パートで「月9万円」稼いでいたら「扶養から外れます」と会社に言われました。130万円の壁は知っていましたが、年の途中で扶養を外されることってあるのでしょうか?

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130万円の壁は配偶者の扶養にとどまることができるか否かの壁ですが、社会保険の適用拡大に伴って、本人が社会保険の適用を受けるようになり、必然的に扶養を外れる106万円の壁があります。   今回は、パートで働く人などが社会保険の適用を受ける106万円の壁について詳しく解説します。

社会保険の適用拡大とは

パートやアルバイトなどで働く方の医療や年金の保障を充実させる目的で、令和7年の年金制度改正により社会保険の加入対象となる人の範囲が段階的に拡大されています(※1)。

1. 適用拡大の対象となる企業

適用される企業の範囲が、以下のとおり段階的に拡大されています。
 

2027年9月まで:従業員数51人以上の企業
2027年10月から:従業員数36~50人の企業
2029年10月から:従業員数21~35人の企業
2032年10月から:従業員数11~20人の企業
2035年10月から:従業員数10人以下の企業(全企業対象)

 

2. 加入の対象となる方

上記の規模の企業に従事するパートやアルバイトで、以下の要件を満たす方が対象となります。
 

(1)週の所定労働時間が20時間以上
(2)所定内賃金が月額8万8000円以上
(3)学生でないこと

ただし、月額8万8000円以上という賃金要件は、2026年10月に撤廃予定です。

社会保険の適用を受ける106万円の壁とは

配偶者の扶養を受けるためには、年収が130万円未満であることが要件です(※2)。これを、「130万円の壁」と呼んでいます。
一方、社会保険の加入要件の一つである所定内賃金月額8万8000円を年収に換算すると約106万円となるため、「106万円の壁」と呼ばれています。年収の累計額ではなく月額の所定内賃金で判定されるため、年の途中でも加入要件を満たせば社会保険の適用を受け、「130万円の壁」を超えていなくても配偶者の扶養を外れます。

社会保険が適用されると

東京都内の中小企業に勤務する月収9万円のパートを例に、社会保険の適用を受けることになった場合のメリットとデメリットを具体的に見てみましょう。
 

1. デメリット

社会保険料を負担することになるため、手取り額が減少します(※3, 4)。
 

健康保険料:4334円(40~64歳は介護保険料を含め5047円)
厚生年金保険料:8052円

40歳未満の場合、このほかに「子ども・子育て支援金」101円、雇用保険料450円が徴収されますので、月収9万円から1万2937円差し引かれ、手取り額は7万7063円となります。
なお、2026年10月以降、対象となる事業所では、事業主が標準報酬月額12万6000円以下の短時間労働者の保険料を一時的に負担することにより、従業員の保険料負担を通算3年間軽減することができる保険料調整制度(※1)があります。
 

2.メリット

社会保険の適用を受けることにより、以下のようなメリットがあります。
 

(1)業務外の病気やけがで会社を休んだ場合、4日目から通算1年6ヶ月間、給与の3分の2の傷病手当金を受給することができます(※1)。
(2)出産のため会社を休んだ場合、出産の日以前42日から出産の日以後56日まで給与の3分の2の出産手当金を受給することができます(※1)。
(3)業務外の病気やけがが原因で、障害が残った場合は障害基礎年金に加えて障害厚生年金が、死亡した場合は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が支給されます(※1)。
(4)65歳から、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受給することができます。例えば、月収9万円で10年間働くと、終身で年額5万7900円ほど老齢年金を増やすことができます(※1, 5)。

まとめ

年金制度改正に伴い、一定以上の規模の企業において週の所定労働時間が20時間以上で、所定内賃金が月額8万8000円以上などの加入要件を満たした場合、社会保険の適用を受けることになり、配偶者の扶養を外れることになります。
社会保険の適用を受けると社会保険料を差し引かれるため手取り額が減少します。一方で、健康保険や年金でメリットがありますので、適用を逃れるために働き方を調整するより、収入の壁を気にすることなく無理のない範囲で働き方を変えることをお勧めします。
 

出典

(※1)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
(※2)日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
(※3)全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険保険料額表(東京支部)
(※4)厚生労働省 令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内
(※5)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士