「片手スマホは本当によくありません」手外科専門医が警鐘。料理や買い物…手指を痛める日常習慣とは?
「指が痛くて包丁を持てない」「朝、指がこわばって動かしにくい」…こんな経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。神戸百年記念病院手外科センター長兼整形外科部長であり、手外科専門医の三戸一晃先生は「手指のトラブルをそのままにして酷使すると、腫れや変形、慢性的な痛みにつながり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります」と語ります。そこで今回は三戸先生の著書『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』より一部を抜粋してお届けします。
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三戸式予防メソッド(1) 重労働の際はすべり止め付き手袋をフル活用する
自分でやらずに機械や業者に任せることも視野に
家の中の家具を移動したり、重い荷物を運んだりする際は、手袋の出番です。物を持つ手への負担軽減効果が期待できます。
素手ではなく、手袋を装着して滑りにくくすることにより、手に余計な力を入れる必要がなくなる――これが、長い目で見れば手指の病気の予防につながるのです。
そのほか、家の中の掃除をする際や庭の草むしりをする際にも、手袋が威力を発揮します。忘れずに手袋をしましょう。

<『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』より>
私は、草むしりのしすぎで指を悪くしてしまった患者さんを何人も診てきました。
「草むしりくらい、大したことじゃないでしょ」
「ウチはお金持ちじゃないし、庭も狭いから、手入れくらいは自分でしないと」
ほとんどの患者さんは、このようにおっしゃいます。
しかし、それは大間違いです。
「草むしりはもれなく指をダメにする」といっても過言ではありません。
それくらい、指に大きな負担をかける行為なのです。
まさに「天敵」とお考えください。
また、庭の植木の手入れをする際は、手袋をするのはもちろんのこと、できるだけ使いやすい電動の剪定ばさみや小型の剪定のこぎりなどを使いましょう。
木の枝はかなり堅いので、手動の剪定ばさみで無理やり切ろうとすると、相当力を入れなければなりません。きっと、声なき声で、あなたの手が泣いています。
大がかりな掃除や庭の手入れに関しては、そもそもの話として、機械を使用するか、自分でやらずに専門業者や代行業者に依頼するのが最善策です。
自分以外の何かにとにかく頼る。
これを徹底しましょう。
三戸式予防メソッド(2) 調理器具はなるべく手を動かす必要のないものを
切る、混ぜる、持つ、盛るなどの動作の積み重ねが大きな負担に
手や指を酷使しているイメージはまったくないけれど、意外にも無理強いしている――そんな行為はほかにもあります。

『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』(著:三戸一晃/アスコム)
代表例は炊事。すなわち、料理を作ることです。
頭の中で想像してみてください。
食材の皮をむいたり、カットしたり、細かく刻んだりする際に包丁を使います。
ボールに入れた食材を、菜箸や泡だて器で激しく撹拌することもあります。
鍋やフライパンで食材を炒める際は、片方の手で鍋やフライパンを振り、もう片方の手で菜箸やお玉を使って、食材を混ぜたりひっくり返したりします。
出来上がった料理をお皿に取り分けるときも、細かな手の動きが求められます。
そうなのです。料理中は、手が動かしっぱなしになるのです。
結果的に、手指に多大な負担をかけているのです。
プロの料理人ではないみなさんが家庭料理を作る際は、できるだけ手を動かさなくてもよい調理器具や、軽い調理器具を使いましょう。
料理をするのはまったく問題ありません。でも、「手に負担をかけない」ことと「楽をする」ことを、つねに頭の片隅に置いておくようにしてください。
通常の包丁ではなく、手首への負担を分散させることのできる、UDグリップ包丁を。
野菜の皮をむく際は、ピーラー(皮むき器)を。
野菜を千切りする際は、スライサー(千切り器)を。
食材をかき混ぜたり細かく刻んだりする際は、ミキサーやフードプロセッサーを。
食材をつかんだり移したりする際は、菜箸よりも手指を動かさずに済むトングを。
鍋やフライパンはできるだけ軽いものにし、持つ際は片手ではなく両手で。

<『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』より>
これらを意識し、器具を用意し、ひとつずつ実践していけば、手指の病気の大きな予防効果が見込めます。
意識を向けるべきなのは、料理をするときだけではありません。
作った料理を食べる際の道具にも気を配りましょう。
我々日本人は、食事の際には基本的に箸を使用します。しかし、箸は細かな操作が必要になり、利き手に思いのほか負担をかけます。
もしも、スプーンやフォークのほうが楽に感じるのであれば、自宅の食事では箸をやめてみてもいいでしょう。
外食の際は、状況的に頼みづらい場合や、そもそもお店に置いていない場合などがあり、どうしても箸を使わざるを得ないシチュエーションが発生してしまうかもしれませんが、自宅であれば余計な気遣いは無用です。
遠慮なく、スプーンやフォークを使ってください。
三戸式予防メソッド(3) エコバッグやレジ袋に荷物を詰め込みすぎない
握って持たず指に引っかけるのはもってのほか
手提げタイプのバッグに注意が必要なのは、ハンドバッグやビジネスバッグに限った話ではありません。
買い物の際に使用するエコバッグや、スーパー・コンビニのレジ袋にも同じことがいえます。
形状的に片手で持つのが前提になるうえ、持ち手の部分が細くやわらかいので、しっかりとした作りのバッグよりも危険度は高いかもしれません。荷物が重いと、持ち手の部分が手指にめり込んでしまいますからね。
握って持たず、持ち手を指に引っかけて持つという行為も同様です。荷物がどんなに軽くても、絶対にやってはいけません。
長時間持ち続けるのも厳禁です。指に力が入った状態を継続させることで、大きな負担をかけることになります。
バッグ同様、買い物時に使うエコバッグやレジ袋も、可能な限り手指に負担のかかりにくいものに切り替え、購入した商品を持ち運ぶようにしましょう。
おすすめは、荷物が少ないならリュックです。多いならたくさんの荷物を詰め込むことのできるキャスターの付いたショッピングカートを使ってみるといいかもしれません。荷物を持たずに転がして運ぶことができるので、手指にかかる負担を大幅に軽減できます。
カートに対して「かっこ悪い」「年寄りくさい」と抵抗がある方もいると思いますが、今は機能性の高いおしゃれなショッピングカートはたくさんありますし、カートに対する世間のイメージもだいぶ変わってきていると思います。

<『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』より>
私自身もりんごなどの重い果物は、小さい布製のビジネス用スーツケースに入れて持ち運んでいます。
手指のケアを優先し、買い物の際は積極的にカートを取り入れましょう。
もちろん、荷物を持って歩く距離を極力減らすために、自家用車やタクシーを活用するのも大賛成です。文明の利器を使って、どんどん楽をしてください。
三戸式予防メソッド(4) スマートフォンを両手で操作する
「片手スマホ」が利き手の親指をむしばむ
スマートフォンが普及し始めた当初は、ジュニア層やシニア層はまだガラケーを使っていたり、そもそも携帯電話を持っていなかったりしましたが、時代は変わりました。今では、小さいお子さんから、おじいちゃん、おばあちゃんまで、誰もがスマホを持っています。
使用頻度や依存度は、世代、仕事、生活環境、性格などによって千差万別でしょうが、よく使う人もそうでない人も、絶対に守っていただきたいことがあります。
それは、「両手で操作する」もしくは「置いて操作する」です。
加えて、スマホ操作時は長時間同じ姿勢でいないことも大切になります。
現在主流のスマートフォンは、画面の大きさが重視されていることもあってか、以前に比べ大型化が進んでいます。お子さんや女性の片手には、すっぽりと収まらないでしょう。
にもかかわらず、ほとんどの人は、画面のタップ、スワイプ、フリックといった操作を、片手でこなそうとします。
その際、利き手でスマホを持ち、場合によっては親指をぐっと伸ばして操作をしているのではないでしょうか。
手の小さいお子さんや女性だけでなく、手の大きい男性にしても、指から遠く離れた画面の端の部分を触ろうとして、親指を無理に伸ばした経験はきっとあると思います。
じつは、この動きが親指に大きな負担をかけるのです。
電車に乗ると、現状がよくわかります。車内にいる大半の人がスマホを操作している――そんな様子をすぐにイメージできるでしょう。
座っている人のなかには両手操作の人がいるかもしれませんが、立っている人は片方の手で手すりやつり革につかまっているので、ほぼ例外なくもう片方の手でスマホを操作することになります。
当然、それではいけないのですが、自分の病院の診察室ではないので、さすがに注意するわけにはいきません。
だから私はこのようなかたちで、警鐘を鳴らすことにしました。
片手スマホは本当によくありません。
今や完全にスマホは1人1台の時代になったので、この先はそれが原因で手指(とくに利き手の親指)の病気に見舞われる人が、確実に増えていくと思います。
また、片手スマホは肘を曲げている時間が長いために、肘部管症候群(スマホ肘)や外側(内側)上顆炎などを発症する人もいます。
スマートフォンは必ず両手(片方の手で持って、もう片方の手で操作)で、もしくは置いて操作しましょう。
※本稿は、『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

