(※写真はイメージです/PIXTA)

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定年まで40年以上、月2万円のお小遣いでやりくりしてきた夫。妻からは「家計に余裕なんてない」と言われ続け、住宅ローンも残るなか、老後に贅沢など夢のまた夢だと思っていました。ところが、定年退職の日、「ヨーロッパに行きましょう」という妻に、夫は思わず絶句。節約の裏に隠されていた、妻の「嘘」とは?

家計に余裕なんてない…年収900万円でも「小遣い2万円生活」

「我が家には、余裕はまったくないんですからね」

会社員だった頃、妻・直子さん(67歳・仮名)から何度この言葉を聞いたかわかりません。石川俊夫さん(65歳・仮名)は、地元メーカーに勤め、直子さんは2歳年上で、事務員のパートとして長年働いてきました。

俊夫さんの生活は、とにかく質素なものでした。毎月のお小遣いは、ずっと変わらず2万円。昼食は妻が作る弁当を持参し、会社の飲み会は月1回程度に抑えました。

「おい、もうちょっと小遣いを増やしてくれないか?」

年収が上がるたび、直子さんにそう訴えてきました。しかし、「住宅ローンが終わるまでは我慢よ」「子どもたちの教育費が先でしょ」―― 年上のしっかりした妻にそう言われれば、納得するしかありません。

俊夫さんの年収は、ピーク時には900万円になりましたが、お小遣いは据え置き。子ども2人は無事独立したものの、「住宅ローンは残ってる」「老後が来るんだから」と、結局最後まで2万円が基本。「どうしても足りなければ、妻にお願いする」というスタイルで、やりくりしてきたのです。

しかし、その裏に「嘘」が隠されていたことを、俊夫さんは知る由もありませんでした。

定年の日に知った「妻の嘘」

40年以上勤め上げた最後の日。同僚から渡された花束を抱えて帰宅すると、食卓には好物が並び、小さなホールケーキまで用意されていました。

「本当にお疲れさまでした」

そう言って笑う妻の姿に、俊夫さんは思わず目頭が熱くなります。食後、コーヒーを飲みながらくつろいでいると、直子さんが切り出しました。

「ねえ、あなた。退職祝いにヨーロッパへ行きましょう。2週間くらい、ゆっくり」

俊夫さんは思わず吹き出しました。こんなに切り詰めなければやっていけないほどなのに、どこにそんなお金があるのか……。

すると妻は立ち上がり、棚から通帳を数冊取り出します。さらにノートパソコンを開き、ネット証券の画面を見せました。

 預貯金と投資信託を合わせた資産は「約4,200万円」。俊夫さんは目を疑いました。

「住宅ローンを返しても、3,500万円以上残るわ」

「ちょ、ちょっと待て……どういうことだ?」

「教育費が終わってから、とにかく貯めたのよ。それと投資信託の積立もね。相場がよかったから、すごく増えたのよ」

俊夫さんは何も知りませんでした。給与は口座に振り込まれ、生活費やローンの返済、貯蓄も投資も、すべて妻が管理していました。

「お前、『金ない、金ない』ってあれ、全部嘘だったのか?」

「そうよ。だって、あると思ったら使っちゃうでしょ? だから、さっき言ったのよ。“お疲れさまでした”ってね。仕事と節約を頑張ってくれて、本当にありがとう」

その言葉に、俊夫さんはしばし呆然。そして、込み上げる安堵。住宅ローンの心配をしなくていい。一度くらいは贅沢な海外旅行に行ってもいい。老後もどうやら安泰だ。妻の見事な嘘に“拍手喝采”の気分でした。

老後を安心して迎えるために必要なこと

夫婦のどちらか一方だけが家計を管理している家庭は少なくありません。実際、俊夫さんも完全に直子さんにお任せ。通帳を見たこともありませんでした。

しかし、この夫婦のようなケースは必ずしも理想的とはいえません。お金の流れや資産の状況を共有していないと、万が一、管理している側が病気や認知症などで判断能力を失った場合、もう一方は預貯金や投資資産の全体像を把握できず、必要な手続きに苦労する可能性があります。

また、「実は老後資金が足りなかった」といった認識のズレが退職後に明らかになれば、困窮につながるリスクもあります。実際、総務省の家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の平均支出は月約26万円前後。その一方で、公的年金の平均受給額は夫婦で約22万円程度です。つまり、「取り崩せる貯蓄」がなければ、立ち行かなくなる可能性もあるのです。

俊夫さんの場合は、妻が将来を見据えて着実に資産形成を続けていたことに加え、「手元にお金があると使ってしまう」という夫の性格を熟知していたからこそ成り立った話。結果として、節約と資産形成は実を結び、退職後も住宅ローンを完済したうえで、長期のヨーロッパ旅行を楽しめるだけの余裕を手にすることができました。

しかし、これは幸運な例といえるでしょう。財布の管理をどうするかは家庭それぞれですが、少なくとも年に一度は、預貯金や投資資産、住宅ローンの残高、年金の見込み額などを夫婦で確認し、「わが家の資産一覧」を共有しておくこと。それが、定年後を安心して迎えるための第一歩になります。