武蔵関「光陽楼」の赤担々麺

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ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

【写真】メンマもつやつや

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梅雨が明けて夏が突然本気を出しはじめた。こうも暑い日が続くと、気ままに外出することは控えたほうがいいのだろう。それが昨今の暴力的な夏の暑さ。

おのずと日々の行動が同じパターンになってくる。日中は涼しい部屋で粛々と仕事をして、原稿仕事が一段落したタイミングで、えいやっと夕飯の食材を見繕いに地元のスーパーを2、3軒回る。それだけでもう、体力ゲージがぐんぐん減ってゆく。ただし、僕はそのついでに、可能な限り銭湯にだけは寄りたい。日中に体内にこもった熱を、水風呂、もしくは冷シャワーを浴びて抜く。これを定期的にしないと、気分的に明日を生きられないのだ。

というわけで、数回前のデジャヴのような絵になるが、昨日も練馬区の武蔵関駅近くにある銭湯「第二亀の湯」へ。地元の話ばかりになってしまい申し訳ないけれど、この暑さに免じて大目に見てほしい。


「第二亀の湯」

ところで亀の湯の目と鼻の先に、一軒の中華料理店があることは以前から認識していた。偶然タイミングが合わなかったり、その日の気分が別のものだったりで今まで縁がなかったんだけど、店前に常にママチャリが大量に停まっていることからも、なかなかの人気店のようだ。店名を「光陽楼」といい、どちらかというと、町中華というよりは本格大陸中華系の店らしい。この日はタイミング、それから、暑すぎて一刻も早く冷たい酒を飲みたい! という気分ががっちり噛み合い、入ってみることに。


「光陽楼」

メニューはかなり豊富で、お得なセットも単品もあれば、この夏限定の冷やし麺系も複数ある。酒類もかなり豊富で、各種焼酎のボトルがあることから、酒飲みにも優しい店のようだ。僕の愛するホッピーもあるのが嬉しい。が、今日は壁に貼られたあるメニューがどうしても気になった。


こんな日にいいかも

「大盛りレモンサワー セット」(税込600円)。ホッピーセットのようにナカがおかわりできるスタイルで、ナカは250円らしい。なんだか身体が甘酸っぱさを求めている。これにしよう。


「大盛りレモンサワー セット」

さっそく届いた大きな瓶のハイサワーを、焼酎と氷入りのジョッキにドボドボと注いでごくり。......っふぅ、生きかえる。

麺類だけでもかなり種類のある店だけど、実はもう入店前に心を決めていた。店頭に通年のぼりが立っているので名物のひとつなのであろう「担々麺」。甘酸っぱさに続き、刺激的な辛さも身体が求めている気がする。「赤担々麺」(1,000円)、「赤担肉ワンタンメン」(1,200円)、「赤担バター」(1,050円)、「黒胡麻担々麺」(1,000円)のバリエーションがあるなか、今回はいちばんオーソドックスらしい赤担々麺をチョイス。


「赤坦々麺」

届いた赤担々麺は、見るからにかなりのボリューム感。頂点にのった糸唐辛子をよけてみると、たっぷりのひき肉、ちんげん菜、白髪ネギ、メンマなどなど、具だくさんなのが嬉しい。


具だくさん

いざスープをひと口。......え!? うっま! なんだこのうまさは!

ここで今さら気づいたけど、そもそも僕は、担々麺のことをほとんどなにも知らなかったじゃないか。これまで店で頼んだ記憶もそんなにない。たとえば醤油ラーメン、塩ラーメン、とんこつラーメンなどならば、あ、これはこういう食材の構成からきている美味しさなんだろうな、と、ある程度理解ができる。しかしこの担々麺は不意打ちというか、ガツーンと、複合的で華やかな旨味と辛み、そして上品な甘みが攻めてくる。

まず、ベースは鶏がらスープなのだろうか。どっしりとした旨味だ。表面には油の層が浮いていて熱々。それから特徴的なのは、やはりねりごまのコクだろう。これがスープをしつこさはないのにすさまじく濃厚な味わいに仕立て上げている。辛さは麻辣両方と思われるが、あくまで適度。そこに各種の具材から出た風味あれこれが相まって、とにかくバランスがすごい味に仕上がっている。


スープがもううますぎる

麺を引き上げてみてまた驚いた。太い! まるでうどんのようだ。そのぷりぷりの麺をすすって噛み締めてみると、最初は優しい甘さを感じる。が、やがて中華麺らしいかんすいの風味も感じだし、味わいにグラデーションがある。かつ、スープががつんとうまいのでこの太麺がまったく負けていない。


麺もすごい

もうひとつ印象的だったのがメンマで、よくある市販のものとは深みというか発酵感のようなものが違うので、自家製なのかもしれない。その味と食感が、麺、スープと絡まると、さらなぬ恍惚の味わいになる。


メンマまでこんなに......

自分がよく行く地元の銭湯の近くという、失礼ながらこんな地味な場所に、こんなにもクオリティの高い中華料理店があったとは。

だがまだ、厳密にははっきりしていない。可能性のひとつとして、そもそも僕は、今まであまり食べてこなかっただけで、担々麺というもの自体が異常に好きなんじゃないだろうか? でもなぁ、世の中に光陽楼の担々麺と並ぶくらいうまいものが、そんなに無数にあるとも思えないし......。


レモンサワーのナカをおかわりして落ち着こう

というわけで、この記事をごらんの識者の皆さまにぜひ、うまい担々麺の情報をお寄せいただきたいと思っている昨今だ。

取材・文・撮影/パリッコ