米国、イラン要求ほぼ「丸のみ」だった…覚書の交渉で「わかった」連発・トランプ氏「ホルムズ優先」意向で
米国とイランが戦闘終結へ向けて署名した「覚書」の交渉で、米国がイランの要求をほぼ全面的に受け入れて合意に至っていたことが27日、わかった。
米イラン交渉筋が本紙に明らかにした。米国のトランプ大統領がホルムズ海峡の開放を最優先した結果で、イランによる商船攻撃に怒って「経済戦争」を宣言した背景には、こうした事情があったとみられる。
内幕明かす
覚書を巡っては、当初、6月19日にスイスで予定されていた署名式を前倒しする形で、トランプ氏とイランのマスード・ペゼシュキアン大統領が17日(米東部時間)、遠隔で署名した。協議内容を直接知る交渉筋は本紙に、署名に向けて「非常にスムーズに事が運んだ」と内幕を明かした。
それによると、覚書案の項目ごとに念を押すイランに対し、米国側は「OK(わかった)」と何度も繰り返し、ほぼすべてに応じた。ガソリン価格の高騰を何としても抑えたいトランプ氏の意向を受けた米国が、イランの要求をほぼ「丸のみ」する形で譲歩したという。
覚書の冒頭にあるレバノン情勢が当初の難題だった。これに加え、イランはパレスチナ自治区ガザで続く戦闘も持ち出して要求を上積みした。これにも米側は「OK」と答え、覚書では「レバノンを含むすべての戦線での即時かつ恒久的な軍事作戦の終結」となった。
覚書では最終的に、イランの原油輸出を許可し、資産凍結の解除も盛り込まれた。ホルムズ海峡を巡っては、米軍による海上封鎖の解除と撤退、イランによる安全航行の調整や、将来の海峡管理のためのイランとオマーンの対話も加えられ、イランに有利な内容となったのは一目瞭然だった。協議の核心のイラン核問題もイランの要求通り覚書履行の後に先送りされたが、米側は納得したという。
消えた「アラビア湾」
米イランの代表団は6月18日にはスイス中部ビュルゲンシュトック入りしていた。交渉筋によると、ここでイランは、米中央軍が海上封鎖の解除をX(旧ツイッター)の公式アカウントで発表した文章の中に「アラビア湾」という言葉を発見し、「認められない」と詰め寄った。イランは歴史的に名称は「ペルシャ湾」だと主張している。トランプ氏は昨年、ペルシャ湾を「アラビア湾」と呼ぶと報道されており、険悪な雰囲気となった。
同席したカタール代表団は、協議への影響を懸念してイランを制止しようとしたが、米代表団はカタールを制止した。その場で米中央軍に連絡を取り、対処を求めると、Xから「アラビア湾」の文字が消えた。交渉筋は「結果はともかく、核協議も実現する」と確信したという。
だが、ホルムズ海峡を航行中の船舶が6月25日に攻撃を受け、米イランが攻撃の応酬を再開したことで覚書は空中分解した。交渉筋によれば、船舶を攻撃したのはイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」で、イラン側の交渉関係者にとっても寝耳に水だったという。この攻撃を機に両国の緊張が再び高まり、トランプ氏は今月19日、イランへの経済制裁を強化する「経済戦争」をSNSで宣言した。
