【横関寿寛】孫正義が”引退宣言”を撤回して意欲マンマン、「東京電力」の資本提携先は「ソフトバンクに決まり」と言われる”納得の理由”

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東京電力は赤字に転落

東京電力ホールディングスが7月29日に発表した’26年4〜6月期連結決算は、経常利益が前年同期比89%減の114億円で、営業損益は646億円の黒字が342億円の赤字に転落と、まさにボロボロだった。

今年4月には待望の柏崎刈羽原発6号機の再稼働を果たし、470億円の収益改善につながっていたにもかかわらずだ。これは時期的に非常にマズい。

というのも東電は資本提携先と交渉の最中だからだ。

東電は3.11東日本大震災の事故以後、経営環境や国の方針に合わせて「総合特別事業計画」(総特)の改訂を重ねてきた。当初は原発事故の賠償機構の設立、東電のHD制移行に伴う内部での分社化などで、’21年以後は資金捻出と現在的な経営環境に向き合うということで、現在はこの課題を継続した第五次総特の過程にある(’26年1月認定)。

そして第五次総特では、福島第一原発の廃炉、賠償費用の捻出と、脱炭素化、データセンター需要の成長投資資金の不足を補うべく、外部資本の導入を掲げている。報道によれば現在、ソフトバンクと日本産業パートナーズ(JIP)の国内組と、KKR、ブラックストーン、ブラックロック系の米投資ファンドの国外組の5陣営に絞られたとされ、当然、絞り込み段階での収益悪化は好ましくない。

ソフトバンクが最終的には狙うのは……

「候補者は今後、本格的なデューデリジェンス(資産査定)に入るところ。収益構造が悪化すれば、提携戦略に支障をきたしかねない」(経済部記者)

東電の現状はいったんおくとして、出資の候補先のうち、並々ならぬ意欲を見せているのが、ソフトバンク(SB)の孫正義氏だ。現在68才の孫氏は、6月24日に行われたSBの定時株主総会で60代までとしていた“引退宣言”を撤回し、今後10〜15年はトップとしてAI戦略を主導するとしたからだ。

もちろんAI戦略に欠かせないのがデータセンターで、既に孫氏は米オハイオ州での約80兆円、フランスでの約14兆円など、海外でのデータセンターに巨額な投資を打ち出している。そして国内に目を転じれば、データセンターに必須の電力を生み出す東電が外部資本を必要としているという。だから孫氏にしてみれば、今回の話はまさに渡りに船というわけだ。

さて携帯電話のソフトバンクで通信インフラを手にし、次は電力インフラ、そしてその先のAIインフラまで握ろうという孫氏の野望は叶うのか。

「みずほ」の関係が影響する

ソフトバンクの東電への資本参加は既に「出来レース」と見るのは、元外資系証券マンだ。

「ソフトバンクは旧富士銀行の笠井和彦副頭取が移籍したことで大きくなった。正式な現在の最高財務責任者は、みずほ信託出身の後藤芳光さん。つまりみずほとソフトバンクは切っても切れない仲。そうしたところ、6月の東電の株主総会で、唐突に興銀出身の横尾敬介さんが会長に就任した。もうソフトバンクが選定される下地が出来上がっているとしか思えない」

そして出口戦略をこう見る。

「第五次総特では、株式の非公開化も選択肢の1つとされています。東電は福島原発の補償で利益は出ませんから、一度非上場化する必要があります。そしてソフトバンクを中心に、外資系プライベートエクイティが出資する。’23年12月に非上場化した東芝の再生のイメージです」

外部資本の募集は今年1〜3月に行われ、当初は数十社が名乗りを上げたとされ、その中には関西電力、再生エネルギーのウエストホールディングスの名前が取沙汰されたこともあった。電力事業への子孫参加なのだから、同じ電力事業者が手を上げる方が自然とも思えるのだが、もはやそんな事すら忘れ去られたかのように事態が推移しているのを見ると、この指摘を裏付けているようだ。

具体的には何も語っていない

ただ孫氏の電力インフラ・オーナーの野望は、いくぶんボヤけて見える。

東電の出資とそれによって成功するデータセンター構想を公言したのは株主総会の場が初めてで、具体的にどうやって発電量を増やすかはまだ具体的には語られていない。国内の電力事業での明確な動きとしては、大阪・堺市のシャープの工場跡地でデータセンターを構築すると同時に開始した、バッテリーと蓄電事業があるのみだ。

一方で、7月14日に行われたイベントの場で、2040年のAI社会のイメージとして、核融合発電が有望で、それまでは天然ガスによる火力発電が間を繋ぐとの見方を示している。この辺りはいつもの孫氏同様、まずはアドバルーンを上げて、走りながら考えるということなのだろう。

本来なら原発の建て替え・新設を行えば話は早いが、孫氏は東日本大震災以後、「死ぬまで反原発」と公言してきた。さすがに「死ぬまで」とまで宣言した以上、こちらは簡単に撤回できないということか。それとも引退宣言と同様、必要とあらば撤回するのだろうか。

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