【米国株】エヌビディア好決算で株価上昇、AI需要はさらに加速、成長の上限は「需要」ではなく「供給」に
世界が注目したエヌビディア[NVDA]決算、業績・見通しともに予想超え
米国時間8月26日の取引終了後、世界中の投資家が注目するエヌビディア[NVDA]の決算が発表されました。
時価総額が5兆ドルを超えるエヌビディアの決算は、もはや一企業の業績発表にとどまりません。世界的なAI投資が今後も拡大を続けるのか、そして世界の株式市場がどの方向に向かうのかを決める、極めて重要な材料となっています。
今回の2027年度第2四半期決算は、売上高、利益、次の四半期の見通しがそろって市場予想を上回りました。決算発表後の時間外取引では株価が約4%上昇しています。今回、数字の強さだけでなく、AI需要のさらなる加速が確認できた点は、高く評価できるでしょう。
今回は「非常に強い決算」、なぜ決算後の株価が素直に上昇したのか?
2026年5~7月期の売上高は962.2億ドルで、前年同期比106%増と2倍を超えました。調整後1株利益は2.22ドル、データセンター売上高は890億ドルでした。いずれも市場予想を上回っています。
【図表】決算ハイライト:主要指標一覧
出所:エヌビディア公表資料、各種市場予想をもとにマネックス証券作成 これまでの株価反応を振り返ると、エヌビディア株は直近4回の決算発表後、売上高や利益が予想を上回っても、翌営業日にすべて下落しました。好決算が当たり前になり、少しくらい予想を上回るだけでは投資家を驚かせることができなかったからです。
今回も、発表直後は今後の利益率が市場予想より低かったため、一時的に株価が下落しました。3Qについて市場は約74.8%を予想していましたが、会社予想は74%に。この市場予想を下回る利益率見通しが、発表直後に株価が一時下落した要因となりました。主な原因は、HBMなどメモリー価格の急騰です。
その後、ジェンスン・ファンCEOによるアナリストとの質疑応答を経ても株価は堅調に推移し、日本時間8月27日午前9時の時点で、時間外取引では約4%上昇しています。
会社は通常より先の2028年度(2027年2月~2028年1月)について、売上高が約70%増えるとの異例の見通しを示しました。市場予想は約44%でした。顧客から示されている需要はさらに強く、70%という数字は需要が弱いからではなく、製品を作れる量に限界があるためです。
つまり、売れるかどうかではなく、どこまで作って届けられるかが成長の上限になっているのです。これが、過去4回と今回の株価反応を分けた最大の要因だと考えます。
AIは「実験」から「利益を生む仕事」へ
ジェンスン・ファンCEOは、需要が強い理由を非常にわかりやすく説明しました。AIはすでに役に立つ仕事を行い、AIが生み出すトークン(回答や処理結果)に顧客がお金を払う段階に入った、というのです。
AI企業にとって計算能力を増やすことは、提供できるサービス、利用者、売上を増やすことにつながります。特にAIエージェントは、人間から一度質問を受けて答えるだけではありません。自分で考え、計画し、何度も推論し、複数のツールを使います。ファン氏は、課題によっては人間が直接AIを使う場合の15~100倍の計算量が必要になると説明しました。AIが賢くなり、実際の仕事を任されるほど、GPU需要が増える構造です。
Vera Rubinは「エヌビディア史上最速」の立ち上がりへ
次世代システム「Vera Rubin(ヴェラ・ルービン)」は8月に量産出荷を開始し、すでに主要なハイパースケーラー、AIクラウド、システムメーカーから注文を受けています。会社は、Vera Rubinがエヌビディア史上最も速く立ち上がる製品になると予想し、第3四半期には、データセンター売上高の約20%を占める見通しです。
Grace Blackwell Ultraと比べ、電力1メガワット当たりの処理能力は最大30倍、トークン当たりのコストは最大35分の1とされています。重要なのは、限られた土地と電力から、より多くのAI処理と収益を生み出すことです。1ギガワット当たりのエヌビディアの売上機会は、Hopperの約180億ドル、Grace Blackwellの約250億ドルから、Vera Rubinでは約400億ドルへ広がると説明しています。
自社チップを作るAWSがエヌビディア製GPUを200万個追加
今回、アマゾン・ドットコム[AMZN]のAWSが、今四半期から2029年度第2四半期までにエヌビディアのGPUを200万個追加導入する計画を発表しました。
AWSは独自AI半導体も開発しています。それでも大規模な拡張にエヌビディアを選んだことは、独自半導体とエヌビディア製品が単純な二者択一ではないことを示します。AWSはVera CPU、Nemotronオープンモデル、倉庫ロボット向けの物理AI基盤も採用します。
エヌビディアの強みはGPU単体ではなく、CPU、GPU、ネットワーク、ソフトウェアを一体で提供し、あらゆる主要AIモデルを、クラウド、企業内、端末側のどこでも動かせる点にあります。競合製品が増えるなかでも、市場シェアが拡大しているという経営陣の説明には説得力があります。
成長は大手クラウド企業だけに依存していない
大手クラウド企業向け売上高は487億ドルで前四半期比13%増でした。一方、AI専業クラウド、産業、一般企業を含むACIE部門は403億ドルで、前四半期比25%増、前年同期比138%増でした。大手以外の顧客が、より速く成長しているのです。
今後は、ソブリンAI、地域クラウド、製造、医療、金融、ロボットなどが需要を広げるでしょう。これは「数社のハイパースケーラーの設備投資が止まれば成長も止まる」という懸念を和らげる材料です。
「エヌビディアが銀行になった」という懸念をどう見るか
今回の重要な論点は、エヌビディアがAI企業やデータセンター建設を資金面で支えていることです。同社は最先端AI研究所へ累計約500億米ドルを投資し、さらにアポロ・グローバル・マネジメント[APO]、ブラックロック[BLK]、ブラックストーン[BX]、ブルックフィールド、ゴールドマン・サックス[GS]、KKR[KKR]と、5000億ドル超の第三者資本の動員を目指す資金調達プラットフォームの構築に向け、提携しています。
地域AIクラウドには、施設の一部について最低利用額を約束し、その代わりに基準を超えたレンタル収入の一部を受け取る方式も導入しています。これはAIインフラの建設を速め、ハード販売に加えて継続的な利用収入を得られる利点があります。
一方で、顧客への投資、GPU販売、売上拡大が互いを支えるため、「循環的ではないか」と疑われやすい構造です。会社は「融資は行わず、案件ごとに第三者資本が採算性を審査する」「GPUは用途を変えて別の顧客に再配置できる」と説明しています。しかし、2027年は自社バランスシートを活用して支援するAI研究所向け需要が、事業の約4分の1になる見通しです。投資家は、保証額、支払条件、顧客の信用力を継続的に確認をすべきでしょう。
決算発表後のインタビューで分かった3つの重要点
決算発表後のインタビューで分かった重要なポイントが3点あります。
古いGPUも価値を保てる:CUDAのソフトウェアとアルゴリズムを継続的に改善するため、同じハードでも性能が上がります。ファン氏はこれを「上質なワインのようだ」と説明しました。GPUを再利用できることは、資金支援の担保価値を考えるうえでも重要です。
競争を恐れすぎない:OpenAIやAWSが独自チップを開発しても、エヌビディアは全工程・全モデル・全クラウドを支えるプラットフォームとして共存できるとしています。実際、独自チップを持つAWSが200万個のGPUを追加します。
2027年は株主還元を増やす余地:ファン氏は、戦略・事業運営に必要な資金を除く余剰現金を自社株買いに回し、2027年は2026年以上のフリーキャッシュフローを生むと述べました。今期は260億ドルを株主に還元し、年初来ではフリーキャッシュフローの60%を還元しています。
注意すべき3点とは?
一方で、注意点も示しました。
粗利益率:2Qは75%でしたが、メモリー価格の急騰により3Qは74%、4Qは71~72%まで低下し、2028年度は72~73%へ戻る見通しです。売上の急成長と引き換えに、短期的には利益率が下がります。
供給契約:メモリー確保などの契約額は前四半期の1190億ドルから2790億ドルへ急増しました。強い需要の裏返しですが、需要予測が外れれば在庫・契約リスクになります。
中国:中国向けH200はデータセンター売上高の1%未満で、会社の先行き見通しには中国向けデータセンター売上を含めていません。規制緩和時には上振れ余地ですが、現時点では業績の柱として期待すべきではありません。
エヌビディア株のバリュエーションをどう考えるか
2028年度の予想利益を基準にすると、株価収益率(PER)はおよそ16倍とみられています。売上高が約70%増える会社のPERとしては、数字だけを見れば割高感は全くありません。会社側も、自社株には大きな投資機会があるとの考えを示しています。ただし、この評価は70%成長、Vera Rubinの順調な供給、粗利益率の回復が実現することを前提としています。
投資家が見るべきなのは、単にPERが低いか高いかではありません。①2028年度の70%成長が実現するか、②利益率が72~73%で安定するか、③資金支援先の信用リスクが抑えられるかを確認する必要があります。高成長企業では、将来利益の前提が少し変わるだけで「割安」にも「割高」にも見えるからです。
総合評価:今回は「成長の質」まで改善した決算
今回の決算は、売上高と利益が予想を上回っただけではありません。需要が大手クラウド企業からAI専業クラウド、各国、一般企業へ広がり、Vera Rubinの立ち上がり、AWSの200万GPU導入、そして2028年度70%成長という長期の見通しが同時に示されました。
したがって、総合的には非常に良い決算だったと評価します。今回の約4%の株価上昇は、好決算そのものよりも、「AI需要はまだ減速しておらず、供給が追いつかないほど強い」という情報に市場が反応したものです。短期的には粗利益率の低下や資金支援への懸念で値動きが大きくなる可能性がありますが、中長期の投資判断では、AIが利益を生むインフラへ変わりつつあることと、エヌビディアがその中心にいることを重視すべきでしょう。
岡元 兵八郎 マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー

