「ファーストクライ 母子救命救急班」“母性による決意”とその直後に描き出される“確定ではない混沌とした母性”の影【第7話レビュー】

次回 8月26日(水)よる10時から第8話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ(毎週水曜よる10時放送)「ファーストクライ 母子救命救急班」。
数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、8月19日(水)に放送した第7話をどう見たのか?第7話の場面写真とともに紹介する。
(※以下、第7話のネタバレを含みます)
本作は、富裕層向け“セレブ病院”の秘密裏に設立された「母子救命救急班」を舞台に、行き場をなくした妊婦たちを救い、新たな命の産声=ファーストクライを守るために奔走する、産科医療の最前線を描いたドラマだ。
今作の基本軸の一つは、行く当てのない“取りこぼされてしまいそうな命”と、セレブ病院にやってくる“VIP”の妊婦を同時並行で描きながら、ラストは決まって、その妊婦たちに起こる“超難解オペ”に入り、窮地を救うというもの。それが一人のケースもあれば、同時に二つの難解手術を執り行う構成もある。
それは、新しく生まれてくる命をテーマに登場人物たちの悲喜こもごもを描きつつも、医療ドラマである以上、ラストのオペが否応なしにドラマティックを生み出す最適なトリガーとなるからだ。しかし、ドラマも後半に差し掛かった第7話は違った。これまで以上の難解オペを視聴者が期待する中、あえてオペシーンを描かず、新しい命に囲まれた登場人物たちの心の機微“だけ”でドラマティックを展開させたのだ。今作の胆力の強さを見せつけたと言えるだろう。


今回のテーマは、産科医療を舞台にしたドラマとして描いて然るべき「母性(もしくは父性)」であった。そして、そのテーマを描く以上、“お涙頂戴”が好まれるテレビドラマにおいて、それは「安パイ」と言える。なぜなら、母性とは絶対的なものだと思われているからだ。
「親になれば誰もが無条件に子を愛するようになる」というロジックは強固であり、どんなにつらく、迷い、大きな壁が立ちはだかる妊婦であっても、母性による情を描いてさえいれば解決へと導くことができる。なおかつ、そこには感動的なドラマティックが付随してくるのも当然の流れで、どれほど安っぽく見えようと、どんな展開になろうと、母性による“情”で突破できることは確定しているのである。
そして今作も、その“情”という意味では、常套の展開を踏んでいる側面はあった。今回登場した、母親に捨てられたことで自らの母性に疑問を持つ女性・岸本一華(安斉星来)が、どうやって出産を決断するのか?という展開だ。探し出した母親とのドラマティックによって母性を取り戻す…という安易な着地にはならなかったものの、捨てられた子だったからこそ我が子とずっと一緒にいるという決意が強くなったこと、また、捨てられたけれど生を受けたことで愛する人と出会い、子を授かることができた。だから母に感謝するというストーリーラインは、ある種の王道な“情”の描き方と言える。


しかしである。今作は、その裏でうごめく“母性”の曖昧さもずっと描いてきた。「母性」はあって然るべきと納得させられる一方で、主人公・光井(比嘉愛未)が捨てられたという事実も重く横たわる。彼女を捨てた母の“母性”はどこへ行ってしまったのか。そして前々回から深まる、“取りこぼされてしまう命”を何が何でも救おうとする神谷(真矢ミキ)こそが光井の母ではないかという疑惑。これらが交錯することで、母性とは一体何なのか?それは確実なものなのか?という問いが混沌を深めていく。
今回のラストも、母性による決意に感動させられたのは当然なのだが、その直後に描き出される“確定ではない混沌とした母性”の影によって、ドラマはさらに深い味わいへと引き込まれていくのだ。
また、構成の巧みさについても触れておきたい。今回は“母性”の物語を際立たせるため、これまでの基本軸であった難解オペの展開をあえて手放した。
前半部分では、同時並行で描かれる妊婦たちにラストの“難解オペ”を予感させる伏線が張られ、いつも通りの緊急事態を予感させた。にもかかわらず、それを敢えて、これまで積み重ねてきた光井の手腕と徹底的な管理によって未然に阻止してみせたのである。盛り上がり必至のオペシーンに頼るのではなく、二人の妊婦とそれを取り巻く女性たちの“母性”や“母の愛”を巡るドラマ、そしてそれらが揺らぐサスペンスによって、最終章へ向かう第7話のクライマックスを見事に構築してみせたのだ。
――光井の母は誰なのか?
第1話から提示されているこの物語は、単に全話を通して視聴者を惹きつけるためだけの“縦軸”にとどまらない。積み重ねられたエピソードが複雑に絡み合うことで、「誰が母なのか?」だけでなく、「なぜ捨てたのか?」という“なぜ”にも重きが置かれる展開へと結実しているからだ。最終章に向けて、やはり最後まで目が離せない。



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<番組概要>
脚本:浜田秀哉
音楽:菅野祐悟
演出:大谷太郎 上田迅(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:松本京子
シニアプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:森有紗
山田勇人 遠藤光貴 大垣一穂(ザ・ワークス)
主題歌:JUJU「夏蝉」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力: ザ・ワークス
製作著作: 日本テレビ
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