【岡村 聡】日本人には高いのに、外国人には「激安」…シンガポール人が驚く「安すぎるニッポン」の衝撃
シンガポール人が押し寄せる日本
私が暮らしているシンガポールでは、最近、チャンギ空港からGrabなどの配車アプリを利用していると、ドライバーから「この前、日本を訪れた」と話しかけられることがよくあります。
アプリに登録している名前から、こちらが日本人だと分かるのでしょう。
そして、その滞在も数日間ではなく、1週間以上の長めの旅行で、東京や大阪、京都だけでなく、北海道や九州など複数の都市を訪れたというエピソードを聞くことがほとんどです。
統計からも、シンガポール人の日本旅行の拡大は裏付けられています。
2024年に日本を訪れたシンガポール人は約69万人で、消費総額は約2000億円でした。25年には約73万人、消費額は約2300億円となり、旅行者数、消費額ともに過去最高を更新しています。
シンガポールの人口は約600万人ですから、毎年10人に1人以上が日本を訪れている計算です。
また、シンガポールからの観光客の1人当たり消費額は約32万円で、アジア圏では唯一、国・地域別の上位10位に入っています。
1人当たり30万円以上を使っていると聞けば、日本人には多額のように感じられるかもしれません。しかし、シンガポール人からはまったく違った景色が見えています。
4〜5倍になった「シンガポール人の購買力」
私がシンガポールで過ごすようになったのは2011年末ごろですが、当時はまだ1シンガポールドルが50円台でした。それがいまでは125円を超えています。
つまり、日本で使う32万円も、15年前の為替レートであれば10万円台前半にすぎません。
そこから日本も多少は物価が上がっていますが、シンガポールでは給与水準が高まり、家賃や車の維持費といった大きな支出項目も総じて当時の2倍近くになっています。
為替、給与、物価を合わせて考えれば、シンガポールドルの日本円に対する購買力は、この15年で4〜5倍に上がっていることになります。
もし、旅行に関するサービスがハイクオリティーで、快適な場所に1週間以上滞在し、宿泊費も含めて1人5万〜6万円で済むのであれば、日本人に人気になることは間違いありません。
シンガポール人から見た現在の日本は、これくらいお得に感じられる場所となっているのです。
固定相場時代より安くなった円
日本人は、円安というと1ドルが何円かという名目上の為替レートだけを見がちです。
しかし、為替の歴史的な水準を見るうえでは、双方の国の物価推移を織り込んだ「実質実効為替レート」という指標があります。
日本は長らくデフレを経験し、物価上昇の幅がほかの主要国と比べてきわめて小さかったため、その分、為替レートが強くならなければ購買力を維持できません。
ところが、この実質実効為替レートで見ると、日本円は固定相場時代よりも低い水準にあります。
BIS(国際決済銀行)が計算するレートでは、2026年3月時点の日本円は66程度と、変動相場制が始まり、統計が取られ始めた時期の75を1割以上下回っています。
1ドル162円であれば、米国では1600円以上、日本では600円です。
コロナ禍以降、欧米へ旅行した日本人が、現地の物価の高さに驚くというニュースがよく流れていますが、実質実効為替レートから見れば当然のことです。
アジアの中でも圧倒的に安くなる日本
円は米ドルだけでなく、ほかの通貨に対しても歴史的な安値となっています。
99年に誕生したユーロだけでなく、スイスフランに対しても1フラン200円を超え、80〜90円程度だった固定相場時代の2倍以上となっています。
シンガポールドルに対しても125円を超え、固定相場時代の110円台を上回る史上最安値です。
こうした通貨の推移を見れば、わざわざ実質実効為替レートで検証しなくても、日本円が歴史的な安値に沈んでいることは一目瞭然です。
そして、この円安は、海外から日本を訪れる人にとって、日本の物価が自国通貨で見るときわめて割安であることを意味します。
しかも日本は、治安や交通、食事、宿泊、接客などのサービスレベルが非常に高い。
単に物価が安い国ではなく、ハイクオリティーなサービスを、あり得ないほど安い価格で受けられる国になっています。
数年後の日本は、シンガポールなどの富裕層だけでなく、アジアの広い一般層にとっても、自国よりはるかに割安で、ふらっと訪れることのできる場所になっているかもしれません。
なぜ、そんなことになってしまったのでしょうか。
後編『日本が「アジアの激安国」に転落…!1ドル200円でやって来る「衝撃の未来」』で見ていきましょう。
