赤潮の苦難越えV字回復…カワハギの稚魚育成に励む“水産女子” 「水福連携」で販売尾数は過去最多に
大分県佐伯市で、カワハギの稚魚育成に励む“水産女子”水本あゆみさん(38)。現在は障害者就労支援事業所と連携した取り組みを進めています。ともに高品質な稚魚を育てるパートナーとして歩む姿が評価され、水産庁長官賞を受賞。誰もが働きやすい水産業の未来を拓く彼女の挑戦を追いました。
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過酷な現場…家庭も両立
佐伯市の蒲江湾に浮かぶ筏(いかだ)で、カワハギの稚魚を育成している水本あゆみさん。結婚を機に夫・憲二さんの仕事を手伝うため、2019年から“水産女子”として活動を始めました。
現在はカワハギの育成と、家庭を両立させながらハードな日々を過ごしています。
水本さん:
「家のこともしながら仕事をしています。1日の段取りを考えると、朝2時に起きてお弁当を作って、4時半には筏に来ています。5時から1人で黙々と作業していく生活なので、自分の時間はほぼないです」
水本さんは、憲二さんが海からとってきた稚魚を管理。個体の大きさはさまざまで、米粒サイズのものも。これらを養殖業者へ出荷するため、10センチほどに育て上げます。
とってきた稚魚の中には、別の魚も混ざっているため、1匹ずつ手作業で仕分けなければなりません。さらに、稚魚は最大24万匹となり、適切に餌を与える必要があります。
福祉との連携、徹底したデータ分析
そんな多忙な日々の中、見出した打開策が「福祉との連携」でした。
水本さんは去年、市内にある就労継続支援B型の事業所と契約。餌やりなどの作業を委託しました。働きに来るスタッフには障害がありますが、決められた時間、量、回数をきっちりと守って作業をこなします。
(スタッフ)「喜んでくれる人がいるのでうれしいですね。発達障害ですが、頑張っていきたいと思います」
作業を任せられるようになったことで、水本さんの時間と心、そして体力に大きな余裕が生まれました。
その空いた時間を使い、天気や水温、水中の溶存酸素量といった緻密なデータを毎日丁寧に記録。それらのデータを研究・分析し、最も効率の良い給餌(エサやり)方法を導き出しました。
成長スピード飛躍的に向上、取引先から高評価
こうしたアプローチにより、稚魚の健康状態の維持に繋がり、成長スピードが飛躍的にアップ。通常、秋に導入した稚魚を1年から1年半後に出荷していましたが、2024年の夏・秋分は、わずか半年ほどとなる春から出荷を開始しました。出荷時期を大幅に早めることに成功し、自然災害などのリスク回避も可能にしました。
福祉との連携が稚魚の育成技術向上をもたらし、こうした活動が高く評価され、令和7年度の農山漁村女性活躍表彰で、優秀賞にあたる「水産庁長官賞」に輝きました。
水本さん:
「最初は人手不足の解消が目的で、『餌やりをしてくれればそれでいい』という気持ちでした。しかし今では、彼らなしではやっていけないというくらい、稚魚を育てる上での『仲間』に変わっていきました」
育て上げた稚魚は県内外の養殖業者へ出荷しています。蒲江にある渡辺水産も取引先の一つです。代表の渡邉さんは水本さんから買った稚魚を1年かけて2倍以上の300グラムまで育て、出荷しています。
カワハギの養殖は生存率の低さが課題とされる一方、天然ものより肝を大きく育てられるのが強みで、全国的に需要が高まっています。
渡辺水産 渡邉満晴代表:
「水本さんの稚魚は、出荷先で非常に高い評価をもらっています。今年も続けてほしいと言われるほどです」
苦難越え、販売尾数は過去最多に
今でこそ順調な水本夫婦ですが、かつては厳しい苦難の時代もありました。2021年から2023年にかけては、同市内にある「河内湾」に筏を構えていましたが、潮通しが悪く、ウイルスや赤潮の直撃を受けて思うように魚を育てることができませんでした。
しかし2024年に、現在の場所へ筏を移設したことで流れが変わります。さらに去年からの「水福連携」が起爆剤となり、売り上げはV字回復。販売尾数(一部ウマヅラハギ含む)は20万匹を超え、過去最多を記録しました。
憲二さん:
「妻は自分で目標を立てて『こうしよう』と決めたら、妥協せずにやり通すところがすごいなと思います」
水本さん:
「手を抜かずに、いい稚魚を育てることに徹したいし、水産業で女性が働く環境をもっと整えていけたらなと思います」
頼もしい仲間や夫と支え合いながら育む妥協のない育成。誰もが働きやすい水産業の新たな未来を拓いていきます。

