「ホームラン減」でも間違いなく進化している!大谷翔平が選んだ「短重バット」が生んだ驚異の打撃進化
侍ジャパン選手を担当する職人がスーパースターの″相棒″を徹底分析
「昨年よりもホームランのペースが落ちていることから、一部メディアから″打撃不振″と評されていますが、打席ごとの内容で言えば、いまの彼のほうがずっと恐ろしい打者です」(プロ野球解説者の得津高宏氏)
大谷翔平(31)は今季、6月終了時点(日本時間、以下同)でチーム1位の18本塁打を記録し、ドジャースの主砲として圧倒的な存在感を発揮している。一方、昨年の同時点ではすでに29本を放っていたことから、長打力の衰えを指摘する声も少なくない。ではなぜ、今季の大谷のほうが″恐ろしい″のか。
「打率.297 、出塁率.412 はいずれも昨年の成績を上回っています。何より、バットの芯を外される打席が明らかに減少しているのです。たとえば6月30日に放った18号は、2ストライクに追い込まれた状況下で、ボールゾーンから内角高めに入ってくる球を寸分の狂いなく仕留めてみせた。
現在、大谷はバットをわずかに短くしており、7〜8割の力感でヒットを量産する『大人のバッティング』を手中に収めています」(同前)
得津氏の言葉通り、今季開幕時点は35インチ(約88.9cm)だったスーパースターの″相棒″はいま、34インチ(約86.4cm)へと変身を遂げている。ただし、長さに変更があった一方、重さは約907gで昨季と同様だという。
この″短重バット″には、どんな狙いがあるのだろうか。侍ジャパン選手も担当するバット職人で、『MRバット』代表の森崎寛樹氏はこう話す(以下、発言は森崎氏)。
「バットで最も重い芯の部分が身体から遠ければ遠いほど、選手は数字以上の重みを感じる傾向にあります。つまり、重さが同じでも、短いほうが実質的には軽く感じる。身体への負担を軽減することができるのです。7月に32歳を迎えるなか、二刀流でフル回転する今シーズンに適したバットと言えるでしょう。大谷の賢さが垣間見える変更です」
大谷翔平の打撃音がNPB選手のものと完全に異なる理由
ただ、バットを短くすると、遠心力が働かなくなり、打球が飛ばなくなるリスクも考えられる。実際、今季の長打減少の理由をバットの短さに見出すファンは少なくないが……。
「それは誤解と言っていいでしょう。大切なのは、バットそのものの長さよりもグリップから芯までの距離です。大谷が以前に使用していた約88.9cmのバットの芯が、先端から15cmの場所に位置していたと仮定しましょう。
そのバットを約86.4cmに変更したとしても、芯の位置を2.5cm先端側に移動させることで、遠心力は同様に働く。なおかつ、短い分、スイングスピードと操作性は上がり、それだけ打球速度やコンタクト率もアップするのです」
こうして生まれた凄(すさ)まじいスイングを、効率的に強い打球へと変換するのが、大谷が使用しているチャンドラー社製バット特有の塗料だという。
「大谷が打つと、まるで金属バットのような、NPB選手とは異なる高い音が鳴ります。実は、これは塗料の違いなんです。日本国内のバットはウレタン塗装が主流で、バットをしならせボールを噛み込ませて(バットとの接触時間を長くして)運ぶ、落合博満氏(72)のようなスタイルの選手に向いている。
一方、大谷のバットの塗料はチャンドラー社が開発した企業秘密の特殊樹脂製です。非常に硬く仕上がることが特徴で、大谷のようにトップからインパクトまでの距離が短く、ボールを″衝突″させて飛ばすタイプの選手に適しています。
おそらく、現時点でチャンドラー社製のものよりも硬いバットはないでしょう。このバットを使いこなせるのは、日本人離れした身体の大きさ、パワー、そして技術を兼ね備えた大谷だからこそです」
大谷は投手として防御率1点台をキープしつつ、すでに8勝をマーク。6月は打者としても調子を上げ、月間打率.341 、8本塁打、OPS1.095という驚異的な成績を残した。変身を遂げた″相棒″を手に、4年連続のMVPへと突き進む。
『FRIDAY』2026年7月17・24日合併号より
