アンドロメダ銀河の星形成率が過去5億年間で低下 ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを分析

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ワシントン大学のTobin Wainer氏を筆頭とする研究チームは、地球から約250万光年先の「アンドロメダ銀河(M31)」における星形成率が、過去約5億年にわたって低下し続けているとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されています。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを使って作成された「アンドロメダ銀河(M31)」のパノラマ(Credit: Science: NASA, ESA, Benjamin F. Williams (UWashington), Zhuo Chen (UWashington), L. Clifton Johnson (Northwestern); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】

星々が伝える銀河の進化

アンドロメダ銀河は、銀河の進化を探るうえで絶好の研究対象です。宇宙のスケールで見れば天の川銀河のお隣と言えるほど近くにあるため、銀河を構成する個々の星を分解して観測することができるからです。


こうして捉えられた一つ一つの星々は、銀河がどのような歴史を辿ってきたのかを紐解くための、貴重な記録として機能しています。これまでの研究では、アンドロメダ銀河が約20億年前に他の銀河との相互作用や合体を経験したことで、爆発的な星形成のピークを迎えたことが示唆されていました。


2億個の星から読み解いた星形成率の低下

Wainer氏らのチームは、ハッブル宇宙望遠鏡を用いてアンドロメダ銀河を対象に行われた2つの観測プロジェクト(※)のデータを統合して分析を行いました。星形成が活発な円盤部分の3分の2を前例のない解像度でマッピングし、約2億個もの星々の年齢や質量を測定することに成功しています。


※…銀河円盤の北側を対象とした「PHAT(Panchromatic Hubble Andromeda Treasury)」と、南側を観測した「PHAST(Panchromatic Hubble Andromeda Southern Treasury)」。


分析の結果、アンドロメダ銀河における星形成率は過去およそ5億年にわたって低下し続けていて、特に直近の4000万年では急激に落ち込んでいることが判明しました。


研究チームによると、約5億年前のアンドロメダ銀河では1年あたり太陽約1個分の質量に相当するペースで星が形成されていたものの、約4000万年前にはその半分にまで低下。現在では1年あたり太陽質量の約5分の1程度にまで低下しているといいます。


また、最近の星形成の大部分は銀河の中心から約3万2000光年離れたリング状の構造に集中しており、この領域での星形成活動の低下が、銀河全体の星形成率を押し下げる主な要因になっているといいます。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した「アンドロメダ銀河(M31)」と、最近星形成が起こった場所(1)、および最近は起きていない場所(2)のクローズアップ。質量が大きくて寿命が短い星ほど青く、質量が小さくて寿命が長い星ほど赤いため、拡大してみると最近星形成活動があった場所のほうが青く見える(Credit: Image: NASA, ESA, Benjamin Williams (UWashington), Zhuo Chen (UWashington), L. Clifton Johnson (Northwestern); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】

衛星銀河「M32」との相互作用の痕跡も?

さらに注目すべき成果として、局所的な環境と星形成活動の関連性を示唆する知見も得られました。アンドロメダ銀河の近くには衛星銀河(伴銀河)の「M32」が存在しますが、研究チームによれば、M32に近い領域では約6000万年前から星形成が顕著に低下していることがわかりました。


M32は過去にアンドロメダ銀河と重力を介した相互作用を起こしたと考えられていますが、それがいつだったのかははっきりしていません。今回判明した星形成率低下のタイミングは、アンドロメダ銀河とM32が接近・衝突した時期を特定するうえで、有力な手がかりとなる可能性があります。


ローマン宇宙望遠鏡の観測に期待

アンドロメダ銀河における星形成率の減少は、単に星の材料となるガスが枯渇したわけではないようです。Wainer氏は「マラソンを完走した後に、少し息を整えるようなものです」と述べており、アンドロメダ銀河の星形成活動が活発な状態から落ち着いた状態へと移りつつある様子を表現しています。


アンドロメダ銀河におけるここ数億年間の星形成活動を紐解いた今回の研究は、巨大な渦巻銀河がどのように進化し、星形成をコントロールしているのかを理解する上で、重要なステップとなります。


早ければ2026年8月30日にも打ち上げられるNASA(アメリカ航空宇宙局)のナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman)宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡の100倍以上の視野を持ち、一度の観測でより広大な領域を観測することができます。


NASAによると、ローマン宇宙望遠鏡を使ってアンドロメダ銀河の銀河円盤や銀河ハローを観測するプログラムがすでに承認されていて、打ち上げを待っている状態です。新たな宇宙望遠鏡によるアンドロメダ銀河の観測を通じて、銀河衝突の歴史や星形成活動の理解がさらに深まることが期待されます。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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