初めてW杯のピッチに立った前回大会から3年半、初の海外移籍とアキレス腱断裂の大ケガという激動の日々を乗り越えた日本代表DF谷口彰悟(シントトロイデン)が、前回よりも一つ多い3試合出場で2度目のW杯を終えた。ブラジル戦から一夜明けた30日、取材に応じた谷口は「W杯が終わったんだなという喪失感を感じている」と思いを明かした。

 谷口は今大会、開幕節オランダ戦に先発フル出場すると、続く2試合は先発を外れたが、第3戦スウェーデン戦で板倉滉の負傷を受けて前半途中から緊急出場。決勝トーナメント1回戦のブラジル戦にもフル出場し、2試合に出場した前回大会からさらに出場時間を伸ばす大会となった。

 大卒でプロ入りし、31歳で初のW杯に挑み、33歳で選手生命を左右する大ケガに苦しみ、それでも34歳で2度目に臨んだという異例のキャリア。今大会のパフォーマンスも安定感に満ちており、日本サッカー界における一つのロールモデルとなり得る“晩成”ストーリーを描いた。

「独特なキャリアだとは思う。30歳を超えてW杯に初出場して、そこからもう一つ、2大会に出られたというところは自分の中ではあまり想像していなかった嬉しいキャリア。自分の中でもこだわってやってきたつもりだし、最後の最後まで年齢に抗いながら上を目指して、代表の意義を感じながらやれているのはすごく幸せなことだと感じる」

 今大会で特に目立ったのは相手のクロス攻勢に対し、速いボールにも高いボールにも落下点を見抜き、的確にヘディングで弾き返す空中戦だ。かつては苦手としていたハイボール対応がいまや日本の欠かせない武器となっていた。

「CBとして弾き返すことは絶対に必要な能力だし、そこは自分自身もこだわってやってきた。そこが強みの一つになってきたとは僕自身も言えると思う。今までいろんなコーチにも教わってきた中で自分でもいろいろと工夫しながらそういった能力を身につけられた。今まで携わってくれた方には本当に感謝だし、自分の武器にしていけたのはすごく良かった」

 その秘訣は「やり続けたことかな」と谷口。「技術をピンポイントで教わったというよりは数をこなしながらコツを掴んでいくという感じで身につけた。本当に数をこなしながら、たくさん失敗もしたし、それでもやり続けながら身につけてきた」。その努力が3大会連続のグループリーグ突破、自国開催以外で初のグループリーグ無敗突破という歴史を作った。

 それでも最後はブラジルに1-2で敗れ、前回大会と同じグループリーグ初戦敗退。喪失感と悔しさが強く残ってしまうのがこの大会の怖さだ。

「終わってからもものすごい何回も何回も考えたし、嫌でもフラッシュバックしてくるというか……。あの時どうだったんだろうというのはすごく考えたけど、前半の戦い方はブラジルに対して用意していたものがスカウティングも含めて上手くハマっていたし、先制点を取るところも理想的な進め方ができたと思う」

「ただ後半、ブラジルが多少配置と狙いを変えてきて、あそこまではっきり割り切ってやってくるところに多少驚きはあったけど、結局は何を捨てて何を取るかになる。自分たちのシステム、相手に対しての守り方も含め、結局クロスを放り込まれる。あそこで弾き切って仕舞えば問題ないと思っているし、それを今の自分たちができなかった。そこは力不足だし、素直に受け止めて受け入れないといけない」

「どんどん放り込まれようが弾き返して、自分たちが盛り返す時間が作れればまた違った展開になったかもしれないし、その辺は結果論。違う守り方に変えたら、ブラジルも違う戦い方をしたかもしれないし、その辺は難しいなと。自分たちがああいう選択をして戦った結果で、ああいう戦い方をするなら後ろはゼロで行くべき。後ろの責任は大きかったと思う」

 前回のW杯が終わった後も、長期離脱が決まった後も、決して諦めなかったW杯。その戦いが終わったいま、谷口は今後のキャリアについて「そこに関しては正直、まだ何も考えられていない」と率直に言う。

「もちろん4年後を目指しますということも簡単には言えないし、ただもう諦めますとか、代表活動を引退しますとか、そういうことも正直まだ考えていない。本当に何も考えられていない」

 谷口によると、シントトロイデンとの契約も今夏までとなっており、「正直、所属チームすらまだ何も決まっていない」。このW杯に全てを注いできており、「いますぐ何かを決めろと言われても正直その気持ちにもなれていないので、ちょっと時間が必要かなと感じている」と心境を吐露した。

 もっとも、未練がないわけではない。「やっぱりここで悔しい思いをしたというところは自分自身も力不足を感じるところがあったし、まだまだやっぱり自分自身に強くなりたい、上手くなりたいといった気持ちがあるのは事実」。4年間という日々は長いが、「日本代表としても壁を越えていかないといけないということを突きつけられた試合でもあったので、若い選手、今回経験した選手も含めて、この悔しさを忘れずに次に進まないといけないのは事実」と話すベテランの力が必要になる日はきっとまた来るはずだ。

(取材・文 竹内達也)