《セキュリティ担当者から手渡された”ひまわりの花束”》米制裁下のICC所長・赤根智子さんが会見 「アタックされることには強いが、あたたかい思いにはホロっとしてしまう」
アメリカによって制裁対象へ指定されたことで注目を集めるICC・国際刑事裁判所の赤根智子所長が、26日にオンラインで会見を開いた。国際的な司法機関のトップが法廷の外で自ら記者の前に立つのは異例のことだ。
それでも会見に臨んだのは、ICCが直面する事態がそれだけ深刻だという証だろう。赤根さんは今回の制裁を「法の支配の危機」と位置づけ、「制裁を受ける理由は全く無い」「ICCは決して負けません」と強調している。また、約1時間に及んだ会見からは、制裁を予期しながら職務を続けてきた赤根さんの覚悟と、その人となりが見えてきた。
「アタックされることには強いが…」
会見で赤根さんは、制裁による不利益は「ある程度分かっており、できる限り抵抗する」と述べ、「脅威のために押しつぶされることはない」と強調した。制裁後も職員の士気は高く、進行中の訴追の手続きは従来どおり進めるという。
その一方で、赤根さんは制裁発表後の印象的な出来事を明かした。普段は無口なセキュリティ担当者たちが、赤根さんの家の前に着いた際、たくさんのひまわりの花束を差し出してくれたのだという。「少しでも気持ちが和めば」という気遣いからの"サプライズプレゼント"だった。
赤根さんはこのエピソードに続けて、広がる支援の輪に対する率直な思いを口にした。
「こうしたあたたかい気持ちは、ICCが今後裁判所として機能を果たしていくために、私の、そしてみんなの力が必要だということだと受け取りました。
私はアタックされることには強いですけど、あたたかい思いにはホロっとしてしまって、家で号泣してしまったこともあります。今はちょっとこらえています」
法の支配を守るため最前線で戦い続ける赤根さんが、ひとかけらの"弱さ"を見せた瞬間だった。
担当編集者が語る素顔
赤根さんの著書『戦争犯罪と戦う』(文春新書)を担当し、現在も本人と連絡を取り合う編集者の鳥嶋七実さんは、赤根さんの人柄を「素朴で、分け隔てがなく、サバサバとした方」と評する。
ロシアに逮捕状を出された際に発した「私が死んでも裁判官の代わりはいる」という発言も、本人にとっては「職業倫理を突き詰めれば当然の発言」にすぎないという。ヒロイズムでは決してなく、"法曹"という立場を徹底的に遂行するがゆえの言葉だった。
そんな赤根さんが口にしたという印象的な言葉がある、と鳥嶋さんは語る。
「『私はとにかく普通の人間で、普通すぎるんだけど、かえってそれが珍しいみたい』と。政治的な思惑や自分のメリット抜きに、フラットに『これはおかしい』と考えて動ける人が、今となっては稀有だ、ということなのかなと思います」
そんな"普通の人"が、アメリカ・ロシアという大国に睨まれながらも戦っていることを、決して忘れてはならないだろう。
「明日ニュースに出ると思います」
制裁の発表を、鳥嶋さんは報道より先に知っていた。前日、赤根さん本人から「明日ニュースに出ると思います」とメールが届いたのだという。制裁対象が拡大する中で、赤根さんは「私自身か、裁判所全体か、いずれ来るのではないか」と早くから話していた。
「アメリカとしては、とっくに音を上げて降参するという見通しだったんだろう、と。自分たちはただ司法の仕事を忠実に果たしているだけ、挑発には乗らない、という姿勢です」
一方、日本政府への思いは複雑だった。
「石破政権のときの方がサポートがあったのではないか。今の高市政権下での『守ってくれなさ』には、思うところが大変あると思います」
「弱腰」との批判を受けた高市早苗首相は25日、「日本の立場と相いれず、深刻に受け止めている」と表明。会見で赤根さんはこれに「心から感謝している」と述べ、「法の支配を守り抜くための最大限の努力をしてほしい」と改めて要請した。
高市首相はあくまで「弱腰との批判は当たらない」としているが、果たして言葉通りの対応を進めていくことができるのか。今後の動向にも注目が必要だ。
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