「カバンの中身を知らぬ間に撮られた」ロシア人が見た北朝鮮観光の現実と“美しく清潔な街”
北朝鮮の金正恩総書記が新たな外貨獲得の柱として観光産業の育成を掲げる中、実際に現地を訪れた外国人観光客が目にした、過度な監視体制の「冷徹な現実」が明らかになった。ロシアの旅行ユーチューバー、アレクサンドル・ロセフ氏が平壌訪問時の映像を公開し、その光景が波紋を広げている。
ロセフ氏は今年3月、ロシアのウラジオストクから北朝鮮の国営航空会社・高麗航空を利用して平壌に入った。機内に足を踏み入れた同氏を待ち受けていたのは、ロシア国内ではすでに退役している旧ソ連製のツポレフ(Tu-154)型機だった。
「他の航空会社なら絶対に許されないことが起きていた」とロセフ氏が語る通り、機内は荷物スペースが圧倒的に不足し、一部の受託手荷物が前列の足元通路にそのまま放置されていたという。さらに、緊急脱出時などの一般的な安全ブリーフィングも一切行われないまま離陸。狭い客室や古びた布張りのシートに、同氏は「古いソ連映画の飛行機に乗っているようだ」と苦笑を漏らした。
一方で、平壌に到着した直後の同氏の感想は、「純粋な歓喜」に満ちていた。平壌の中心部である金日成広場や大同江(テドンガン)の岸辺を歩いた同氏は、「高層ビルが立ち並び、広い道路は驚くほど清潔だ。静かで非常に美しい」と絶賛。「テレビやネットで見ていた暗いイメージとは全く違う」と、手放しで街の美観を称賛する一幕もあった。
滞在した「羊角島(ヤンガクド)国際ホテル」についても、1980年代の高級感漂うレトロな雰囲気を「ノスタルジーがあって素晴らしい」と肯定的に捉えていた。
しかし、観光が進むにつれて北朝鮮特有の「管理体制」が露わになる。同氏が金日成広場で撮影に没頭していた際、同行していた北朝鮮の男性ガイドが、開いたままになっていた同氏のカメラバッグの中身を、自身のスマートフォンで密かに撮影している様子が機材に記録されていた。ロセフ氏は「単なる好奇心か、それとも隠れた監視活動なのかは分からない」としている。
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さらに、客室の不自然な構造も不信感を煽った。ホテルの各部屋に設置されている古いラジオはスイッチを入れても機能せず、不審に思った同氏がその裏側を覗き込むと、大量の配線コードが不自然に露出していた。「機能しないラジオは単なる表向きのファサード(見せかけ)で、このワイヤーの真の目的は別にあるのではないか」と語っている。もっとも、このときのロセフ氏の表情はシリアスには見えない。まさか盗聴器をそれとわかる形で設置するはずもないので、北朝鮮に対する監視国家のイメージに導かれた指摘と考えた方がよさそうだ。
いずれにせよ、北朝鮮は外貨確保のために外国人観光客の誘致を歓迎する姿勢を見せているものの、体制を脅かす要因に対しては今後も極めて厳格な統制を維持するだろう。

