ソフトBオーナーが危機感吐露…「佐々木麟太郎モデル」がアマ逸材の海外流出に拍車をかけないか
「アメリカの大学で野球がやりたい」
最近、強豪校の高校球児からは、こんな声が聞かれるようになった。
「間違いなく、佐々木麟太郎の影響は大きいでしょう」
と言うのは、高校野球指導者のひとりだ。
岩手・花巻東高から米カリフォルニア州の名門スタンフォード大に進学。今年のMLBドラフトでマーリンズから8巡目(全体235位)指名を受け、正式契約した大砲の決断が、高校生の将来有望株の“進路図”に新たな選択肢を加えようとしている、というのだ。
今年は佐々木だけではない。茨城・明秀学園日立高から亜大に進学し、同大中退後、シアトル大を経てジョージア大に編入した左腕の石川ケニー(22)も、昨秋のNPBドラフトでオリックスから6位、今年のMLBドラフトではレッズから13巡目(全体392位)指名を受けた。
さる関東地方の高校野球関係者は、「これまでも、日本の高校から米国の大学や短大に留学した選手はいる。なかでも知名度の高い佐々木がMLB球団から指名を受けたことで、今後は高校生の有望株の間で、《米大学留学からのメジャー挑戦》という目標を設定するケースが増えるでしょう」と、こう続ける。
「米国の大学には、さまざまな奨学金制度があるうえ、大学側も有力選手の受け入れ態勢を整えています。特に、強豪校に在籍する日本のドラフト候補や、日本の名門大学に特待生として勧誘される高校生を巡っては、米大学とパイプがある現地のマネジメント会社や代理人事務所もアプローチしている。数年前と比べても、『プロ入り』『大学進学』『社会人野球入り』という3つの選択肢に加え、留学というオプションがより身近な存在になっているのは間違いありません」
そもそも今の時代は、プロ、アマを問わず、メジャー挑戦を目標に掲げることが当たり前のようになっている。さらに、大谷翔平ら日本人メジャーリーガーの活躍が連日、NHKで放送されているうえ、今年3月に6回目を迎えたWBCの盛り上がりも、これを後押ししている。
「とはいえ、高校生や大学生にとって、『直メジャー』というのは、まだまだハードルが高いのが現状です。昨年は桐朋高の森井翔太郎がアスレチックス入りした一方、昨秋のドラフト1位でロッテ入りした石垣元気(健大高崎高)は複数のMLB球団から関心を寄せられたものの、まずは日本で経験を積むことを選んだ。ただし、留学となると話は別です。佐々木のように日本のドラフトに加え、MLBドラフトの指名対象にもなる。仮に野球を諦めることになっても、英語を学んだり、見聞を広めたり、資格を取ったりと、貴重な経験を積むことができる。しかも、優秀な高校生なら、年間数百万円に上る学費や寮費が免除になることもある。昨年末には、ドラフト1位候補だった仙台大の右腕・佐藤幻瑛が米ペンシルベニア州立大への編入を表明し、今年から同大に合流しました。日本の大学を中退して米大学に活路を見いだす選手もいる。今後は、佐々木や佐藤のような日本のドラフト上位候補に挙げられる逸材が、留学するケースが増えるのではないか」(米特派員)
「NPBや野球に携わる人間、みんなが持つべき危機感」
実際、埼玉・花咲徳栄高出身で、米短大から4年制のサザン・インディアナ大(インディアナ州)に編入した太刀岡蓮さんは、大学在学中の2023年、日刊ゲンダイの取材に対し、こう言っていた。
「短期大学から4年制の大学に編入して、今年は学費と寮費の全額免除に加え、食費代補助の奨学金をもらって野球を続けています。短大はとにかく安いところを探して、生活費込みで年間150万〜200万円ほどのインディアンヒルズ・コミュニティーカレッジを選びました」
鎌倉学園高でエースを務め、米短大からガードナー・ウェブ大に編入した小島和也さんも、大学では学費の9割ほどに相当する奨学金を受けていたという。
佐々木の米大学経由でのMLB球団入りを巡っては、NPB球団のオーナーも危機感をにじませている。
昨秋のドラフトで佐々木を1位指名し、交渉権を獲得しながら入団を断られたソフトバンクの後藤芳光オーナー代行は、
「NPBや野球に携わる人間、みんなが持つべき危機感」
「これからも日本のプロ野球で活躍する道を選んでもらえるように、全員で盛り上げていかないといけない」
と、コメント。
阪神の秦雅夫オーナーも、
「あれが一番困る。ダイレクトに行かれるのは日本の球団にとってつらいものがある」
と、渋面をつくった。
佐々木はマーリンズ入りを表明した際、「新たな道の開拓が佐々木麟太郎の使命、宿命だと心に刻み、アメリカで頑張ってまいりたいと思います」と決意を述べた。
その言葉通り、佐々木の決断が日本球界の構図を変える可能性はある。
◇ ◇ ◇
佐々木はマーリンズ入りを決めたものの、プロ野球界との縁が切れたわけではない。しかも、各球団は“その時”を虎視眈々と狙っているという。いったいどういうことか。佐々木がプロ野球でプレーするにはどのような手続きを踏む必要があるのか。●関連記事 【もっと読む】日本球団がここから狙う「ウルトラC」 では、それらについて詳しく報じている。
