記事のポイント
供給過剰と消費者疲れにより新作スニーカーの成長率が鈍化し、転売市場でも定価を上回る商品の割合が低下している。
ナイキやニューバランスは発売数を絞り、完全に新しいシルエットと大型キャンペーンで一足ごとの特別感を高めている。
アディダスは過去のモデルをコラボで再活性化し、競争軸は発売数から新しさや物語性、実際に履きたい価値へ移っている。


近年、スニーカーの発売スケジュールは新作のリリースで溢れかえっている。ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)といった大手ブランドは、ユニークな限定版スニーカーの転売ブームに乗じて、熱狂的なコレクターでさえも圧倒されるほどのスケジュールを作り出した。

消費者は頻繁な新作スニーカーの発売に飽きている



しかし、データによると、消費者は頻繁な新商品発売への関心を失いつつあるようだ。新作スニーカーの売上成長率は、米国のブランドにおいて2022年に13%でピークを迎えたあと、年々着実に低下し、2025年にはわずか1%強にまで落ち込んだ。

小売分析企業のエディテッド(Edited)のデータによれば、ナイキのダンク(Dunk)は2023年に33%の完売率を記録していた。しかし2024年には、ダンクの75%が売れ残って棚に並んだままとなった。

そこで現在、スニーカーブランドは異なるアプローチをとっている。発売スケジュールを減速させ、既存モデルの派生版ではなくまったく新しいシルエットを投入することで、一つひとつの発売をより印象的に感じさせようとしているのだ。

これは消費者のトレンドとも一致している。いまやスニーカーを買うことは、利益を得るために転売することよりも、収集して履くことに重きが置かれている。

転売スニーカーで簡単に10倍の上乗せができた売り手市場は、スニーカーが定価かそれ以下で売られる買い手市場へと変わった。2026年初頭の時点で、米国のスニーカー転売市場の総流通額は前年の60億ドル(約9000億円)から約65億ドル(約9750億円)へと成長した。

しかし、定価を上回る価格で取引される発売品の割合は、2020年のピーク時の58%から47%低下した。

在庫過剰と転売市場の崩壊



頻繁な発売カレンダーの定番となっていたジョーダン(Jordan)のシルエットのひとつ、ナイキのエアジョーダン・ハイ(Air Jordan High)は、例年より大幅に少ない発売数にとどまっており、スニーカー情報サイトのゼットスニーカーヘッズ(Zsneakerheadz)によれば、2027年はさらに少なくなる見込みだという。

2025年、ジョーダンは100を超えるエアジョーダンのモデルを発売した。

同様に、2024年にナイキはダンクの生産を縮小する計画を発表した。ダンクは、新カラーやコラボレーションを毎週のように新たに発売することで、2020年代初頭にはもっとも人気を集めるモデルのひとつになっていた。この動きは、供給過剰とダンクの売上が70%落ち込むという予測によって引き起こされた。

2023年のピーク時には150を超える新作のナイキダンクがあったが、その数は2025年には数十足にまで減少した。

スニーカー在庫の供給過多は、アメリカの消費者による自由裁量支出の落ち込みと相まって、新作への需要を明確に減少させた。303 Boards(303ボード)やスニーカー・シティ(Sneaker City)を含む複数のスニーカー転売企業が破産を申請し、全米のスニーカー転売店は在庫を処分して店舗を閉鎖せざるを得なくなった。

過去5年にわたりスニーカーブランドと協業し助言してきた、サプライチェーン企業ソティラ(Sotira)の創業者アムリタ・バシン氏は、スニーカーのハイプ(過熱)バブルははじけたと語る。

「私はこの一連の流れのなかでスニーカー業界に身を置いてきたが、スニーカー関連のディスコード(Discord)が数千人のアクティブメンバーから数百人にまで減っていくのを見てきた」と彼女は言う。

「ナイキやアディダスといったブランドは、あまりにも多くの在庫をつくりすぎた。彼らは流通経路を詰まらせ、スニーカーを特別なものと感じさせなくしてしまったのだ」。

スニーカーの供給過剰を示すさらなる間接的な証拠として、スニーカー転売アプリのゴート(GOAT)は5月、大幅に値引きしたスニーカーを販売する姉妹サイト、Sneakers.comを立ち上げた。並ぶスニーカーはすべて新品で、定価を下回る価格で売られ、定番の靴と新発売のスタイルの両方が含まれる。

特筆すべきは、ジョーダンが2027年生産を縮小すると報じられているまさにそのエアジョーダン1ハイ(Air Jordan 1 High)が、最安で60ドル(約9000円)で見つかることだ。

発売を減らし新作を印象づける



これを受けてスニーカーブランドは、味気ない頻繁な発売ではなく、各リリースに結びついた大規模なメディアキャンペーンを通じて、一つひとつの新作をより印象的なものにしようと取り組んでいる。

ナイキのCEOであるエリオット・ヒル氏は、直近の決算説明会で、ジョーダンブランドとナイキのフットウエア・スポーツウエア両部門の売上鈍化について語り、「持続可能なトップライン(売上高)の成長を(回復させる)ことは極めて重要だ。両カテゴリーは合わせて当社の売上の約半分を占めているからだ」と述べた。

「2026年の下半期には、ナイキ・スポーツウエアは10を超える新しいフットウエアのスタイルを投入する。それぞれが独自の消費者体験(コンシューマージャーニー)をともなうものだ」とヒル氏は語った。

これは、ナイキが通常半期ごとに発売するおよそ6足前後の新シルエットからの増加である。

「ただし、この取り組みが規模を拡大し、安定した成果へと結びつくには時間がかかるだろう」。

ナイキが最近発表したファーストサイト(First Sight)コレクションはその好例だ。3月に発表されたこの新ラインは、女性アスリート向けにデザインされたすべて新しいシルエットで構成されている。発売は断続的に行われており、3作目が7月末に発売される予定だ。

いずれも独自のシルエットで、最新作は靴ひものないデザインで登場する。比較すると、2024年にデビューした新シルエットのエアマックスミューズ(Air Max Muse)は、20種類を超えるバージョンがナイキのオンラインストアで販売されている。

ナイキでエナジーフットウエアおよびコラボレーションを担当するエキスパート・プロダクトラインマネジャーのジェフ・スコット氏は、プレスリリースのなかで、ファーストサイトコレクションの目標は「新しくてワクワクする」ものを提供することだと述べた。

ナイキはまた、まったく新しい別のシルエットを予告的に見せることもあり、スニーカーが実際に発売される前に時間をかけてハイプを高めていくことが多い。

7月初め、NBA選手のAJ・ディバンツァが、既存のどのシルエットにも当てはまらない未発売の新作ナイキのバスケットボールシューズを練習中に着用しているところを目撃された。

ニューバランスとアディダスの一手



ニューバランス(New Balance)も同様のアプローチをとっている。直近では、まったく新しいシルエットであり、製品カタログへの最新の追加となる950を発売した。950は1980年代のバスケットボールシューズにインスパイアされつつ、レザーやスエードといった上質な素材を採用している。これは、NBA選手のクーパー・フラッグを起用したメディアキャンペーンを通じてプロモーションされている。

ニューバランスでライフスタイルおよびエナジー部門のシニアプロダクトマネジャーを務めるデイブ・ケント氏は、ニューバランス550のような従来モデルの派生版ではなく新しいスニーカーモデルを発売する決定は、ポートフォリオの空白を見極めることと、ブランドに多様性と新しさをもたらす好機であることに行き着いたと語った。

ニューバランスは2026年、6月の1890を含め、6足のまったく新しいシルエットを発売している。

「我々にはシーズンごとのカレンダーとプレシーズンのミーティングがあり、そこで全員が集まってカタログを見渡し、何が足りていないかを決める」とケント氏は言う。彼は、2020年に再投入された定番モデルの550が、ニューバランスにとって大きな成功を収めていることに言及した。

同モデルは、2022年のゴートにおけるニューバランスの全売上の36%を占めた。「我々はここ数年、同じモデルを扱ってきた。550は実に好調だったが、いくらか新しさを注入するのにまさに絶好のタイミングだと感じられたのだ」。

バシン氏は、ニューバランスはスニーカー市場の停滞を利用して参入し、市場シェアを奪ったブランドのひとつだと語った。ニューバランスは2025年に年間売上高90億ドル(約1兆3500億円)超を達成した。これは前年比19%増で、同ブランドにとって過去最高である。

一方、アディダスは異なる戦術をとっている。スニーカー分析企業ホートファイア(HauteFire)の創業者ステフォン・マッコイ氏によれば、アディダスは既存モデルの派生や完全な新作の発売ではなく、アーカイブを深く掘り起こしているという。

「アディダスはメガライド(Megaride)でこれを実にうまくやっている。2000年代初頭のパフォーマンスランニングシューズで、20年間眠っていたものだ(そして2024年に再発売された)」と彼は言う。

「すでに飽和状態のサンバ(Samba)やガゼル(Gazelle)にさらに頼るのではなく、韓国発のサグクラブ(Thug Club)、ウィリー・チャバリア、キス(Kith)×メッシといったコラボレーションを通じて、メガライドの本物の勢いを築いているのだ」。

マッコイ氏は、ナイキもこの戦略に手を出していると語った。2025年、ナイキは2000年代初頭に人気の頂点を迎えたショックス(Shox)のスニーカーラインを、コム・デ・ギャルソン(Comme des Garçons)などのブランドとのコラボレーションによって復活させた。

「それは、すでにどこにでもある靴のカラーバリエーションを量産するよりも、はるかに賢明な解決策だ」と彼は言う。

[原文:Fashion Briefing: Sneaker brands are slowing their drops to combat sneaker fatigue]

Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)