サッカー日本代表が紛うことなき「強豪国の振る舞い」で、優勝に向かってやるべきことを全部やったうえでチュニジアを4-0一蹴の巻。
これは優勝を目指す強豪国の振る舞い!

強い、強い、強い。ワールドカップ2026北中米大会、日本のファンが最高の時間帯で見られるよう日本時間日曜日のお昼に設定された第2戦チュニジア戦。現地は22時キックオフというかなり深めの時間の試合となりましたが、「朝まで盛り上がるといいよ!」とでもいうような大勝利となりました。日本としてはワールドカップ史上最多得点となる4ゴールをあげての4-0快勝。先に行なわれた試合でオランダがスウェーデンに5-1と大勝しており、試合前にはグループ1位がかなり遠のいていた状況でしたが、オランダに三度追いついたかのような、素晴らしい日本の戦いぶりでした。

この試合、日本はスタメンを少し変更してきていました。久保建英さんの怪我もあり完全一致はもとより無理なわけですが、田中碧さん、板倉滉さん、冨安健洋さん、伊東純也さんを先発で起用し、ボランチやシャドーの構成も変えてきました。誰が入ってもできるという自負でもあり、長い大会を見据えてのローテーションや大会への順応という部分も見受けられる編成でした。それはごく当たり前の話ですが、その当たり前を日本がやってきたこと、そこには隔世の感を覚えます。日本はこのグループステージ3試合に出し尽くして燃え尽きるつもりは毛頭ない。口先だけの目標ではなく「優勝」が本当に心の根底にあるのだと武者震いするような思いでした。「それは優勝を目指すチームの判断か?」と問い掛けながら判断を重ねている、そんな骨太の哲学を感じます。



今大会からのレギュレーション変更のひとつに、勝点が並んだ場合の順位決定の方式において直接対決の結果をグループ内の得失点差よりも優先するというものがあります。そのため同じ勝点で並んだ場合、3試合の結果がどうであるかよりも「直接対決で勝ったほうが上」になります。日本のいるグループFの場合、もしこの試合で日本がチュニジアに勝てば、次節でチュニジアがオランダに大勝したとしても「すでに勝点3を得ていて、直接対決でチュニジアに勝っているスウェーデン」をチュニジアが上回る可能性はなくなります。つまり、相手は「負けたら終わり」の真の背水の陣にあります。こちらとしては大量得点でオランダを追いかけたい試合なわけですが、相手の心を折るのは難しそう。日本にとってはあまり望ましくはない対戦順になったと思います。

会場となるメキシコのエスタディオ・モンテレイは地元メキシコの大観衆で賑わっています。日本にシンパシーを抱いてくれているのか、駆けつけた日本サポーターと合わせてまるでホーム国立でやっているかのような日本を後押しする雰囲気です。2002年大会のような自国開催でもないなかで、日本がこのように注目され、自分たちの認識としても相手からの認識としても格上のチームとみなされ、「しっかり勝たねばならない(勝ち以外は失敗)」という意識をもって試合に臨むというのも、どこか夢物語のような感覚さえ覚える光景でした。青く熱かったあの頃、日本はワールドカップに出ることすら夢だったのに。頼もしくて老化が進む気分です。

巨大な日の丸を広げて歌い上げる国歌斉唱。この日の会場には、高円宮妃久子殿下にご臨席を賜りました。世界のサッカーレジェンドであり、日本とも縁のあるシュケルさん(クロアチア/点取られた)やストイチコフさん(ブルガリア/柏レイソル)などもスタンドに姿を見せている模様。広く日本全体からの支えがあり、日本が歩んできた歴史の積み上げがあり、まぁもう「日本も立派になったのぉ」と心のなかのジジイが動き出さずにはいられません。

↓記念すべきワールドカップ通算1000試合目を担わせていただきました!



そして迎えたキックオフ。日本はおなじみの3-4-2-1の形で、チュニジアも形としては3-4-2-1でしょうか。日本がボールを持つと5-4-1の形で守りを固めていますので、これをどうやってこじあけるのか、「押し込んでこじあける」という長年の課題に向き合う試合になりそうです……と、思っていたんですよね。試合が始まった時点では。それがどうでしょう、引いて守ってくる相手&大量得点が欲しい試合で、我らが日本が、まるで世界の強豪国のように開始早々の前半4分に、いきなり試合を動かしてきたじゃないですか。半日前に見たオランダ戦で「うへー、オランダもう点取った、つえー」と思った気持ちが、日本の試合で蘇ってくるだなんて!

↓前半4分、中央でファンタジスタ田中がさばいた流れから最後は「左足ぴょん」の鎌田タッチで先制点!


↓ちなみにゴールパフォーマンスはクリスタルパレスの同僚・エンケティアさんに捧げたものとのこと!


これで俄然やりやすくなった日本。相手が出てこないなら、別にコチラは後ろでボールを回していたって構わんよという、余裕すら見せるような落ち着きぶりです。そんななかでも、ときおりゴールキーパーの鈴木彩艶さんからの超ロングフィードによって、「後ろでボール回しします」の顔からいきなり得点機を作ったりするのですからイヤらしいったらありゃしない。盤面全部を使って戦うような、何となくこれが日本のスタイルなのかな、というものも垣間見えるような試合ぶりです。

↓前半10分にはまさかの逆1丱轡紂璽箸眄犬泙譴泙靴拭ここは素直にテクノロジーを信じます!


この逆1丱轡紂璽箸盍泙瓩董▲船礇鵐垢呂燭さん作るけれどオリンピックやワールドカップのような大きな大会でなかなかゴールが生まれない、日本代表ではそんな印象も残っている上田綺世さん。この試合も二度・三度とゴールに迫りながら、待望のワールドカップ初得点は生まれていませんでした。しかし、それでどうこうというところはまったくありません。自信、落ち着き、漲っています。その様子に未来予知者として知られる本田解説員からも力強い予知が飛び出しました。前半22分に「今日は上田さん絶対点取る気するなぁ」「さっき突破したときにシュート打たずにパス出してたでしょ」「あそこ迷わずパス出してたんで今日取ると思います」「チカラが抜けている」と予言してから、ハイドレーションブレイクを挟んでの前半31分。予言通り上田さんに、待望のワールドカップ初得点が生まれます。

DFラインからの縦パスを受けた上田さん。右からは伊東純也さんが、左からは田中碧さんが上田さんを追い越していきます。相手守備としては、「このフォワードはパスもあるタイプ」と刷り込まされていますので、決め打ちで飛び込むこともできません。左右で仲間が引きつけてくれたぶんの余裕を十分に活かして上田さんが右足を振り抜くと、相手の股を抜いたボールはゴール内のサイドネットに突き刺さりました。本田解説曰く「股(抜きから)、サイドネット(に決めるのは)、は神」のゴール。日本、勝利をぐっと手繰り寄せる2点目です!

↓やっと、やっと決まった!エース上田のゴール!



本田解説が「2-0は危険」説を熱弁するなか、日本は主導権を渡すことなく前半を終えます。チュニジアもときおり鋭い攻めは見せるものの、サイドで日本がはっきりと潰しどころを見定めているので、なかなか攻撃を組み立てられません。唯一違いを作り出せそうな10番のメイブリさんに対しては「たとえどこにいようとも」冨安健洋さんが絶対に潰すという役目を担って、ときには敵陣内まで駆け上がってでも徹底的に何もさせないようにしています。オランダ戦ではガクポさんに堂安さん久保さんのダブルチームをつけ、デ・ヨングさんには上田さんを張りつかせていたように、相手の要所に対しては半ばマンマークのような形で徹底した対応をしてくるこのチーム。100人態勢での分析チームを用意しているという話ですが、戦術面も含めて総合力で戦っている、そんな頼もしさを覚えます。

後半に入ると、ハーフタイムに監督のゲキでも飛んだか、チュニジアがようやく少し圧力を高めてきました。メンバー交替も含めて守備においてもチュニジア側はようやく整理されたのでしょうか、日本としても前半ほどにゆるゆると持ち上がれる感じはなくなります。本田解説からも「このままで崩せる感じはしない」と膠着状態を睨むような声も。そんななか日本は、前線の選手がポジションを流動的に入れ替えながら、相手の隙をうかがうような構え。シャドーに入れた伊東さんとウィングバックの堂安さんが入れ替わるようにして伊東さんがサイドを縦に切り裂くような動きを見せたり、シャドーに入った伊東さんと鎌田さんが入れ替わって受ける構えを見せたりと、ピッチ内で変化を生み出していきます。指示待ちではない、臨機応変な対応力がある。

そして迎えた後半24分、最後方から縦に速いパスを送ると、ポストプレイで受けた上田さんがそのままはたいて相手DFラインの裏にボールを送ります。上田さんのポストがよほどイヤだったのか、あるいはついうっかりいっちゃったのか、この動きに相手守備は3人が食いついてしまい、ゴール前中央がガラ空きに。DFラインもバラついていてオフサイドを取るような構えもまったくありません。そこを見逃さずに伊東さんが裏を取ると、相手守備の1枚を跳ねのけながら冷静にゴールに流し込みました。ちょっとチュニジア側にも「死守」という雰囲気はなく、だいぶ気力も落ちてきていたのかなというところも。決定的な1点を得て、本田解説も「今日はもう勝ちます。99.99999%勝ちます。ここからはイケイケドンドンです」と太鼓判です。

↓2-0は怖いけれど3-0はもう怖くない!勝ちはもう決まりでしょう!


↓急にボールがきたとかじゃなく、くるかなと思っていたらきたそうです!


これで試合の局面がガラリと変わったのを受け、ハイドレーションブレイクを活かして日本はメンバーを大きく代えていきます。4分間でつづけざまに4人を入れ替えると、ここまで出場がなかった鈴木淳之介さんや鈴木唯人さん、瀬古歩夢さんにも出場機会を作り、大会へとしっかり入っていけるようなステップを踏んでいきます。「勝利が見えたらコレをやる」ミッションとしてあらかじめ想定にあった交代だろうとは思いますが、ひとつひとつやるべきことを達成していく日本の戦いは順調そのものです。あとは努力目標としてオランダを上回るほどの大量得点をあげて、得失点差の争いをできればいいなぁとは思いますが、次の試合はオランダがこのチュニジアとあたることを考えると、1点や2点上回ってもあまり意味がないかもしれません。そのあたりを見極めるリアリズムも日本の強さを感じるところです。

↓まぁ、努力目標としてもう1点取りましたけどね!

上田さん、この大会で本田さんの通算得点を超えるところまでいきましょう!

日本が優勝するなら、結果そうなってるはずです!



上田さんの素晴らしい2点目を見届けたのち、日本は最後の交代カードでこちらもワールドカップ初出場の後藤啓介さんを送り込み、「やろうと思っていたこと」を全部やって日本は勝ちました。強そうなチームが、何の危なげもなく、4-0快勝。相手に何もさせず、何も起こさせず、自分たちのやりたいことは全部やった。これはもうベスト8常連国のような、優勝を狙うにふさわしい勝ち方だったなと思います。つい20年前とかは、3人しか交代枠ない時代なのに「記念にゴールキーパー交代しとこう」とか、日本が相手に好き放題やられていたなんて嘘のようです。

日本で見守るファンには「何とかオランダを上回ってグループ1位で」「得失点差で逆転するために大量得点を」という気持ちもあるわけですが、「優勝」を狙うチームは、そんな次元にはいないのかもしれないなと思います。ブラジルだろうが、フランスだろうが、どこだろうが、優勝を狙ううえではいつかどこかで勝たねばならない相手です。当たるのが早いか遅いかだけの話。真の目標がベスト8とかであれば「なるべく弱いチームと戦いたい!」なんて邪念も出るのでしょうが、世界の強豪がそんなことを最優先で考えるはずはないのです。まず最高の自分たちを整えること。望んで強い順に当たろうとまでは思わないにしても、いつどこがきても「勝つ」という気持ちで尽くすこと。

その意味では次のスウェーデン戦は大胆なターンオーバーをしてくるくらいであってほしいなと思います。仮に負けてもベスト32にはいけるでしょうし、引き分けでも2位以上確定(1位の可能性もゼロではない)、逆に大勝しても1位は難しいという試合です。ならば、できるだけ怪我もカードも疲労もなく必要な結果をつかむことがスウェーデン戦のテーマとなります。中継が「大胆にメンバーを入れ替えてきました!」から始まるくらいであってこそ、優勝を狙うチーム。そんな姿を見たら、あまりの隔世の感で、心のなかのジジイが昇天しちゃうかもしれませんね。「負けるかも」を恐れるのではなく、「ここでターンオーバーできずにいつするんだ」という強さを見せてほしいなと思います!だって、優勝するつもりなんで!

↓何だかキリンチャレンジカップでも見ている感じのワールドカップでした!


ブラジルに恩返しするのは悪くないですね!とてもお世話になってるので!