NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」が日本時間2026年8月6日、火星着陸から14周年を迎えました。NASAは同月17日、14周年を祝うミッションブログを公開しています。本記事では、その内容をもとに、キュリオシティのこれまでの歩みを簡単に振り返りながら、14周年当日の活動と15年目に入った現在の探査状況を紹介します。


【▲ NASAの火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」が撮影したセルフィー(2021年3月30日公開)(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

2011年、火星へ出発

キュリオシティは、火星に微生物が生存できる環境がかつて存在したかどうかを調べることを主な目的とする、NASAの火星探査計画「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(Mars Science Laboratory:MSL)」の探査車です。日本時間2011年11月27日0時2分、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)の「Atlas V 541(アトラスV 541)」ロケットで打ち上げられました。


約8か月にわたる飛行を経て、日本時間2012年8月6日14時17分、火星の赤道のすぐ南に位置する直径約154kmの「ゲール・クレーター」へ着陸しました。このとき、ロケットエンジンを備えた降下ステージからケーブルで探査車をつり下げる「スカイクレーン」と呼ばれる方式が、火星探査車として初めて採用されています。


火星に生存可能な環境はあったのか

着陸後のキュリオシティは、ゲール・クレーター内を移動しながら、岩石や土壌の化学組成、地層の構造、火星の大気や放射線環境など、さまざまな対象を観測してきました。


その成果のひとつが、ゲール・クレーターにかつて湖や河川が存在し、少なくとも一部の時期には微生物が生存可能な環境が整っていたことを示す証拠の発見です。約30億年前の泥岩からは有機分子も検出されていますが、有機分子は生命活動以外の過程でも形成されるため、これだけで生命の存在が示されたわけではありません。


2014年以降は、ゲール・クレーターの中央にそびえるアイオリス山(シャープ山)を上りながら、積み重なった地層の観測を続けています。そこに残された岩石や堆積構造を読み解くことで、クレーター内の環境が長い時間をかけてどのように変化してきたのかを明らかにしようとしています。


14周年の瞬間も岩石を分析

NASAが2026年8月17日付で公開したミッションブログによると、地球では運用チームのメンバーが節目の日を祝い、着陸時の記憶を振り返りました。その一方で、火星のキュリオシティは普段と変わらず探査に取り組んでいました。


日本時間で着陸14周年にあたる時刻は、火星のキュリオシティにとって4976ソルの19時47分(現地平均太陽時)でした。その瞬間、キュリオシティはロボットアームを伸ばし、「トゥナス・カサ(Tunas Khasa)」と名付けられた岩石に対して、アルファ粒子X線分光計「APXS」による分析を行っていました。


※1ソル(Sol)=火星での1太陽日、約24時間40分。着陸日を0ソルとして数える。


【▲ 火星着陸14周年を迎えた日。ロボットアーム先端のアルファ粒子X線分光計「APXS」を使って岩石を分析するキュリオシティ(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

岩石や土壌の元素組成を調べるAPXSでの分析に加えて、キュリオシティは火星ハンドレンズ撮像装置「MAHLI」でトゥナス・カサの表面を撮影。化学組成と表面の特徴を組み合わせることで、岩石の性質を詳しく捉えることができます。


この時期に観測していたのは、性質の異なる地層が接し、その形成に風や水の作用が関わったとみられる場所です。キュリオシティは個々の岩石を分析するだけでなく、地層の境界や堆積構造にも目を向けることで、過去の環境を読み解こうとしています。


【▲ NASAの火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」が2026年6月に撮影した、火星の表面を覆う“ハチの巣模様”(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

着陸から15年目に入った現在もアイオリス山を上りながら、こうした地質調査を続けています。さらに、ダストデビル(塵旋風)や雲、大気中の塵、風、放射線環境なども観測し、現在の火星で起きている現象を記録しています。


アイオリス山をさらに上った先で、古代火星の環境変化を示すどのような手がかりが得られるのか、今後の探査成果が待たれます。


 


文・編集/sorae編集部


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