【中川 寛子】武蔵小杉のタワマンだけではない…「工場の街・川崎」が秘める”意外な将来性”

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かつては、「風俗・ギャンブル・工場」のイメージが強かった神奈川県・川崎市。今や「住みたい街ランキング」上位に名を連ねるほどの人気の街へと変貌を遂げているという。

前編記事『かつては「風俗・ギャンブル・工場」でにぎわった街が大変貌…川崎はなぜ「住みたい街」になったのか』に引き続き、クリーン化を成し遂げた「川崎」という街の将来性について、東京情報堂代表の中川寛子氏が解説する。

武蔵小杉が人気の住宅地になったワケ

武蔵小杉も同様に駅の周辺に建ち並んでいた工場が平成に入った頃から移転が相次ぎ、その跡地が次々にタワーマンションなどに変わり、あっという間に人気の住宅地に様変わりした。

最初にブームのきっかけとなるタワーマンション、レジデンス・ザ・武蔵小杉が建てられたのが2007年(1995年に武蔵小杉タワープレイスが建てられているが、こちらはオフィス、住宅の複合ビル)だったことを考えると、武蔵小杉が日本有数のタワマン密集地になったのはここ20年弱のこと。変化の速さに驚かされるというものである。

2009年に川崎市の人口が140万人を超えた時に作られた資料で町丁目別人口の増加状況を見ると中原区新丸子東3丁目が932.0%、幸区堀河町が545.4%と驚異的な増加を示しているが、これが武蔵小杉のタワマン街、川崎のラゾーナ川崎プラザ周辺である。

大規模な工場があったから大規模開発が可能になり、それが大規模人口増を生んだのである。

以上が川崎市のイメージが変わり、人口増が続いている理由だが、最後に今後も工場の存在が川崎という街を大きく変えるかもしれないという話を付け加えておこう。というのは川崎市は男性の数だけでなく、用途地域的にも変わった特徴があるのだ。

利便性が高い住宅地

用途地域は都市計画法で定められた秩序あるまちづくりのために定められているもので、住居系、商業系、工業系の3種類に大別される。そして大半の自治体では住居系の地域が70%以上を占めており、そこに商業系、工業系が加わる。住宅都市が大半というわけである。

たとえば神奈川県全体では住居系72.9%、商業系8.2%、工業系18.9%(2022年。国交省資料から計算)。千葉県、埼玉県では住居系の割合がもう少し高くなる。

ところが、川崎市では住宅系65.8%、商業系11.2%、工業系23%(川崎都市計画用途地域の変更 2017年)で、他の自治体に比べると住宅系が少なく、その分、商業系が少し、工業系がかなり多いのである。

それが何を意味するか。

まず、ひとつ、知っておきたいのは住居系の地域は他の用途地域に比べ、人口減少が大きく出るということである。これについて建てられる建物の規模や用途に法規制の厳しい住宅地ほど駅から遠く、環境には恵まれているものの、利便性に欠ける場合があることを思えば想像はつこう。

また、AIなどを利用した地価上昇率などの将来予測でもほとんどの郊外住宅地は不利である。不動産価格が急騰している局面では利便性よりも安さを優先、駅から遠い住宅地をという選択もあり得るが、建築費が上がると販売価格がそのコストに見合わない場所での建設は減る。

低層しか建てられない住宅地の不利さもある。郊外の住宅地ではそもそも住宅が建たなくなってくるのである。

一方で東京都心部のように利便性が高いと選ばれている地域では住宅系、特に規制の厳しい住宅専用の地域は少なく、大きな建物の建設が可能な商業系のエリアが広大になっている。川崎でも武蔵小杉駅周辺からタワマンエリアにかけては商業系、工業系の用途地域だ。

今後も今までのようにがんがんタワマンが建てられるとは思えないが、状況が許せば建てやすい場所であり、すでに建っているエリアには商業施設も揃い、利便性が高い住宅地となっている。それが閑静な住宅地よりも人口減少下では有利に働く可能性があるのだ。

川崎からイノベーション

もうひとつ、可能性として挙げたいのは工業地域の変貌である。かつての工場はモノを作る現場だったが、現在、川崎市内で増えているのは研究開発機関。音や煙の出るようなものではない。

分かりやすい事例がいすゞ自動車川崎工場、三愛石油LPガスターミナルの跡地を利用して再開発されたライフサイエンス・環境分野を中心とした研究開発拠点・殿町国際戦略拠点キングスカイフロント。

立地を利用、対岸の羽田空港に直通できるように多摩川スカイブリッジも整備しており、川崎市は住宅都市としてだけでなく、国際的な競争力を備えた研究開発都市としての側面も強化しようとしているのである。

今後も湾岸の扇島地区、南渡田地区とその周辺地区などで約400ヘクタールもの大規模な土地の用途転換、新川崎駅の旧国鉄操車場跡地での量子イノベーションパークの実現などを計画しており、これらの地域からは今後、新たな産業、イノベーションが生み出されていくことになろう。

とすると住宅だけに頼った、頼らざるを得ない自治体よりも経営基盤は強くなるはずだ。

実際、政令指定都市の中では財政力指数(自治体の懐具合を表す。2021年度から2023年度平均)は1.02とトップ。歳入に占める市税収入の割合も安定して高い。このあたりは書き出すと長くなるので省略するが、財政の安定はこれからの時代の住には大きな意味を持つだろう。

一方で東西に細長い川崎市では地域によって具体的な危険は異なるが、どこにもそれなりの災害リスクがある。多摩川や鶴見川に近い市南部の低地では地震時に揺れやすいほか、洪水、内水氾濫などのリスクもある。市中部にあたる武蔵小杉周辺で内水氾濫が起きたことも記憶に新しい。市北部の台地、斜面地では土砂災害警戒区域も広範に広がる。

街は変化しており、かつて多くの人が懸念していた治安は大きく改善されているが、土地の本来持つ要件は意外に変わらない。川崎で不動産を考える時には治安よりも災害を考えるほうが大事かもしれないのである。

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