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自宅の冷凍庫に、死産した子どもを約3年8カ月にわたって保管していたとして、死体遺棄罪などに問われた30代の女性に対し、大阪地裁は8月7日、拘禁刑3年(求刑同じ)、保護観察付き執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

冷凍庫の中で、遺体はTシャツに包まれ、袋に入れられていた。その袋には「2022.8.28 大好きだよ」などと書かれていたメモが貼られていたという。

なぜ、被告人は亡くなった子を冷凍庫に入れ、長期間手元に置き続けたのか。

法廷では、死産に至るまでの経緯や、子どもへの思い、そして長期にわたる違法薬物との関係が明らかになった。(裁判ライター・普通)

●涙を流し、言葉を詰まらせる場面も

身柄拘束された被告人は、この季節には不釣り合いな厚手のスウェットのような服を着て、全3回の公判に出廷した。

法廷では終始、真っすぐ前を向き、質問にはきはきと答えていた。時折、涙を流し、言葉を詰まらせる場面もあった。

問われた罪は、死体遺棄罪のほか、覚醒剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反の3つであった。

起訴状によると、被告人は2022年8月ごろ、自宅で嬰児の死亡を確認したにもかかわらず、その遺体を自宅冷凍庫に入れ、2026年4月まで放置したとされる。

また、遺体が発見されたのと同じ時期に覚醒剤を使用したほか、自宅で大麻の植物片8グラム強など複数の違法薬物を所持していた罪にも問われた。

被告人はいずれの起訴内容も認めた。

●遺体を入れた袋には「大好きだよ」のメモ

検察官の冒頭陳述などによると、事件が発覚したきっかけは、死体遺棄とは関係ないものだった。

警察に「被告人から監禁されている」という通報があり、警察官が被告人宅に臨場。その際の捜索で、冷凍庫から遺体が見つかり、違法薬物の所持なども発覚した。

被告人はこの通報について「知人にはめられた」と供述したが、裁判では通報者の存在は明らかにされなかった。

冷凍庫の遺体はTシャツに包まれて、袋に入れられていた。袋には「2022.8.28 大好きだよ」などと書かれていたメモが貼られていた。

一方、同じ冷凍庫には、野菜や冷凍食品なども一緒に保管されていたという。

●胎動と心音がなくなっても病院に行けず

被告人質問で、まず死体遺棄事件について、弁護人が詳しく尋ねた。

被告人は、亡くなった子に「ユウナ」と名付けていた。出産したときの顔を見て決めたという。

妊娠には気づいていたが、育児ノイローゼや幻聴があり、通院せず、周囲に助けを求めることもできなかった。

法廷では、被告人には育てている子どもがいることや、「内縁の夫」からDVを受け、1人で育児をしていた時期があったことも明かされた。

それでもお腹の子は産みたいと思っていたという。栄養に気をつけ、アプリを使って胎動や心音を確認していた。

しかし、出産する1週間ほど前から胎動も心音も感じられなくなった。

被告人は、お腹の中で子どもが亡くなっているのではないかと思ったが、幻聴の影響などから病院には行けなかったという。

その後、自分の身体にもよくないと考え、一人で産んだという。

絵本を読み聞かせることも

産んだ子が息をしていないことは、すぐにわかったが、被告人は身体をきれいに洗い、その日は一緒に寝た。

そして、無事に生まれていたら着せようと思っていた服を着せ、袋に入れ、「大好きだよ」とメッセージを書いて冷凍庫に入れた。

その後も、たまに冷凍庫から出し、絵本を読み聞かせることもあったという。

弁護人:それらの行為はなぜおこなったのですか。
被告人:(泣きながら)生きてたら、してあげたかったからです。ずっと一緒にいたくて。

弁護人:ずっと一緒にいたいというのは?
被告人:なんて答えたら…本来生まれてほしかったので、その…赤ちゃんって重みがあるじゃないですか。死んでしまったのはわかりますが、骨になっちゃったら軽くなっちゃって、ユウナを感じられないっていう…自分のエゴで…。

亡くなった子を冷凍庫に長期間入れた行為について、裁判所は厳しい評価を示すことになる。

一方で、被告人なりに子どもへの思いを抱えながら、その死を受け入れられずにいた様子もうかがえた。

●検察官「いつまで経っても、お空に行けないよ」

検察官は、穏やかな口調で問いかけた。

検察官:ユウナちゃんの立場なら、冷凍庫に入れられ、食料品などと一緒にされたらどう思うだろう?
被告人:お母さんやめてよ、ってなると思います。

検察官:いつまで経っても、ユウナちゃんお空に行けないよ。
被告人:その通りです。

検察官:なんで死者を弔う法律があると思いますか?
被告人:…天国に行かせてあげないと…。

検察官:生きてきた方の尊厳を守らないといけないんです。送り届けないといけないんです。
被告人:…。

検察官:ユウナちゃんにできていましたか?なにかユウナちゃんに言いたいことはありますか?
被告人:ごめんね…ごめんなさい…。

被告人は必死に言葉を絞り出して謝罪の言葉を続けた。

中学生大麻、19歳で覚醒剤

もう一つ、裁判で浮かび上がったのが、被告人と違法薬物との長年にわたる関係だった。

被告人に前科はない。しかし、中学生のころに大麻を使い始め、その後脱法ハーブに手を出し、19歳のときには覚醒剤を使用したという。

風俗店で働いていた際に客と一緒に使ったり、市販の風邪薬を大量に摂取する習慣をやめる代わりに覚醒剤を使ったりするなど、逮捕されたころには1日1回のペースで使用していた。

周囲の人間関係にも、薬物が入り込んでいた。

違法薬物を常用する人物2人が自宅に居座ったことがあったほか、「覚醒剤使用者専門の風俗店に売る」といった脅しを受けたこともあったという。

被告人自身も、薬物への依存が深刻であることを自覚している。今後は治療を受けながら、知人がいない地方への移住も検討していると話した。

●「弔いの気持ち」は認めつつも

大阪地裁が言い渡した判決は、拘禁刑3年、保護観察付き執行猶予5年であった。

裁判官は、亡くなった子をきれいに洗い、子ども服を着せていたことなどから、「被告人なりの弔いの気持ちは認められる」とした。

一方で、遺体を野菜などの食料品と一緒に冷凍庫に長期間保管していたことについては、「粗雑だった」と指摘。「宗教感情を害する」と厳しく評価した。

さらに、遺体を手元に置き続けた理由についても「一緒にいたい」という動機は「死者の尊厳を軽んじている」と判示した。

薬物事件についても、依存がかなり深まっていることなどを踏まえ、再犯を防ぐには専門的な公的指導が不可欠だとして、執行猶予期間中の保護観察を付けた。

3回の公判を通じ、被告人は涙を流す場面こそあったものの、多くの時間、前を向いて質問にははっきりと答えていた。

「生きていたら、してあげたかった」

被告人には刑務所ではなく、保護観察のもと社会で薬物依存の治療を続ける道が残された。