日本人の「2人に1人」が悩むアレルギー性鼻炎--薬で限界を感じたら、手術という選択肢がある【医師解説】
アレルギー性鼻炎は、薬を飲み続けても「完治」するわけではなく、症状を「抑制」できているにすぎません。「毎年きちんと薬を飲んでいるのに、鼻づまりだけは改善しない」--その背景には、薬だけでは解決できない原因が隠れていることがあります。今回は、アレルギー性鼻炎による鼻づまりの原因や治療法、手術を検討するタイミングについて、鼻のサージクリニック新宿院長の川野先生に聞きました。
※2026年5月取材。
監修医師:
川野 健二(鼻のサージクリニック新宿)
1997年、順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座に入局後、みつわ台総合病院・順天堂大学医学部附属順天堂医院・越谷市立病院・順天堂大学医学部附属静岡病院の各耳鼻咽喉科医長を歴任。2010年より鼻のクリニック東京に勤務し、2017年に同院院長に就任。2022年よりほしなが耳鼻咽喉科副院長を務めた後、2026年7月、医療法人社団翔和仁誠会 鼻のサージクリニック新宿院長に就任。
アレルギー性鼻炎の実態。「2人に1人」が示すもの
編集部
アレルギー性鼻炎に悩む人は、どのくらいいるのでしょうか?
川野先生
2019年の全国疫学調査では、日本人の約2人に1人がアレルギー性鼻炎を有すると報告されています。今では非常に身近な病気といえるでしょう。
ただ、私が日々診療していて感じるのは、その数字以上に鼻づまりを抱えている人は多いということです。
「自分は花粉症だから春だけつらい」「季節が終われば治る」と思っている人も多いですが、実際に内視鏡で鼻の中を診ると、炎症を繰り返したことで粘膜が厚くなり、花粉のシーズンが終わった後も鼻づまりが続いている人は少なくありません。
さらに、夜になると副交感神経(体を休ませる神経)の働きや横になる姿勢の影響で、鼻の粘膜に血液が集まりやすくなり、日中より鼻づまりが強くなることがあります。そのため、本人は「昼間は困っていない」と思っていても、睡眠中は十分に鼻呼吸ができていないケースもあります。
また、花粉症以外にも、寒暖差や気温の変化、食事などをきっかけに症状が表れる非アレルギー性鼻炎という病気があります。アレルギー性鼻炎と非アレルギー性鼻炎を併せ持っている人も珍しくありません。
本人も気付いていない鼻づまりまで含めると、実際にはさらに多くの人が鼻呼吸に問題を抱えていると感じています。私たちは、このような状態も含めて「かくれ鼻づまり」と呼んでいます。
編集部
薬を飲んでいても、鼻づまりが改善しない人がいるのはなぜでしょうか?
川野先生
アレルギー性鼻炎の薬は、炎症を抑えるという点では非常に大切な治療です。実際に、薬だけで症状が十分改善する人も多くいます。
一方で、「毎年きちんと薬を飲んでいるのに、鼻づまりだけは改善しない」という人も見られます。その理由は、鼻づまりの原因がアレルギーだけではないからです。
炎症を繰り返すことで粘膜が厚くなっていたり、鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)や下鼻甲介肥大(かびこうかいひだい)など、鼻の構造そのものが原因になっていたりする場合は、薬だけでは十分な改善が得られないことがあります。骨や軟骨の曲がりを薬で元に戻すことはできません。
また、アレルギー性鼻炎では、鼻の神経が刺激に対して過敏になっていることがあります。神経が過敏になると、わずかな刺激でも鼻水や鼻づまりが起こりやすくなり、症状が長引くことがあります。薬が効かないのではなく、薬だけでは改善できない原因が残っていることもあるのです。
だからこそ、内視鏡やCTで鼻の状態を確認し、原因を見極めた上で治療法を選ぶことが大切です。
薬だけで改善しない鼻づまり。その原因と治療の選択肢
編集部
薬だけで改善しない場合には、どのような治療法がありますか?
川野先生
まず伝えたいのは、薬で十分改善する人に、無理に手術を勧めることはないということです。
一方で、毎年薬を続けても鼻づまりや鼻水を繰り返し、日常生活に支障が出ている人では、手術が有効な場合があります。
アレルギー性鼻炎では、鼻の神経が刺激に対して過敏になっていることがあります。神経が過敏になると、わずかな刺激でも「鼻水を出す」「鼻をつまらせる」といった信号が過剰に送られ、症状が続きやすくなります。
そのような場合に選択肢となるのが、後鼻神経切断術(こうびしんけいせつだんじゅつ)です。この手術はアレルギーそのものを治すのではなく、神経の過剰な反応を抑え、鼻水や鼻づまりを改善することを目的としています。
神経ではなく、鼻中隔弯曲症や下鼻甲介肥大など、鼻の構造そのものが原因となっている場合には、それらに対する手術を組み合わせることもあります。
アレルギー性鼻炎だから同じ治療を行うのではなく、一人ひとりの鼻に合わせて治療を選ぶことが大切です。
手術を検討するタイミングは?
編集部
どのような人が手術を検討するとよいのでしょうか?
川野先生
目安となるのは、毎年同じように薬を続けているにもかかわらず、十分な改善が得られていない人です。
例えば、
・花粉の時期になると毎年強い症状が出る
・薬を飲んでも鼻づまりだけは残る
・夜になると鼻がつまって口呼吸になってしまう
・朝起きると口が乾いている
・毎年同じ症状を繰り返している
このような人は、一度鼻の状態を詳しく調べてみることをおすすめします。
アレルギー性鼻炎の人は、症状が強く出る時期と比較的楽な時期との差が大きいため、「花粉の季節が終わったから治った」と感じやすい傾向があります。
しかし実際には、炎症を繰り返すことで粘膜の腫れが残っていたり、鼻中隔弯曲症などの構造的な問題が重なっていたりして、花粉の季節以外でも鼻づまりが続いている人は少なくありません。
特に夜間は鼻づまりが強くなりやすく、睡眠の質に影響していることもあります。
症状が軽い時期があるから大丈夫と考えるのではなく、一度自分の鼻の状態を確認してみることが大切です。
編集部
最後に、アレルギー性鼻炎で悩んでいる人へメッセージをお願いします。
川野先生
アレルギー性鼻炎はとても身近な病気であるだけに、「毎年同じように薬を飲むもの」「花粉の季節が終われば大丈夫」と思っている人も多くいます。
しかし、症状が落ち着いたように感じていても、実際には鼻づまりが残っていたり、睡眠中の呼吸に影響していたりすることがあります。
特にアレルギー性鼻炎の人は、花粉の季節以外の鼻づまりに気付きにくいことがあります。
薬で十分改善する人もいれば、薬だけでは改善しない人もいます。大切なのは、「毎年同じだから」と考えるのではなく、自分の鼻づまりの原因を知り、その原因に合った治療を選ぶことです。
私は、花粉症そのものではなく、その先にある呼吸の質まで考えた治療が大切だと思っています。
毎年同じ症状を繰り返している人や、夜間の鼻づまり、口呼吸が気になる人は、一度耳鼻咽喉科で自分の鼻の状態を確認してみてください。
編集部まとめ
アレルギー性鼻炎は「花粉の時期だけの病気」と思われがちですが、実際には季節を問わず鼻づまりが続いていたり、自分では気付かないうちに睡眠や日常生活へ影響していたりすることがあります。
鼻づまりの原因はアレルギーによる炎症だけでなく、神経の過敏な反応や鼻の構造的な問題が関係している場合もあります。そのため、症状に応じて薬物療法だけでなく、手術を含めたさまざまな治療法を組み合わせることで改善が期待できます。
「花粉症だから仕方ない」と思い込まず、一度自身の鼻の状態を確認してみることをおすすめします。
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