランド「AFEELA」を発表すると、自動車そのものを設計・製造するハードウェア領域はホンダへ依存し、ソニーは車内エンタメやOSの「部分担当」へ縮小された。

なぜソニーは、EV事業を縮小・断念するに至ったのか。佐々木氏の件を鑑みると、その理由が浮かび上がってくる。

新ブランド「AFEELA」が発表された'23年は、折しもEV市場に逆風が吹き始めた時期でもあった。欧州各国で購入補助金の打ち切り、充電スタンドなどインフラ整備の遅れといった様々な要因が重なり、市場の伸びが急激に減速しつつあった。

質問状を送ったところ…

そんな状況のなかで、EVの市販車を新たに製造することに、当時の経営陣はリスクを感じていたとしてもおかしくない。佐々木氏が会社から一方的に解雇を告げられた'24年3月は、ソニーがEV事業を継続するか断念するかの岐路にさしかかっていた、とみるのが自然だ。

佐々木氏のような現場のかじ取り役が不在になったことで、事業に関するノウハウが集約されにくくなったことも、事業の継続を困難にした重大な要因だろう。そして'26年3月、ソニーは「AFEELA」の開発および販売の中止を発表するに至った。

佐々木氏が訴える「不当解雇」について質問状を送ったところ、広報部は「係争中の事案に関するご質問のため、詳細についてコメントすることは差し控えますが、ご質問には事実と異なる前提、内容が含まれております。当社における人事・懲戒に関する対応は、ソニーグループのガバナンスの枠組みと社内規定に則り、必要な調査と所定の手続きに基づき、組織として適正に対応しております」と回答した。

佐々木氏は、筆者に対してこんな思いを吐露した。

「このままの状態が続けば、大げさではなくソニーの未来は毀損されかねません。社員を大事にし、能力を伸ばし続けられる、僕が愛したソニーであり続けてほしいのです」

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「週刊現代」2026年8月31日号より

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