【全文】盟友・岩本輝雄が明かす「森保一監督からW杯ブラジル戦の前に送られてきたLINE」

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成長も…世界の壁には届かず

「正直、勝てると思っていました。前半を終えた時点でNRGスタジアム(米ヒューストン)から日本の知人に『2点目を取ったら、もう決まり』なんて電話していましたから。ただ後半、あれよ、あれよと、どんどん引かされていった。近年の日本代表で、あそこまでチーム全体を下げさせられることはなかったんじゃないかな。日本は後半、シュート1本あったかどうかでしょ? いいところもあったけど、限界も見えた。それがブラジル戦の感想かな」

元日本代表MF岩本輝雄氏(54)は、サッカー北中米W杯に挑んだ森保ジャパンの全4試合を現地で観戦した。

「グループリーグは及第点じゃないですか。初戦のオランダ戦は厳しいと見る向きも多かったなか、劇的な形で引き分けに持ち込んだ。チュニジアに4-0と快勝したときは、みんな夢を見たはず。W杯の舞台で、日本代表があそこまで相手を圧倒した試合なんてこれまでなかった」

だが、日本代表はまたしても、決勝トーナメント初戦で敗れた。過去2大会を下回るベスト32での終戦。「史上最強」とも称されたチームへの期待値を考えれば、物足りなさが残る結末だった。

「前半は日本のペースだった。佐野(海舟・25)のゴールで先制したときは、スタンドも相当盛り上がりましたからね。ただ、やっぱりW杯は甘くない。ブラジルは後半から戦い方を変えてきました」

前半は中央寄りだったブラジルのエース、ビニシウス(26)が後半はサイドに張って幅を取り、日本の両ウイングバックを押し下げていった。

「斜めのボールを使い、日本のゴール前にどんどんクロスを入れてきた。日本はああいう形でゴール前にボールを入れられると苦しくなる。同点ゴールは、まさにサイドから深く押し込まれてからの斜めのクロスボールだった。思えば’18年ロシア大会のベルギー戦もサイドからのボールで逆転負けしましたよね。だから、改めて日本の変わらない弱点が露呈したというか。日本が成長しているのは間違いないけど、世界の壁はまだまだ厚い」

「いつものポイチさんでした」

その壁の厚さを岩本氏は’18年ロシア大会、’22年カタール大会に続き、今回もスタンドから見届けた。しかも、仕事ではない。W杯の現地観戦は一貫して自腹だ。今大会はチケット価格の高騰に加え、円安や現地のインフレも重なり、観戦費用の高額化が大きな話題となった。

「カードの請求額、思わず二度見しました(笑)。同行者の費用を一部立て替えているぶんもありますけど、それでもびっくりするぐらい高額でした。ホテルはできるだけ安いところを探して、キッチン付きの部屋自炊していました」

なぜ、そこまでしてW杯に足を運ぶのか。大きな理由のひとつが、森保一監督(57)の存在だ。二人が最初に顔を合わせたのは’94年。岩本氏が21歳で日本代表に初選出されたその日から親交を深め、京都パープルサンガ(現・京都サンガ)、ベガルタ仙台ではチームメイトとなった。

親しみを込め、岩本氏は4つ年上の森保監督を「ポイチさん」と呼ぶ。

「もちろん、現地で見ないとわからないことがあるし、勉強にもなる。でも、W杯に行くのはポイチさんの応援のためなんです。ポイチさんとはポジションが近かったんですよ。俺が左サイドにいて、ポイチさんがその後ろのボランチ。簡単に言えば、俺のケツを拭いてくれていた(笑)。俺はあまり守備をしないで前に残りたがるタイプだったから、『もう少し絞った(中央に寄せた)ほうがいいよ』とか言われるんですが、アドバイスがいちいち的確なんですよ」

W杯前、最後に会ったのは、国内最終合宿直前の5月22日だったが、「いつものポイチさんでした」と岩本氏は笑う。

「俺が『オランダとチュニジアに勝って、スウェーデンとは引き分けになるんじゃない?』なんて勝手なことを言っても、『2勝1分けか。そうなったらいいね』なんて感じで(笑)。だいたい月に1回くらい会って、2〜3時間話すんですけど、大半がサッカーの話。代表の話をすることもありますけど、内部情報は絶対に漏らさない。そこはキッチリしてます」

大会中はあえて連絡を取らないようにしていた。ただ、一度だけ印象的なやり取りがあった。

「ポイチさんはオランダ戦とチュニジア戦はベスト姿だったのに、スウェーデン戦はジャケットを着て、終盤苦しんだ。だから、スポーツ誌のコラムで『ブラジル戦はジャケットを脱いで戦ってほしい』みたいなことを書いたんです。そうしたら本人からLINEが来たんですよ、『明日のブラジル戦は、ジャケットを脱いで戦います』って。実際、ブラジル戦はベスト姿でした。どれだけ有名になっても、あの人は全然変わらない。髪型もずっと一緒。白髪もまったくないしね(笑)。

代表監督に就任してからの8年、思うような結果が出ず、叩かれた時期もあったじゃないですか。俺が解説の仕事をしているのを知っているから、ポイチさんは『テルの仕事になるなら、気にせず批判して』と言うんです。少しでも自分の味方が欲しいはずなのに、相手の立場でものを考える。ポイチさんは『自分が辞めることで日本代表が強くなるなら、いつでも身を引く』とも話していました。自分のことより、日本サッカー界がどうなるか、日本代表に何が必要かを常に考えている。雑念がないからこそ、どれだけ批判されてもブレないんだろうし、海外で活躍しているスター選手たちにも言葉が響くんじゃないですかね」

森保監督をめぐっては、大会後、日本サッカー協会が短期契約での続投を打診していると報じられた。来年1月開幕のアジアカップまで指揮を執る案だという。

「次のW杯まで続投しても問題ないのでは。退任すれば、『じゃあ次は誰がいるのか』という話になりますが、ポイチさん以上に今の日本代表を知っていて、選手をまとめられて、あれだけのプレッシャーを受けながらやれる人って、そう簡単には見つからないでしょう」

近い関係でありながら、踏み込みすぎない。友人としての情がありながら、元日本代表として冷静に見る。自腹で海を渡り、スタンドから森保ジャパンの戦いを見届けた岩本氏の言葉には、森保監督への信頼と、世界の壁を知る元日本代表としての現実的な視線が滲(にじ)んでいた。

『FRIDAY』2026年7月31日号より