金与正氏(平昌写真共同取材団)

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北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党総務部長が、韓国の李在明大統領を名指しして激しく嘲笑した。

金与正氏は20日、「そんなにも楽しみにしていた戦争遊びをできなくなったソウルの哀れな立場」と題する談話を朝鮮中央通信を通じて発表。トランプ米大統領の指示を受け、米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド(UFS)」が大幅に縮小されたことを取り上げた。

その内容は政策批判というより、嫌味の連続だ。

韓国について「最も楽しみにしていた『戦争遊び』を取り止めなければならない哀れな立場」とあざ笑い、米韓同盟を「主人」と「傀儡(かいらい)」の関係と表現。「一番やりたかった『戦争遊び』をできなくなって気抜けしたざま」とまで言い放った。

さらに矛先を李氏本人に向けた。

李氏がUFS縮小を北朝鮮との対話につながり得る動きとして評価する一方、自主国防や独自の軍事力確保を訴えていることを取り上げ、「裏表の異なる二重的言行」と皮肉った。

「無情な主人の歓心を買うにはおそらく、領土を丸ごと供しても足りないであろう」との一節に至っては、外交・安全保障政策への批判というより、韓国そのものを見下すための嫌味と言った方が近い。

しかし、こうした非難は最近の李政権の姿勢を考えれば、著しく一方的でもある。

李氏はUFS縮小について、北朝鮮との対話環境をつくろうとするトランプ氏の決断に「敬意」を表明した。韓国政府も米朝対話再開を後押しする「ペースメーカー」の役割を果たすとしている。李氏は軍事力強化や戦時作戦統制権の移管を進める一方、今回の訓練についても北朝鮮を挑発することが目的ではないとの立場を示してきた。

それでも平壌は李氏を「戦争遊び」を待ち望んでいた人物として描く。

そこには、単なる対韓批判とは別の目的が透けて見える。

北朝鮮は近年、韓国を統一すべき「同族」ではなく、敵対する別国家として扱う路線へ大きく転換した。そうした体制にとって、韓国が融和姿勢を強めることは必ずしも都合がいいとは限らない。「敵」であるはずの韓国が敵対してこなければ、国民に植え付けてきた敵対国家像との間に矛盾が生じるからだ。

(参考記事:「妹じゃなきゃ処刑だ」金正恩と与正の微妙な権力均衡と”後継者ジュエ”登場の衝撃

ならば、李政権が何をしようと「敵」であることに変わりはないと宣伝する必要がある。韓国に対する「憎悪」を維持し、外部に敵をつくることは、北朝鮮の国内統治にも利用できる。経済的困窮や軍事優先政策による負担を抱える中、「敵に包囲された国家」という構図は、軍備増強や住民統制を正当化する便利な論理となる。

だからこそ今回の談話では、韓国政府の政策を論じるより、李氏をあざ笑い、韓国を「傀儡」として侮辱することに多くの言葉が費やされたとも考えられる。

韓国大統領府は21日、金与正氏の談話について「韓国政府と大統領に対する誹謗的な言辞は相互信頼を築くうえで役に立たない」として「不必要な非難」をやめるよう要求した。それでも「相互尊重に基づく平和共存政策」を続け、米朝対話再開に向けた役割を果たすとの立場を崩していない。

北朝鮮が本当に恐れているのは、韓国の「敵対」だけなのだろうか。

韓国を恒久的な敵として体制維持に利用するなら、むしろ厄介なのは韓国が敵対してこないことかもしれない。

李政権の融和姿勢に対してさえ嫌味と嘲笑を浴びせ続ける金与正氏の言葉からは、南北の「憎悪」をなくすより、それを温存しなければならない北朝鮮体制の事情も見えてくる。