川口春奈

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妊娠でペナルティ?

 女優の川口春奈(31)が、サッカー日本代表の板倉滉(29)との結婚と妊娠を発表した。川口は2026年上半期のCM起用社数が17社で1位。酒類(サントリー)のCMにも出ていた。酒類のCM出演中の妊娠は「掟破り」で、問題だと一部で報じられたが、本当なのか? CMに関する話には誤解が目立つ。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 川口はサントリーのアルコール飲料「ジャスミン焼酎〈茉莉花〉」のCMに出演中の8月2日、結婚と妊娠を発表した。「掟破り」で広告代理店を驚かせたなどと報じられたが、本当にそうなのか。

川口春奈

 答えはノーである。よくあることだ。たとえば小雪(49)は、2011年4月に松山ケンイチ(41)と結婚し、同9月に妊娠5か月であることを公表した。出演していたサントリーのウイスキー「角瓶」のCMは降りた。それで済んだ。ペナルティはなかった。

 もっと川口に近い話もある。現在は小泉進次郎防衛相(45)の妻である、滝川クリステルさん(48)のケースである。クリステルさんは2019年7月からキリンのビール類「本麒麟」のCMに出演していたが、1か月後の同8月に小泉氏との結婚と妊娠を電撃発表。同時にCMが差し替えられた。やはりペナルティはなかった。「掟破り」ととがめてもいない。

 妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児と乳児の発育に悪影響を与えるおそれがある。そのため、妊娠した本人が酒類CMに出続けるわけにはいかない。かといって、CM契約中の妊娠が規約違反というわけではないのだ。

「妊娠してはならない」などという封建的な契約を、この時代に結べると思っている人がいたら、驚きである。公序良俗に反する契約となる可能性がある。そうなったら、契約そのものが無効となってしまう。

 CM界の内情について長年話を聞いている芸能事務所の社長によると、近年のCM契約は常識的だ。「本人による反社会的行為や商品の中傷がない限り、ペナルティはない」のである。

 離婚はスポンサー側が歓迎しないものの、これもペナルティはない。離婚は反社会的行為ではないし、妊娠と同じく、「離婚してはならない」という契約は無理があるからだ。

 ただし、多くの芸能人はスポンサーの顔を立てるために、CM契約が切れるまで離婚は我慢する。CM契約が離婚後も継続するなら、円満に別れたことを強調する。本当に円満なら離婚しないはずなので、こうした説明の大半は眉唾と見て良い。

誤解が多いわけ

 なぜ、CMに関する話には誤解が多いのかというと、情報源が限られているからだろう。スポンサーの宣伝部は芸能界の事情に通じているわけではないから、話したくても話せない。他社の契約内容も知らない。

 各社の契約を知る広告代理店はスポンサーとの秘密を厳守する。だからこそ、複数の企業と並行して取引ができる。秘密が守れなかったら、代理店に勤められない。

 芸能界と代理店をつなぐのはキャスティング会社であり、さまざまな芸能人の契約内容を知りうる立場だが、世間には存在すらほとんど知られていない。芸能事務所もギャラが関係するので、CMに関しては口が重いのだ。

 まず、CMに関する話でよくある誤解は、数で「女王」を決めてしまうこと。CM関係者や芸能関係者はそんな乱暴なことはしない。CM関係者は起用社数争いなどに興味を持たない。

 なぜかというと、1社当たりの契約金が高いか安いか、本人のイメージにプラスになるかが問題であり、数に大きな意味はないからだ。契約金が安くても構わないのなら、起用社数は増やせるのである。

 中小企業、新興企業のCMは予算が低いから、契約金の安い女優に飛びつきやすい。

「芸能事務所の中にはCMを女優のプロモーションビデオのように考えているところもある。契約金が数百万円台と低くても顔を売るために出る」(芸能事務所社長)

 ほとんどドラマに出ていないにもかかわらず、CMにはよく出ている女優がいる。裏にはこんな構図がある。

 では現在の真のCM女王は誰かというと、綾瀬はるか(41)に違いない。異論を唱える芸能関係者はいないはずだ。起用社数は川口の半数以下の7社だが、その内容が並みの芸能人とは大きく異なる。

 契約先は世界的カジュアル衣料ブランドのユニクロ、自動車大手のマツダ、国内最大手の生命保険会社である日本生命、世界的な日用品メーカーのP&G、ビール大手のキリンなど、大半が世界展開する会社や日本最大級の企業なのである。

 綾瀬の契約先である大企業と、中小企業や新興企業を同じ1社と数えることはできない。綾瀬の契約先は宣伝費が潤沢だから、トップクラスである綾瀬の契約金も容易に支払える。ただし、その金額は各社で違う。そもそも綾瀬が起用社数を増やそうと考えたら、簡単だ。契約金の値下げに応じたら良い。

 次に明らかな間違い。「芸能人ごとに契約金はしっかりと決まっていて、相場表がある」というもの。かつては高倉健さんと吉永小百合(81)が1億円で、相場表のトップといわれたが、そんな代物はどこにも存在しない。

 契約金交渉の仕組みを考えたら分かる。交渉は企業と芸能人側で個別に行われる。その際、契約期間、出演媒体(ウェブや新聞、雑誌なども含めるかどうか)、広告地域などが考慮される。

 企業によって契約期間も出演媒体もバラバラなのだから、「健さんなら1億円」などと一概に決められるはずがない。契約金は同じ女優でも企業によって大きく違ってくるのだ。また、企業側が契約したい女優が競合商品のCMに出ている場合は、そのCMを降りてもらうための補償金についても話し合われる。やはり一律では語れない。

 各社がその女優といくらで契約したかなどの情報はキャスティング会社が握っている。仮に綾瀬が1億円でユニクロと契約していたら、新規参入する企業は恥ずかしくない金額を用意して交渉する。その情報を各芸能事務所は入手し、自分のところの契約交渉に生かす。

 綾瀬の契約金は大半が8000万から1億円程度と見られる。断定できないのは企業によって契約金額が異なるから。CMの話には億単位の金の話がポンポンと出てくるが、長引く不況で企業の広告費は青天井ではないので、芸能人の契約金の上限は1億円程度だ。

 綾瀬がもっと安い金額で契約している可能性があるのが、フジパンである。食品は単価が安いため、広告費が限定されている。綾瀬は2023年からCMに登場した。

CMの裏側は複雑

 仮に契約金が安かろうが、綾瀬にはメリットがある。フジパンのCM出演によりアットホームなイメージが定着したからだ。製パン会社自体、生活に身近でイメージが良い。女優はこのようなCMの選び方もする。

 企業によって契約金は違うが、比較的安いのは高級化粧品である。意外に思われるかも知れない。筆者も違う芸能事務所の幹部から初めて聞いたときには驚いた。

 なぜかというと、化粧品のCMはやりたい女優が多いから。需要と供給の法則である。化粧品のCMは時間をかけて美しく撮ってもらえるので、女優はやりたいのだ。しかも商品が限られ、CMも多くないから、依頼に応じないと、ほかの女優に仕事を奪われてしまう。だから安くても受ける。

 川口が結婚したことで、CM起用社数のトップが変わるという観測がある。もっとも、それを決めるのは広告代理店などの組織ではない。契約金が手頃でイメージの良い女優の起用社数が自然と増える。

 今田美桜(29)は川口に次ぐ16社と契約している。ただし、契約金が高くなっているようなので、これ以上は増えにくいのではないか。

 CMの裏側は複雑である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部