「お姉ちゃんだからいい子にして」が苦しかった。病気の妹との愛情格差に悩んだ「きょうだい児」の切実な本音を描いたコミックエッセイ【書評】

【漫画】本編を読む
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
『きょうだい、だけどいや ケアをさせられたきょうだい児だった、けど』(のまり/竹書房)は、病気の妹を持つ「きょうだい児」の葛藤を描いたコミックエッセイである。家族愛やきょうだい愛の美しさを描くのではなく、その裏側にある寂しさや怒り、そして言葉にできない苦しさが綴られている。
主人公の手塚ナミには、小児喘息で入退院を繰り返す妹がいる。両親は病気の妹を優先し、ナミは幼い頃から「お姉ちゃんだから」「いい子でいて」と我慢を求められてきた。欲しいものを譲り、妹の面倒を見て、家族を助けることが当たり前だった。自分だって親に甘えたいし、大切にしてほしい。その思いを抱えたまま成長したナミは、次第に家族と距離を置くようになっていく。
それでも、本作は誰かを一方的な悪者として描いてはいない。両親も苦しむ妹を愛していたからこそ必死だった。しかし、その愛情の偏りがナミを傷つけていたことも事実だ。どちらの立場の気持ちが理解できるからこそ「親が悪い」などと簡単には割り切れない複雑な感情を抱くだろう。
一方で、大人になったナミが過去を見つめ直し、自身の気持ちと向き合っていく過程も描かれている。家族だからこそ言えなかったこと、家族だからこそ許せなかったこと。そのひとつひとつが静かに胸に迫ってくる。
近年は「きょうだい児」という言葉が少しずつ知られるようになった。しかし、その実情はまだ十分に理解されているとは言い難い。本作は当事者の視点から、その複雑な思いを伝えてくれる貴重な作品である。家族とは何か、愛情とは何かをあらためて考えさせられる。
文=座美山佐須郎
