この記事をまとめると

■オイルには粘度を示す単位が存在する

■かつてのハイパワーなエンジンには高粘度のオイルがよく使われた

■最近のエンジンはハイパワーでも低粘度のオイルが使われる傾向にある

よく耳にするオイルの粘度とは?

 とくにクルマに興味がなく、クルマは日常生活の道具で「足」と受け止めている人にとっては、車両維持に不可欠な諸々のメンテナンス作業も、自動車メーカーの指定に従っている場合がほとんどだろう。たとえば、エンジンオイルなどもそのひとつだ。

 エンジンオイルには、メーカーが指定する交換サイクル(走行距離指定、たとえば1万kmごと)や、オイル規格(たとえば粘度指定10W-30など、あるいは等級指定API-SL級以上など)が決められており、通常はこれに従ってオイル交換を行っているはずだが、人によってはディーラーの整備工場にお任せで、定期点検で入庫した際に合わせてオイル交換も、と依頼する人も少なくないようだ。

 ところで、このエンジンオイルだが、走りや性能にこだわる人になると、オイルメーカーから市販されるブランドオイルを自身で選び、場合によっては、粘度レンジも自身の判断で決めている場合も珍しくないようだ。

 エンジンオイルは、動く金属部品同士が接する箇所の潤滑に用いられ、とくに高速で往復運動を繰り返すピストン/シリンダー間、高速回転を行うクランクシャフト、カムシャフトと軸受け間(クランクメタル、カムシャフトジャーナル)などでの焼き付きを防ぐ目的で使われている。

 余談だが、エンジンオイルが潤滑以外にエンジン冷却の役割を果たしている例もある。有名なところでは、空冷エンジン時代(993系まで)のポルシェがよく知られている。仕組みとしては、あえて大容量のエンジンオイルを循環させ、エンジン内部の温度を奪い取る(下げる)働きを負っていた。

 さて、多少なりともエンジンオイルに関心のある人なら、最近使われる(自動車メーカーが指定する)エンジンオイルの規格が変わってきたことにお気づきかもしれない。具体的にいえば、粘度レンジのことである。かつては10W-30、20W-40といった規格が一般的だったが、最近では0W-20、さらに低粘度な0W-16といった規格も珍しくなくなってきた。

 ちなみに、この○W-○○という表記の意味だが、前半分は低温のときのオイル粘度を示し、Wは低温を意味するウインターの頭文字を表している。逆に、後ろ半分の表記は高温のときのオイル粘度を表したもので、前半の数字は小さいほど低温寄り、後半の数字は大きくなるほど高温寄りの性能となり、低温側の数値が小さく高温側の数値が大きいほど、幅広い温度下で安定した潤滑性能を保持することが示されている。

クルマの年式にあったオイルを選ぶのがベスト

 エンジンオイルが潤滑性能を維持するための必要条件だが、これはエンジン内での油膜保持力がポイントとなる。オイルの温度が上昇しすぎると油膜の維持ができなくなり(油膜切れを起こす)、金属部品同士が焼き付きを起こすことになる。

 そして、油膜保持に直接関係するのが、オイル粘度である。簡単にいえば、高温のときに強いオイルほど粘度の高いオイルということになるのだが、逆に粘度の高いオイルは低温のときに硬くなり、抵抗となって燃費性能に影響をおよぼすことになる。

 現在のオイル事情に目を向けてみると、少し前までは、高性能車用オイルとして10W-50といったワイドレンジ型が一般的だったが、最近は0W-20といった低粘度型オイルが取って代わるようになってきた。低温側が10Wの粘度レンジであれば硬さによる抵抗はさほどないようにも思えるが、現状は10Wよりさらに粘度の低い0W、高温側も50から20へと大きく粘度を下げ、全体として非常に柔らかいオイルとなっている。

 この低粘度型オイルが普及した背景には、自動車に対する要求性能が、2000年代に入って省燃費性能に舵が切られたことが大きな理由として存在する。省燃費指向は、すなわち排出ガス放出量の削減を意味し、地球温暖化ガスのひとつである二酸化炭素の排出を抑えることがその目的となっている。

 ガソリンの消費量を少なく抑えることは、燃焼するガソリン量を少なく抑えるということであり、その分だけ排出する二酸化炭素の量も少なくなる、という意味である。

 そのためには、エンジン内の抵抗で失われるエネルギーを抑える必要があり、より流動抵抗の小さな粘度の低いオイルが求められる状況となったわけである。しかし、オイルには、粘度を下げると油膜の保持力も低くなる、という特性がついてまわることになる。

 従来のオイル製法に従った低粘度型オイル、たとえば0W-20といった規格のオイルを作ると、高温のときに油膜が切れやすくなり、たとえば炎天下でターボエンジン車の使用には耐えられないオイルとなってしまう。

 ではどうすれば、粘度は低いが油膜保持力の高いオイルを実現できるか?

 カギはオイルの粘度指数にある。粘度指数とは、温度の上下による粘度変化の度合いを示す指数で、粘度指数が高いほど、温度が上がっても下がっても粘度変化の度合いは小さくなる。

 つまり、現代の0W-20という表記のオイルは、オイル粘度は低いが油膜の保持力が高く、低抵抗で省燃費性能に優れながらスポーツカーのようなハードな使用にも耐えるエンジンオイル、ということを意味している。

 ただし、どのクルマでも使えるものではない。設計の古いクルマの場合、エンジン各部のクリアランス値が現代のクルマと異なり、低粘度オイルで所期の油膜保持が可能であるか否かは保証されていない。逆のいい方をすれば、低粘度ながら粘度指数の高いオイルを使うことを前提に設計された車両、つまり現代のクルマでなければ問題が発生する可能性がある、ということだ。

 現代車には現代基準のオイル、旧車にはかつての規格のオイル、こう考えておけば間違いないだろう。