夏休み予算は2万円減…酷暑と物価高で出かけられない夏 コンビニで買える「100円台」からのちょっとした幸せ
「今年の夏は旅行を諦めた」という人も多いのではないだろうか。物価高が長引き、夏休みの予算は5年ぶりに減少。「外出しない」理由として「物価が高いから」を挙げる人も目立つ。それでも、人は小さなご褒美までは手放したくない。そんな気持ちに応える存在として、いま改めて面白くなっているのがコンビニである。消費経済アナリストの筆者が、現場を回りながら「斜め目線」で見た今夏の注目商品をまとめた。
【写真を見る】全国各地の「超人気銘菓」のジェネリック品がコンビニで手に入る…筆者が推す「ダブるグルメ」、「体験型コンビニ」も
物価高でも「ちょっとした贅沢」ジェネリック銘菓
明治安田生命の最新アンケート(2026年6月実施)によると、今年の夏休み平均予算は前年比約2万円減の8万5145円と、5年ぶりに減少に転じた。「外出しない」と答えた人は41.6%。理由の上位には「暑いから」と「物価高騰」が並び、外出を控える夏が現実となっている。

だが、旅行をしない人が増える中でも、「懐かしい味を味わいたい」「ちょっとしたご褒美は欲しい」という欲求は消えない。そこで支持を集めているのが、近所のコンビニで手軽に買える通称「ジェネリック銘菓」だ。
たとえば、セブン-イレブン「とろけるカスタードの ふわころ」(149円税込)は、仙台の銘菓「萩の月」に似たふわふわ生地でトロトロのバニラカスタードクリームを包んだ一品。本家よりクリームの量は控えめだが、100円台で仙台気分を味わえる手軽さが支持されている。
六花亭「マルセイバターサンド」(5個入り870円税込)のジェネリックも大手3社で展開されている。
セブン-イレブンの「発酵バターと洋酒香るレーズンサンド」(参考価格3個入り430円税込)、ファミリーマートの「洋酒香るラムレーズンサンド」(248円税込)、ローソンの「バター香るしっとりレーズンサンド」(228円税込)が代表的な3商品だ。
本家マルセイバターサンドは高級感とパッケージの魅力が強いが、コンビニ版のパッケージはどれも簡素だが、似たラムレーズンの風味やバターのコクを楽しめる。
ほかに有名どころで言えば、「博多通りもん」(6個入り1000円税込、1個約167円)によく似た、セブン-イレブンの「みるく餡まん」(1個約114円税込)があげられる。こちらは価格も本家よりだいぶお得なようだ。
萩の月で仙台、マルセイバターサンドで北海道、博多通りもんで福岡――。物価高で旅行を控える夏でも、コンビニの棚を眺めるだけで全国を旅するような気分を味わえる。現地に行かずして「懐かしい味やちょっとしたご褒美」を味わいたいという消費者の欲求を、コンビニが手頃な価格とアクセスの良さで支えている形だ。
「ダブるグルメ」が生む新しい満足感
最近コンビニやスーパーで目立つのが、1つの商品に複数の味や食感を重ねた商品だ。筆者はこれを「ダブるグルメ」と勝手に定義している。
ダブるグルメとは、1つのメニューに今までなかった組み合わせを取り入れ、複数の要素が重なることで、消費者に新しい味・食感・驚きを提供する商品のことである。決して単なる奇抜商品ではない。意外性があり、食べると納得感があり、さらに人に話したくなる――この3つがそろった時、ダブるグルメは一過性ではなく定番へと育っていく。
その原型は身近にある。ツナマヨおにぎり、あんバターサンド、ロイズのポテトチップチョコレートなど、いずれも最初は驚きがありながら「確かに合う」と納得できる組み合わせだ。
今夏のその筆頭格が、セブン-イレブンの「セブンプレミアム チョコっとグミ 白桃味」(170円税込)だ。グミのむにゅっとした弾力とチョコレートのまろやかさが重なる代表的なダブるグルメで、果実の爽やかさとチョコの甘さが融合し、冷やして食べるとさらにシャリっと感が増す。SNSで話題になりやすい一品である。
もう一つ、ローソンの「マンゴー烏龍」(158円税込・900ml)。マンゴーのジューシーな甘みと鉄観音烏龍茶のスッキリした後味が融合した飲み物で、果実と茶の「ダブル」の爽やかさが夏にぴったり。大容量コスパも優秀だ。
このような「ダブるグルメ」が生まれるようになった背景には、次の3つのポイントがある。
第一に、コスパ志向の進化。物価高の中で消費者は「安さ」だけでなく、「同じ金額でどれだけ満足できるか」を重視するようになった。
第二に、SNS映えする驚きと、食品加工技術の進歩が新しい組み合わせを後押しした。
第三に、流通・メーカーの差別化競争。似た商品が増える中、いかに目立つかが重要になっている。
ダブるグルメは「我慢の節約」ではなく「楽しむ節約」。1品で2度おいしい価値は、物価高時代にこそ刺さる。
旗艦店は「無料で入れるテーマパーク」
そんな中、ファミリーマートは“次のコンビニ”の可能性を追求するプロジェクトの一環として、東京都港区に新旗艦店「FAMIMA PARK AZABUDAI」をオープンした。
ファミリーマートの新旗艦店「FAMIMA PARK AZABUDAI」(東京・麻布台)は、単なる大型のコンビニ店舗ではない。
クリエイティブディレクターのNIGO氏やインテリアデザイナーの片山正通氏らトップクリエイターが手掛け、「わくわくするお買い物」をテーマにした体験型店舗である。
店内には試着室を備えた「コンビニエンスウェア」売場があり、専門スタッフも常駐。ここでしか手に入らない限定Tシャツや雑貨が並び、コンビニというより小さなセレクトショップのような雰囲気だ。
価格帯は例えば、ノースリーブワンピースやテーラードジャケットが4990円、デニムジャケットが6990円(ともに税込)。一流クリエイターによる限定アイテムとして考えれば非常にリーズナブルだろう。
麻布台ヒルズ周辺といえば、高級レストランやラグジュアリーブランドが立ち並ぶ街というイメージが強い。そんな街を散策しながら、希少性の高い一店舗限定のTシャツを買って帰る――。高額な買い物をしなくても、「麻布台を楽しんだ」という観光気分や満足感を持ち帰ることができるはずだ。
物価高で遠出を控える人が増える中、「目的地がコンビニになる」という発想は新鮮だ。店内を歩き、限定商品を眺め、試着し、麻布台の空気を味わう。それだけでも気分が上がる。そういう意味では、「無料で入れるテーマパーク」と言っても大げさではない。限定商品が旅の記念品のような役割を果たし、「近くて便利」から「わざわざ訪れたい」コンビニへと、その価値は少しずつ変わり始めている。
斜め目線が映す、これからの消費
ジェネリック銘菓、ダブるグルメ、体験型コンビニ――。一見バラバラに見えるこれらの商品に共通するのは、消費者の「レジリエンス」だ。
「レジリエンス」とは、物価高という制約の中でも、自分なりの楽しみを見つける力のことである。物価高で旅行や外食を控える人が増えても、近所で旅気分を味わう。少ない予算で"ちょっと贅沢"を楽しむ。1品で二度おいしい満足感を見つける。
こうした商品選びに見られるのは、環境が厳しくなっても「ちょっとした幸せ」を諦めずに見つけ出す、消費者のしなやかな力だ。
コンビニは、そんな消費者の「斜め目線」の欲求を最も近くで感じられる最前線にある。筆者もこれからも店舗を回り、発見を続けたい。
皆さんも、近所のコンビニを少しだけ「旅先」のような気分で歩いてみてはいかがだろうか。きっと、意外な夏のご褒美に出会えるはずだ。
※価格は地域によって変わる。
取材・文/渡辺広明
デイリー新潮編集部
