「あっさりでは物足りない」…「クサウマとんこつラーメン」の人気店で味わう獣臭の先にある旨味

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90年代以降、全国的にも広く親しまれるようになった、福岡のご当地グルメ「とんこつラーメン」。

人気の拡大に大きく寄与したのは、「一風堂」「一蘭」の2大チェーンだということに異論はないだろう。その2社が、提供しているのはとんこつ特有の臭みを抑えたラーメンだ。

その一方で、地元福岡ではとんこつの香りをウマさに昇華したラーメンもソウルフード的に食べられており、昨今は東京でも「クサウマい」と称され注目を集める。

今回は、そんな「クサい」とんこつスープで人気を集める店に足を運んだ。

獣臭の先にある旨味。「こってりラーメン」

筆者が訪れたのは「ろくでなし 吉塚店」。九州の玄関口ともいわれる博多駅の隣・吉塚駅から徒歩1分という立地で、仕事帰りの地元の人も観光客も立ち寄りやすい地域だ。

筆者が訪れたのは、開店時間の午前11時。「ろ」の字が印象的な店先に、暖簾がかかりオープンを知らせる。平日にもかかわらず、店前には開店前から3人が並んでいた。

同店は、2013年に福岡市の中心部から車で1時間ほどの福津市に開業した店の、初のFC店(アトモスダイニング株式会社)で2024年から営業を始めている。ランチタイムはラーメン店として、夜は、ラーメン居酒屋としても営業し賑わいを見せる。

看板メニューは「こってり」と「あっさり」という2種のラーメン。

注文したのは、熟成豚骨の「こってりラーメン」(850円)。配膳されたそばから、豚骨独特の「獣臭」が湯気とともに立ち上る。

同店が人気を集める大きな一因は、この「クサい」とんこつスープにある。もちろん、この場合はポジティブな表現で、昨今は東京でも人気を集めている「クサウマ」という意味だ。泡立つスープは見るからに濃厚で、とんこつの旨味が凝縮されていることが伝わってくる。

ひとくちすすると、ガツンとくるとんこつのパンチ。そこに、カエシの優しい塩気と甘みが絡む。スープを飲み込んだ後も、口の中にはとんこつの余韻が、後を引くように残るのが印象的だ。

クサいとウマいの絶妙なバランス

同じようなタイプのスープにありがちなザラザラとした骨粉もほとんどなく、迫力のある味わいながら洗練されているという、絶妙なバランスを保っている。

さらに、とんこつを徹底的に炊いた、熟成系のスープは苦味が出てしまっている場合も多いのだが、同店にはそれがなくスッキリしていて食べやすい

同店代表の中村誠氏に話を聞くと、スープに関しては神経をとがらせていることがわかった。

スープが煮詰まると苦みが出てきます。なので、回転が少ない暇な日や時間帯は苦くなりやすいです。だから、そこは客数を見ながら調節し続けるんですよ。ただ、実は苦味がゼロではありません。お客さんが『苦い』と感じるとダメなのですが、苦味は味の深さに繋がるので、味覚として気付かれる手前まで出すようにしています

唯一無二のスープには、人間が感知できない超音波的な味わいにまで目が向けられているのだ。

そのスープに絡む麺は、福久留(ふくる)製麺という製麺所から仕入れたもの。福岡県久留米市で創業し、東京やアメリカなどにも展開する人気店「ラーメン龍の家」の自社製麺工場が元になった製麺所だ。

麺の硬さは「ふつう」で注文。福岡のラーメンは「バリカタ」や「カタ」などが定番と思われがちだが、「ふつう」や「やわ」を注文する地元民も少なくはない。福岡出身の筆者としては、観光客の方が「カタ」を注文している印象を持つ。

麺はしっかり茹でることによって、でんぷんがアルファ化して食感とうま味が増す。同店のような濃度の高いスープならば「ふつう」くらいの方が、スープの絡みも良く感じる。

それを味わった上で、替玉(150円)では「カタ」を注文。今度は、とんこつラーメンの麺でよく使われる低加水麺らしい、サクサクとした感触で歯切れのよさを楽しめる。

「激辛高菜」にも負けないクサウマスープの真骨頂

「ろくでなし」で、スープや麺と同様に印象的なのが大判のチャーシューだ。使用されている部位は「豚モモ」。代表の中村氏によれば、「赤身の多い部位なので、分厚くすると美味しくなくなるため」とのこと。

美味しさを担保するために薄くしても、満足感を高く保つために大きなサイズになっているという。レアに近い状態で仕上げられたチャーシューは柔らかく、脂身も軽やかで食べやすい。また、醤油とザラメを独自ブレンドしたタレにつけ込まれているそうで、ほのかな甘みが印象的だ。

卓上には、ゴマやコショウ、替玉用のタレが並び、入り口付近にはセルフサービス(無料)の辛子高菜と紅生姜が用意されている。

とんこつラーメン店では、辛子高菜に「激辛注意」の注意書きをしている店も多い。同店にも同様の掲示があったが、いつものことと気には留めないでいた。

しかし、こちらの辛子高菜は本当に辛い。ただ、考えてみれば、濃厚で香りも強いとんこつスープに負けないためには、これくらいパワーのある辛子高菜でないと対抗できないのだろう。

また、紅生姜もとんこつラーメンの店では一般的だが、スープのタイプによってそのあり方は変わるように感じる。

あっさり系のとんこつラーメンの場合、紅生姜は食事の後半に、味の底力をブーストするように思う。いわば、「濃く」する作用とでもいうべきか。しかし、そもそも濃度が高いスープでは、紅生姜は爽やかさをもたらしてくれるものに変わるのだ。

スープの主張が強い「ろくでなし」だが、辛子高菜や紅生姜を加えれば違った表情も見せてくれる、裾野の広い味わいであった。

本店の福津市だけでなく、今や福岡の中心地でも多くの人を魅了する「ろくでなし」のクサいとんこつスープ。そこには、創業者で代表の中村誠氏の並々ならぬ探究心があった。

本店がある福津市から、なぜ福岡市中心部へ進出したのか。そして、この強烈な一杯はどのように生まれたのか。後編記事『「臭いラーメンで世界進出」…人気とんこつラーメン店の野望』では、代表・中村誠氏に、その誕生秘話と今後の展望を聞く。

【つづきを読む】「臭いラーメンで世界進出」…人気とんこつラーメン店の野望