「近い将来、ギャグ漫画は無くなるかも」少年ジャンプ出身・ギャグ漫画家2人の危機感とは。「SNSに面白い投稿が数億ある」コンテンツ飽和時代のリアル
つの丸氏は『マキバオー』シリーズや『モンモンモン』、大石浩二氏は『いぬまるだしっ』『トマトイプーのリコピン』など、『週刊少年ジャンプ』で長年ギャグ漫画を描き続けてきた両氏に、SNS時代における作品作りの難しさを聞いた。
──8月4日に発売されたばかりの新作の話を伺わせてください。つの丸先生の『ドッグファーザー』は、ご自身と保護犬たちとの日々を描いたコミックエッセイです。本作を描くきっかけは?
つの丸:俺は基本、描きたいものが現れるまで描きたくないタイプなんですよ。でも、最近記憶が曖昧だから、忘れないうちに愛犬たちの話を描きたいと思ったんです。
大石:漫画家目線でちょっと上から言っちゃいますが、エッセイ漫画って基本ノンフィクションだからエンタメ的な面白さは出しづらいのに、この作品は丁寧なギャグのフリとか、隠しきれないエンタメ要素があるのがすごいんです。
あと、犬をあらゆる角度から描いてるのに、全部パースが合ってるのもすごい!
つの丸:技術的なことはどうでもいいんだよ(笑)。
大石:エンタメのベテランだから、自然とテクニックがにじみ出ちゃうんでしょうね。
つの丸:でも、泣かせにはいきたくないし、かわいいだけの話にもしたくなくて。
保護犬をテーマにすると、ペット業界の暗部ばかり目について憎悪が生まれるし、かわいいだけだと安易に飼おうとする人が出てしまうから。だから「犬を飼うのは大変だけど、その暮らしは尊くて楽しいぞ」という部分を攻めたいんだよ。
大石:普通はそのどちらかに寄せちゃいますからね。
つの丸:犬との日々を淡々と描いた、何も起こらない漫画。そこにしみじみと流れる何かを感じ取ってもらいたい。
◆今までの漫画で一番描くのがきつい
──大石先生の『令和のおもちゃ ウーピン』は、昔のおもちゃなどノスタルジーある題材を入り口に、生きづらさを抱える中年会社員たちの悲喜こもごもを描いた作品です。
つの丸:最初読んだとき、俺は「大石がこういうリアルなの描くんだ」って驚いたよ。
大石:正直、今までの漫画で一番描くのがきついです! 最初に編集部から「40代以上の中年男性たちを元気にする漫画を」って言われて、かなり迷いました。僕は会社員経験が一度もないから、自分がまったく知らないことを描かなきゃいけないので。
つの丸:だよな。だから、いろいろリサーチしながら描いているんだろうなって思ってた。たまに男女の恋愛の機微とかも描いてて、「なんで大石にこんなにいい話をされて、納得しなきゃいけないんだよ!」って(笑)。
大石:あはは(笑)。僕のなかの「疲れたおじさん」の人格を憑依させて描いていますから。
──SNSの反響は見ますか。
大石:僕はかなり見ますね。
『ジャンプ』のアンケートシステムをSNSに当てはめる感じで。「告知用にはこういうページは引きがありそうだな」「この題材は反応ないな」と試しながら描いています。
つの丸:俺は完全に見てない。反応で作品の流れに影響を受けるのが嫌だから。
◆近い将来ギャグ漫画はなくなるかもしれない
──正反対な作品作りをされているお二人ですが、コンテンツが多い時代に、ギャグ漫画を描き続ける意義とは。
大石:ギャグ漫画自体、もうなくなる気がします。現に、純粋なギャグ漫画を描いている人は、増田こうすけ先生やうすた京介先生など、極端に少なくなっていると思います。
