佐々木朗希

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 前編【佐々木朗希「5勝5敗」も米メディアは「期待されたレベルの結果ではない」…渡米経験のある元プロ投手が指摘する「4文字の弱点」】からの続き──。「投手の肩は消耗品、過度の投げ込みは絶対悪」という指導方針は今や常識と言っていい。だが「羮に懲りて膾を吹く」の諺もある通り、あまりにも投げ込みが足りない弊害も浮上している。「適切な医療ケアを前提として、ある程度は球を投げなければ、投手としての成長はあり得ない」との反対意見も近年は目立つようになってきた。(前後編の後編)

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 例えば読売新聞オンラインは2025年6月、「[時代の証言者]明日への1球 鹿取義隆〈5〉1日1000球の投げ込み」との記事を配信した。

佐々木朗希

 巨人と西武でリリーフ投手として活躍した鹿取氏は明治大学野球部の出身。当時の明大野球部は名物監督の島岡吉郎氏が指揮を取り、厳しい規律と苛酷な練習で知られていた。

 鹿取氏が国士舘大とのオープン戦に先発してKOされると、島岡監督が「1000球投げてこい!」と言う。監督の命令は絶対服従。まだ試合が行われている中、ブルペンで投げ始めると、鹿取氏は“異変”を感じ取ったという。

《不思議なことに500球を超えた辺りから球の切れが増していくようでした。投げ込みの中から、下半身主導の理想的なフォームをつかんでいったのでしょう》

 野球解説者の前田幸長氏はロッテ、中日、巨人の3球団で投手として活躍。先発、中継ぎ、クローザーの全てを経験した。また2008年には渡米してレンジャーズとマイナー契約。3Aオクラホマで36試合に登板したため、アメリカの野球事情にも詳しい。

 今シーズンの佐々木朗希は8月18日現在、21試合に先発して5勝5敗。先発ローテーションの一角として、ドジャースの投手陣を支えているのは事実だ。

根本の問題は制球力

 だが、日本だけでなくアメリカからも「こんな投手だっけ?」という疑問の声が出ている。単なるファンの意見ではなく、「期待外れの佐々木朗希」という記事を配信したアメリカメディアも少なくない。

 何しろポスティングが申請された時、佐々木は「160キロを超える剛速球で、バッタバッタと三振を取っていく投手」と期待されていたのだ。

 それが実際にマウンドの上に立ってみると、球速はイメージよりかなり遅い、150キロ後半ということも珍しくない。三振の数は増しているが、四球で試合の流れを悪くするほうが目立つ──。

「結局、佐々木投手の抱えている問題は制球力なのです。昨シーズンより今シーズンのほうが調子が良いのは、少しずつ制球力が改善されているからです。ただし、依然としてファンの期待に答えるだけの結果が出せていないのも制球力が足りないからです。メジャーでは160キロを超える球を投げる投手は珍しくありません。160キロを超える球を軽々とホームランにしてしまう打者もたくさんいます。日本のプロ野球で160キロを超える投手はメジャーほど多くはありませんし、日本人打者も容易には打てません。こうした日本とアメリカの“ギャップ”を大前提にすべきなのです。つまりアメリカで佐々木投手は“とんでもない剛速球を投げるピッチャー”ではないのです」(前田氏)

投げ込みのメリット

 前田氏は「佐々木投手がスピードだけに頼っても、メジャーで勝つことはできません。何よりも制球力を磨く必要があるのです」と言う。

「そのためには、やはり投げ込みを適切な方法で行う必要があります。少なくとも試合で100球を投げるためには──個人差もありますが──練習では最低でも200球から300球を投げる必要があります。どんなに才能が豊かで、真面目に練習を積み重ねている投手でも、経験が浅いと身体のどこかに無駄な力が入っています。フォームも安定していないので、ケガのリスクも高くなります。それを肩が壊れないよう充分にケアしながら投げ込みを重ねていくと、必ず投手は『楽をして投げたい』と思うようになります。実は、これが非常に重要なのです」

 楽をしたいといってもサボるという意味ではない。身体に負担がかからないように投げたいということだ。

「投げ込みという負荷がかかると、無意識のうちに身体には負担をかけまいとして、無駄な力が自然と消えていくのです。私も投げ込みを続けるうちに『こんなに力を抜いているのに球が走る!』とか、『無駄な力を抜いているから、コントロールが良くなった!』と驚いたことが何度もあります。そして、たくさんの球を投げるうち、無駄な力が抜けた綺麗で合理的なフォームが身体にすり込まれるのです」(同・前田氏)

制球力以外にも足りないもの

 つまり適切な投げ込みを続けると、肩が壊れるどころか、かえってケガのリスクが下がることになる。前田氏は「投げ込みを重ねることで、正しい身体の使い方を学ぶことができるのです」と言う。

「インコースの高目と低目、アウトコースの高目と低目、この4つのポイントをズバリと投げられるほど佐々木投手の制球力が上がれば、剛速球に頼らなくても相手打者を討ち取ることができます。他にも改善が求められるのは球の回転数でしょう。佐々木投手はスピンの効いた球を投げる投手ではありません。もし球の回転数を上げることに成功すれば、基本的に打者は『差し込まれた』と思うようになります。何とか打者がボールに食らいついても、凡フライやファウルに終わる可能性が高くなるのです」

 佐々木に足りないのは投げ込みだけでなく、「経験」も不足しているという。その原因は、ロッテで4年しか在籍していないのにメジャー挑戦を押し切ったからだ。

 メジャー行きにこだわって契約交渉が越年した際、「あまりにもワガママなのでは?」という批判の声が殺到したことをご記憶のプロ野球ファンも多いだろう。ワガママを押し通した結果、佐々木が失ったものは何だったのだろうか。

 前編【佐々木朗希「5勝5敗」も米メディアは「期待されたレベルの結果ではない」…渡米経験のある元プロ投手が指摘する「4文字の弱点」】では、1シーズンが普通の日常生活として感じられる重要性について詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部