高齢の父が年金を少しずつタンス預金しています。もし認知症になったら、家族でもそのお金を使えなくなるのでしょうか?

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大前提として、親のタンス預金を家族であるという理由で本人の意思を確認しないまま使用することは許されることではありません。これは、親が認知症であるか否か、刑罰の有無にかかわらず、共通した認識と考えるべきでしょう。   本記事では、認知症となった父のタンス預金に関して、想定されるさまざまなリスクやいざというときに覚えておきたい制度について確認していきます。

認知症による財産管理のリスク

一般的に、認知症の症状が進行すると、日常的な行動などにさまざまな影響(リスク)が生じます。例えば、買い物に関するトラブルを例にとっても、以下のようなものがよく聞かれます。
 

(1)同じものを繰り返し購入、大量に購入する

認知症による記憶障害の影響から、すでに購入していることを覚えていないため、同じものを繰り返し、または大量に購入してしまうケースです。
 

(2)消費期限の管理ができないため食品を腐らせてしまう

何を作るのか、どう調理するのかなどの料理手順の計画力が低下することで、期限内に消費できない食品を購入してしまうケースです。
 

(3)オンラインショッピングなどで必要のないものを購入する

化粧品や健康食品などを勧められるままに大量購入してしまったり、意図せず継続購入を申し込んでしまったりしたため、毎月一定額が引き落とされているなどのケースです。これは、物品の購入のみならず、サブスクサービスや不要な通信回線などを契約してしまうトラブルも多いようです。
 

(4)悪質な業者による被害

訪問販売による購入、契約事例などが顕著な事例といえるでしょう。また、昨今ではさまざまな詐欺被害なども多く発生しています。
民法では、症状が重い成年被後見人であっても、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消しできないと定めています。つまり、認知症の方が日用品を繰り返し購入しても、そのすべてを取り消すことはできないということです。
認知症となった方でも、以前から「お買い物」が大好きだったという方も多くいらっしゃるでしょう。大好きだった「お買い物」そのものを簡単に禁止することはできません。すべてを否定する(しかる)などの行為は、本人の自尊心を傷つける可能性もあります。
ちなみに、金融機関の場合には、詐欺やトラブルから本人の財産を守るため、預金口座を凍結することで、たとえ本人や家族であっても一時的に口座からの引き出し等をできなくすることがあります。

認知症の場合に覚えておきたい制度

認知症の方の財産を守り、適切に管理するためにさまざまな制度が用意されています。
 

(1)成年後見制度

認知症や精神障害、知的障害などで判断能力が不十分な人に代わって、裁判所に選任された後見人が本人の保護を目的として財産管理や契約を行う制度です。
 

(2)家族信託

家族信託は、親の判断能力が十分なうちに契約を結び、親が委託者兼受益者、子や信頼できる親族などが受託者となって、親の財産の管理を担う制度です。
 

(3)クーリングオフ制度

実際の店舗での購入や通信販売では原則適用できませんが、訪問販売や電話勧誘などで不必要な契約をしたケースでは、一定期間内で契約を解除できるクーリングオフ制度を利用できる場合があります。
 

(4)日常生活自立支援事業

厚生労働省によると、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。都道府県・指定都市社会福祉協議会などが実施し、支援内容には日常的な金銭管理も含まれます。
 

(5)金融機関への相談

今回の事例は、タンス預金ですので金融機関は関係ありませんが、口座凍結がなされた後でも、金融機関によっては、一定の基準を満たせば、預金の引き出しといった手続きが行える場合があります。
全国銀行協会は、認知症患者本人の医療費や介護費などに充てる目的で、親族が本人の預金を引き出すことについて、銀行が応じる場合があることを示しています。そのため、医療費や介護費をはじめとした認知症患者のために必要な預金の引き出しのみ、認められるケースがあります。

まとめ

特に一人暮らしの親に認知症の兆候が見られるケースでは注意が必要となるでしょう。ご家族ができるかぎり頻繁に訪問し、会話していくなかで買い物トラブルなどの事例を早期に発見することが重要です。
また、可能であれば、近所のよく買い物をするお店の店員さんなどにもご協力いただき、無駄な商品の購入を防ぐ対策ができればよいでしょう。
さらに、ますます巧妙化している特殊詐欺などへの対策を考慮すれば、タンス預金として金銭を保管しておくことの危険性などを本人にも理解してもらい、事前に対策することが必要となるでしょう。
 

出典

デジタル庁 民法 第九条(成年被後見人の法律行為)
厚生労働省 成年後見制度
一般社団法人家族信託普及協会 家族信託とは
独立行政法人国民生活センター クーリング・オフ
厚生労働省 日常生活自立支援事業
一般社団法人全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー