BBQ中の学生も高波にさらわれ死亡「乾いた砂浜なら安全」ではない…静岡大が伝え続ける水難事故の教訓
今年も各地の海や川で、水難事故が相次いでいる。
静岡県の防災情報を発信するXアカウントによると、8月5日から11日までのわずか1週間に、県内で7件の水難事故が発生。1人が死亡し、9人が救出された。
相次ぐ事故を受け、静岡県水難事故防止対策協議会は8月12日から18日まで、県内全域に「水難事故多発警報」を発令。「危険な場所には近づかない」「飲酒後、睡眠不足、疲労時等の体調不良時には水に入らない」などと注意を呼びかけている。
夏休みやお盆休みは、帰省や行楽で、普段はなじみのない海岸や川を訪れる人も増える。
そんな中、SNSで改めて注目されているのが、静岡大学のウェブサイトに掲載された注意喚起だ。
そこに記されているのは、同じような場所で繰り返された水難事故と、「波が届いていない場所なら安全」という思い込みの危険性だった。
過去に何が起きたのか。静岡大が今も伝え続ける水難事故の教訓を振り返る。
●2018年、静岡大生3人が高波にさらわれ死亡
注目を集めているのは、静岡大が2020年4月、公式サイトに掲載した「令和2年度静岡大学新入生の皆様へ(清水海上保安部からのお言葉)」と題した文章だ。
静岡大の学生が巻き込まれた過去の水難事故が詳しく紹介されている。
2018年8月、静岡キャンパス近くの海岸で遊んでいた静岡大の学生3人が高波にさらわれ、死亡した。
静岡大が事故当時に公表した資料によると、現場は静岡市駿河区の高松海岸だった。大学はその後、3人全員の死亡が確認されたことを公表している。
しかし、静岡大の学生がこの周辺で水難事故に遭ったのは、これが初めてではなかった。
●2001年、2004年にも…繰り返された事故
清水海上保安部のメッセージによると、2004年6月には、静大生約60人が静岡キャンパス近くの海岸でバーベキューをしていた際、学生2人が高波にさらわれ、死亡した。
2人の死因は頭部打撲だった。死亡推定時刻などから、高波にのまれた直後、海底にたたきつけられて死亡したと考えられるという。
さらに、その3年前の2001年7月にも事故は起きていた。
静大生約15人がキャンパス近くの海岸でバーベキューをしていた際、1人が高波にさらわれた。
仲間の学生1人が救助しようと海に入ったものの、2人とも沖へ流され、自力で戻れなくなった。このときは、到着したヘリコプターにつり上げられ、2人とも救助されたという。
2001年、2004年、2018年──。
清水海上保安部は、こうした事故を振り返り、「静大生が海岸で波にさらわれる事故が繰り返されています」と指摘している。
●「乾いた砂浜なら波は来ない」は間違い
なぜ、海岸にいただけの学生たちが高波にさらわれたのか。
清水海上保安部が注意を促しているのが、「波が届いていない場所なら安全」という思い込みだ。
海岸では、普段から波が打ち寄せている砂浜は濡れており、その手前は乾いている。そのため、「乾いた場所まで下がれば波は来ない」と考えてしまいがちだ。
しかし、清水海上保安部は、ここに「落とし穴」があると指摘する。過去の事故では、乾いた砂浜にいた学生も高波にのまれていたからだ。
清水海上保安部によると、海岸や岸壁などでは「100回の波に1回程度」、それまでの波の高さの1.5倍の高波が打ち寄せ、さらに「1000回に1回程度」では2倍もの高さの大波が打ち寄せるとされている。
そして、静大生が巻き込まれた2001年、2004年、2018年の3件の事故では、いずれも波浪注意報が発表されていたという。
清水海上保安部は、事故を繰り返さないために最も重要なこととして、「波が高いときには絶対に海には近づかない」と呼びかけている。
●大学も「大変危険な場所」と注意喚起
静岡大も、2018年の事故を受けて対策を強化している。
大学が現在公開している「学生生活に関するお知らせ、注意事項」では、静岡大付近の高松海岸・大谷海岸について「これまでも本学の学生数名が命を落としている大変危険な場所」と説明している。
高松海岸については、事故直後にも「潮の流れが速く、すぐに水深が深くなる場所」で、消波ブロックも多数設置されているため「大変危険な場所」だと注意を呼びかけていた。
また、公認・非公認のサークルや学生寮自治会などが主催するバーベキューや花火だけでなく、大学の行事や私的な集まりについても、高松海岸と大谷海岸を使用しないよう定めている。
●昨年夏だけで241人が死亡・行方不明
水難事故は、静岡だけの問題ではない。
警察庁の統計によると、昨年7〜8月の2カ月間に全国で発生した水難事故は446件。535人が水難事故に遭い、このうち241人が死亡または行方不明となった。
中学生以下に限っても103人が水難事故に遭い、15人が死亡または行方不明となっている。
水難事故の発生件数を都道府県別にみると、最も多かったのは沖縄県の33件、次いで兵庫県が27件、東京都・神奈川県・岐阜県がそれぞれ26件だった。
海や川では、普段は穏やかに見える場所でも、気象条件などによって状況が大きく変わる。とりわけ海では「ここまで波は来ていないから大丈夫」とは限らない。
静岡大が繰り返し伝えてきた事故の記録は、その思い込みが命にかかわることを物語っている。

