菅原文太も若いときは……サバンナ高橋で注目された「芸能界いじめ問題」の“本質”
カラミといじめの境界線
中山功太(45)の告白で発覚した『サバンナ』高橋茂雄(50)の“いじめ問題”だが、高橋がXで
〈当時の大阪で共演してた番組の収録で、言い方やカラミが嫌な思いをさせていたこと謝りました〉
と中山に謝罪したことを報告。また中山もXで
〈番組内で言った『いじめられていた』という表現は完全に不適切でした。申し訳ありません〉
と謝罪し発言を撤回した。その結果、騒動はほぼ鎮静化したとみていいが、なんとなくモヤモヤが残っている人は多いだろう。
それは“被害者”とされた中山が謝罪したからだと思える。お笑い芸人が多数所属するプロダクションの元幹部に話を聞くと、
「後輩芸人にペットボトルを投げつけた『TKO』木下隆行さんのような、明らかなパワハラと違い、功太に対する高橋さんの発言が、はたして本当にいじめだったのか、という点が引っかかります。お笑いの世界では、カラミとイジリはよくあること。いじめとの境界線がハッキリしていません。意地悪でカラんだりイジる人もいれば、悪気がなく、きついイジリをする人もいます。受け手の捉え方もいろいろですしね。芸人の世界ではよくいわれる“愛あるイジリ”。つまり、カラミやイジリに少しでも笑える要素があれば、そう取られることはなかったと思いますが……」
お笑いの世界だから起きた“いじめ”騒動だが、上下関係の厳しい芸能界では、いじめ、パワハラは日常茶飯事だと言うのは大手芸能プロ幹部だ。
「いまだに職人の世界みたいに徒弟制度が残っているところもありますし、付き人制度もあります。指導なのかいじめているのか、これも判断するのが難しいです。芸能人の場合はパワハラやいじめがあったとしても、当事者が告発することはまずないですし」
スタッフに対するパワハラやいじめは被害者が訴え出ることが多く、発覚しやすい。だが、芸能人同士は、噂になっても表面化することはほとんどない。
数少ない中で、芸能人同士のいじめで表面化したものといえば、’09年10月3日放送の『オールスター感謝祭』(TBS系)でMCの島田紳助氏が尋常ではない様子でお笑いグループ『東京03』に詰め寄るシーンが映し出され、騒動になったことがある。本番前に『東京03』が島田氏のところに挨拶に行かなかったことで島田氏がキレたということだった。
今でも、“大物司会者”と呼ばれるタレントがMCを務める番組では、出演者が本番前に挨拶に行くのが習わしになっていて、挨拶に行かなかったタレントがブチギレられたというのは芸能界でよく聞かれる話だ。キレられるのはタレントに限ったことではなく、アシスタントを務める局アナでも被害に遭うことがある。
表に出ていない「いじめエピソード」
中には事件に発展したいじめもあった。
’16年6月27日、名古屋のラジオ番組『宮地佑紀生の聞いてみや〜ち』(東海ラジオ)の生放送中にMCの宮地が、共演者の神野三枝に暴行し、宮地は傷害容疑で逮捕された。
事件化するようないじめは本当に稀なことだが、テレビ局のスタッフやタレントに聞くと、表に出ていない“いじめエピソード”は山ほどあるという。
30年以上も前のことだが、菅原文太氏がトーク番組で、映画で何度も共演している先輩俳優について語っていた。任侠映画に出演した際、格闘シーンでその先輩は、実際に腹を殴ってくるというのだ。しかも思いっきり力を込めて。
家に帰ってもお腹が痛くてご飯も食べられないほどだったと。しかし菅原氏は
「そのほうが本物っぽくて、映画を観ている方も満足するでしょうね」
と、その先輩俳優を悪く言うことはなかった。ネットもSNSもなかった時代だが、週刊誌の記事にもならなかった。
また、気性の激しいことで知られるセレブタレントは、バラエティー番組に出演した際、隣に座っていた女性タレントが自分に意見したことに腹を立て、放送中ずっと女性タレントの脚を蹴っていたという。そればかりか、その後自身のSNSでその女性タレントの顔つきを揶揄する投稿をしていた。
最近は通販番組によく出演している宝塚出身のある女優は、ローカルの情報番組に出演していた際、共演していた若手男性局アナにつらく当たり、業界内で話題になったことがある。その後、この女優は番組を降りている。
宝塚の後輩女優に話を聞くと、在団当時からセリフを外されたり、舞台袖で出番を待っていると、まだ出番前にもかかわらず後ろから押され、舞台に飛び出てしまったことがあるという。
芸能界は一般社会よりもいじめが多いとされている。なぜかというと、まず芸能人の多くは一般人に比べ自己顕示欲や承認欲求、上昇志向が強いからだろう。
よく芸能界は“生き馬の目を抜くところ”と言われるが、競争が激しく、強い意志を持たなければ生き残れない。そこには、自分の存在を脅かす“芽”は摘んでしまおうと考える人も出てくる。
さらに、人気が出て、テレビ局や事務所が“金のなる木”と考え、チヤホヤして腫れ物にでも触るような扱いをするようになると、自分が偉くなったと勘違いする人もいる。個人の問題ではあるが、このような構造的な問題も潜んでいる。これを解決しなければ“いじめ撲滅”は程遠いだろう。
一般社会同様、芸能界のいじめがなくなるとは思えないが、中山の告白がいじめ撲滅に一役買うことができたなら幸いではないかーー。
取材・文:佐々木 博之(芸能ジャーナリスト)
