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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】とんでもない新人が出てきた。中学1年生、13歳の小八重葵美だ。西川美和監督(52)の最新作「わたしの知らない子どもたち」に二階堂ふみ(31)とダブル主演。新星、いや超新星とあえて書かせてもらおう。

 9月10日に開幕する第51回トロント国際映画祭のプラットフォーム部門(コンペティション)でオープニング上映の栄誉に浴する作品は、西川監督が原案、脚本、監督を務めたオリジナルの意欲作。戦争で家族を失い、社会からこぼれ落ちた子供たちを題材に描いたドラマだ。

 低年齢の少女たちまでもが性的搾取の危機にさらされていた混乱期。オカッパ頭をバッサリと刈り、自らの性別を隠して少年として生きることを選んだ少女・茅野琴子(小八重)と、敗戦とともにすべてを失い、生徒をも棄(す)てざるを得なかった教師の曾根文美子(二階堂)。2人の再生の物語が紡がれる。

 お先に拝見したが、堂々たる骨格に脱帽した。とりわけ小八重の存在感。小学5年、11歳の時に約500人のオーディションの中から選ばれたそうだが、その“目力”には舌を巻いた。少年として生きる難しい設定も自然体で表現してみせ、心を奪われた。

 約12万人もいたとされる戦災孤児。琴子の周りの子役たちも西川演出に乗って生き生きとスクリーンの中で生きてみせた。役所広司、田中裕子、竹野内豊、岡田准一、吉田羊、坂東龍汰ら大人の俳優たちがしっかりと脇を固めていた。

 琴子の父(竹野内)が音楽家であったという設定から劇中に“敵性音楽”も散りばめられていたが、ここから当コラムはその音楽を軸に書き進めていく。

 ドビュッシーのピアノ組曲「子供の領分」、ショパンの「ワルツ第10番」、サラサーテの「サパテアード」、そしてフリースの「眠れ、我が王子よ、おやすみ」…などが効果的に使われていた。

 ラストに流れるテーマ音楽「太陽と子どもたち」を作ったのは、「国宝」の原摩利彦さん(42)だ。その原さん、演奏を東北ユースオーケストラに委ねた。「音楽の視点から、音楽も子供たちと作りあげたら」と西川監督に進言して実現したそうだ。

 2023年に71歳で他界した坂本龍一さんが東日本大震災で被災した東北の復興支援を目的に、岩手、宮城、福島の被災3県の子供たちを集めて結成させたオーケストラ。筆者は13年から始まった演奏会の東京公演に欠かさず足を運んできただけに西川作品への参加には心の底から感激するものがあった。

 3月に羽生結弦(31)のアイスショーにゲスト出演したり、5月には日比谷音楽祭に参加したりと活動の場を着実に広げている同オケ。「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」など映画との関係も深かった坂本さんも天国で喜んでいるに違いない。

 このように耳でも感動を誘うほか、「ゴジラ―1.0」で第96回アカデミー賞視覚効果賞に輝いた制作プロダクション「白組」が再現した闇市など1945年当時の街並みの映像も圧巻。西川監督のタクトに乗って大人のプロ集団と少年少女たちが作りあげたアンサンブルが見事。トロントでも、そして10月16日公開の日本でも評判を呼ぶのは間違いなしと断言する。