ポイ捨てを注意したら「逆ギレ」されたという(らい/PIXTA)※写真はイメージ

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岐阜県内の「はま寿司」の駐車場で、男性がタバコをポイ捨てしたのを注意したら、激高した男性から怒鳴られたのでその模様を撮影したという動画がSNS上で話題になりました。相手方の男性が被害届を提出したため、投稿者は警察官に呼び出されたとのことです。

SNSでは、「なぜ投稿者が取り調べを受けるのか?」「勇気出して良いことをした人が罰せられる社会は良くない」「注意した側が犯人扱いはおかしい」など、投稿者に同情的な声が多くみられます。

しかし法的には、他人の不適切な行為の様子を撮影してSNS上に投稿すると、名誉毀損罪や不法行為の責任を問われるおそれがあるので注意が必要です。(弁護士・阿部由羅)

「他人の不適切な行為」を撮影・投稿すると「名誉毀損罪」になるか?

本件では、おそらく「名誉毀損罪」によって被害届が提出されたのだと思われます。

本件の動画は男性が怒鳴っている様子を撮影したもので、投稿にはポイ捨てを注意したら怒鳴り散らされたという説明が記載されていました。このような投稿をすることが名誉毀損罪に当たるのかどうか、刑法上の要件に沿って検討します。

名誉毀損罪の「構成要件」に該当する可能性は高い

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、他人の社会的評価を下げるような言動をした場合に成立する犯罪です(刑法230条)。

本件の投稿はSNS上で公開されており、「タバコのポイ捨てを注意したところ、逆切れして怒鳴ってきた」という事実を摘示する内容です。世間一般では、男性が自分の不適切な行為を棚に上げて不誠実な態度をとっていると受け止める人が少なからずいるでしょう。

したがって、本件の動画を添付した投稿は「公然と」「事実を摘示し」「他人の社会的評価を下げる」という名誉毀損罪の構成要件を満たすと考えられます。

「公共の利害に関する場合の特例」が適用されるかは不明

名誉毀損罪には「公共の利害に関する場合の特例」が設けられています(刑法230条の2)。次の3つの要件をいずれも満たす場合は、違法性が否定されて名誉毀損罪が成立しないというものです。

(a)言動が公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
(b)言動の目的が専ら公益を図ることにあったと認められること(公益性)
(c)摘示した事実が真実であることの証明があったこと(真実性)

本件では、動画が撮影された状況や投稿者の意図などに関する情報が不十分なので、公共の利害に関する場合の特例が適用されるかどうかは何とも言えません。

ただし、一般人に過ぎない男性がタバコをポイ捨てする場面を撮影し、自分が注目を集める目的でSNSに投稿したのだとすれば、公共性や公益性について疑問があるように思われます。

タバコのポイ捨て以外の不適切な行為を撮影・投稿したら?

上記の検討は、タバコのポイ捨て以外の不適切な行為についても当てはまります。

まず名誉毀損罪の構成要件に該当するかどうかを検討し、該当する場合は公共の利害に関する場合の特例(公共性・公益性・真実性)を検討するという手順です。

たとえば「不倫」、「自転車に乗りながらスマホを操作」、「暴行」……といった例が挙げられますが、行為が悪質であるほど公共性や公益性は認められやすくなります。

また、投稿の目的も重要です。社会に対する問題提起や注意喚起が目的であれば、公益性が認められやすいでしょう。これに対し、単に「いいね」や「リポスト」などを集めたいだけなら、公共性は認められにくいと思われます。

名誉毀損に当たる動画投稿をすると、損害賠償責任を負うこともある

他人の社会的評価を不当に下げるような動画の投稿は、刑法上の名誉毀損罪に当たるだけでなく、民法上の「不法行為」にも該当します。

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害することをいいます(民法709条)。不法行為をした人は、被害者に生じた損害を賠償しなければなりません。

名誉毀損罪の要件に該当し、公共性・公益性・真実性のいずれかを欠いている動画の投稿は、不法行為にも該当する可能性が高いと考えられます。

被害者は名誉を傷つけられたことに対する慰謝料を請求できるほか、営業上の損害が生じた場合にはその賠償も請求できることがあります。

動画に映っている人が不適切な行為をしている場合でも、公共の利害に関する場合の特例が適用されなければ名誉毀損罪が成立し得るのと同様に、不法行為も成立し得るので注意が必要です。

他人の不適切な行為を見つけたら、どうすればいいのか?

たとえ正義感からの行動でも、他人の不適切な行為を撮影してSNS上にアップすることは、トラブルの原因になり得るので避けた方が無難です。

たとえば、店舗や施設の中で不適切な行為を発見したら、その管理者に連絡して対応を求めるのがよいでしょう。悪質な行為を見つけた場合や、屋外で不適切な行為を見つけた場合には、警察に通報することも考えられます。

自分で声をかけようとする場合は、相手が反抗してくる可能性に留意すべきです。近くにいる人に協力を求めるなど、自分の身を守るための対策を講じてください。

■阿部由羅(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。