子育ての「イライラ」「疲れ」がぐんと減る…言うことを聞かない子供を思い通りに動かす"魔法のフレーズ"

■“何気ないやりとり”が信頼に影響する
あなたも自分のお子さんと、こんなやりとりをしたことがありませんか?
・料理の最中だったのでフライパンに目を向けたまま、「今さ、忙しいから後にしてくれる」と話を切り上げてしまった。
大人サイドからすると悪気のない対応です。でも、こうした何気ない日常の積み重ねが、実は子どもとの信頼関係に大きく影響しているのです。
私たちの学童保育の指導員(以下、キッズコーチ)が大切にしているコーチングの基本スキルは、「傾聴・承認・質問」の3つに集約されます。なかでも、子どもと信頼関係を築く入り口となるのが「傾聴」です。
傾聴とは、単に話を「聞く」のではなく、しっかりと「聴く」こと。目線を合わせ、相手の言葉に耳を傾け、その思いを受け止める。心理カウンセラーや看護師、キャリアカウンセラーなど、人と接する業務のプロたちは傾聴に関する教育を受け、日々の仕事にその技術を活かしています。
■「承認」の積み重ねや「問いかけ」も大事
キッズコーチも同様で、子どもから話しかけられたら聴くモードに入ります。なぜなら大人にとっては些細な出来事でも、子どもにとっては大切な話かもしれないからです。話を十分に聴いてもらえた、受け止めてもらえたという感覚は、子どもでも大人でも相手への好感と信頼に変わっていきます。
次の「承認」は、相手の存在や行動の本質を理解して認めること。例えば、テストで100点を取ったときだけでなく、仮に点数がいまいちでも机に向かって頑張ろうとしていた姿勢、新しい勉強にチャレンジした勇気を認めていく。もちろん、いい結果が出たときは「結果そのもの」に加えて、結果にいたる過程にも目を向け、褒めていく。そうした細やかな承認の積み重ねが、物事に取り組む子どものモチベーションや自信につながっていきます。
最後の「質問」は答えを教えずに、子ども自身の気づきを促すためのもの。たとえ教えたほうが早くても、あえて「どうしたらいいと思う?」と問いかけていきます。大事なことなので何度も書きますが、子どもたちが自分で考え、答えを見つけ出していく経験は、主体性、思考力、判断力など本人の人間力を育んでくれるからです。
■3つの原則を忘れてはならない
「傾聴・承認・質問」の3つの基本スキルを使ううえで、重要な原則が3つあります。
1つ目は「個別性(十人十色)」を忘れないこと。子どもは一人ひとりみんな違います。同じアプローチが、すべての子に通用するわけではありません。兄弟姉妹でも性格や好みは変わります。その子に合った関わり方を、試行錯誤しながら見つけていく必要があるのです。
ここで大切なのは、ポジティブな関わりを意識的に増やすこと。叱ったり注意したりする場面は2〜3割程度に抑え、残りの7〜8割は褒めたり認めたりする時間に。この比率を意識するだけでも、子どもとの関係は良い方向に変わってくるはずです。
2つ目は「双方向性」です。一方的に教え込むのではなく、子どもとの対話を繰り返すこと。例えば、何か悪いことをしたときも、頭ごなしに叱るのではなく、「なぜそうしたの?」と理由を聞く姿勢を保つこと。問いかけ、考えることで子どもは何が悪かったかについて深掘りできるようになります。
3つ目が「継続性」。ときに感情的に怒ってしまったり、子どもからウソをつかれてしまってショックを受けたり……、キッズコーチにも子どもたちとの関係性を維持し続ける気力が萎えてしまい、「もういいや……」と落ち込む瞬間があります。でも、翌日もその翌日も来週も来月も、1年後も子どもたちとの放課後時間は続きます。落ち込んだときは視座を高くして、長期的に関係性を捉えましょう。
■「話をしっかり聴く」意識を持つ
親子関係のよい点は、仕事が忙しくて子どもとの関係がうまくいかない場面があっても、夫婦間のイライラを子どもに感情的にぶつけてしまうようなことがあっても、それを修復するチャンスがいくらでもあるところです。
いつも泰然自若(たいぜんじじゃく)としている完璧な親などいません。小学校高学年になり、反抗期に入ってくると子どももひどい言葉をぶつけてきます。親も失敗するけど、子もしくじる。それでも親子だから子育てしながら、親初心者から経験者へと成長していける。失敗と修復を繰り返しながら、親も子も一緒に成長していくことができるのです。

個別性、双方向性、継続性。この3つを意識して、「傾聴・承認・質問」を心がけていくと、日々のコミュニケーションの中で子どもの自己肯定感、自尊感情が育まれます。ありのままの自分らしい個性をポジティブに受け止める自己肯定感と、自分を価値ある存在だと感じられる自尊感情は、人間力の土台となる大切な感覚です。この2つを育む意味でも、「子どもの話をしっかり聴いてみよう」という意識を持って接していきましょう。
■大人の先回りは絶対NG
「子どもの話をしっかり聴いてみよう」とアドバイスされて、「そんな必要はない」と反発される保護者の方はまずいないと思います。ただ、「そうですよね」と納得する一方で、日常の慌ただしさから「いつもいつもしっかり聴いていられない」というもどかしさを抱えている方は少なくありません。
実際に保護者の方から、ついついこんな声かけをして、子どもから「うるさいな」という顔をされ、親子げんかに発展してしまうという話もよく聞きます。
「早く片付けなさい」
「もう寝る時間でしょう」
平日の夜、明日の学校の準備は終わったのかな? と、そんなふうに子どものことを思って私たち大人は先回りして行動を促してしまいがちです。でも、こう言われた後、子どもの心の中ではきっとこんな思いが巡っていることでしょう。
「もう少しで終わるところだったのに……」
「時間くらい自分でわかってるのに……」

■「どうしたいか」を決めてもらう
もうちょっと待っていたら、子どもが自ら動いていたかもしれないのに、大人の先回りした声かけでやる気を奪ってしまっている……。とはいえ、宿題はしてほしいし、片付けは終わらせてほしいし、早く寝てもらいたい。どんな声かけをすれば、子どもの話を聴きながら、本人たちの主体性を損なわず、やる気を出してもらえるのでしょうか。

私たちの学童保育(キッズベースキャンプ)では、「この後どうする?」と問いかけを大事にしています。宿題、歯磨き、片付けなど……。こうした日常の行動について、子ども自身に考えさせてみるのです。
実はこれ、親子関係に限らず、職場の上司部下、先輩後輩のコミュニケーションにも応用できる内容です。
子どもたちも一日の流れはわかっています。やらなきゃいけない宿題はあるし、明日の学校の準備をするべきだし、寝る前に部屋を片付けたほうがいいし、歯も磨かなくちゃいけない。でも、今見ているテレビの続きが気になるし、先にゲームで遊びたいし、やるべきことをやる、やる気はあるけど、まだ今じゃない。そんな子どもたちのやる気スイッチを入れるには、やっぱり自分で決めてもらうのが一番です。
■口に出すとモチベーションが高まる
そこで、親側も「今すぐやって!」というせっぱ詰まった気持ちになる前の時間帯に「今日はこの後、どうする予定?」と質問しましょう。すると、子どもは自分なりにその後の流れを組み立ててくれます。
「宿題やってから、ゲームで遊ぶ!」
人は自分で決めたことを口に出すと、モチベーションが高まります。これは心理学の研究で「宣言効果」と呼ばれているもの。自分で決めた約束を宣言することで、それを守ろうとする意欲が生まれるのです。ここで大切なのが、その決定を認め、信頼する姿勢です。
「先に宿題を終わらせてから遊ぶのはいい考えだね」
そして実際に行動できたら、しっかりとフィードバックします。
「自分で決めて、実行できたんだね。すごいね」
■子供からの答えを待つ
この「考えさせる→決めさせる→信頼する→認める」というサイクルを繰り返していくことで、子どもは少しずつ自律的に行動できるようになっていきます。時には、その子にはまだ早いかもしれないと思うことでも、チャレンジさせてみることも大切です。
「やってみる?」という投げかけに「うん!」と答えたら、思い切って任せてみましょう。たとえ結果的にできなかったとしても、それは貴重な経験となります。むしろ、そうした「背伸び」の機会があるからこそ、子どもは成長していけるのです。

もちろん、毎回うまくいくわけではありません。心がけたいのは子どもへの信頼を示し続けること。その姿勢があれば、少しずつ関わり方も、子どもの反応も変わってくるはずです。
やる気を引き出すには「〜しなさい」という命令形をやめて、その代わりに「どうする?」と問いかけをして、子どもの答えを待ってみましょう。
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島根 太郎(しまね・たろう)
東急キッズベースキャンプ代表取締役社長、キッズコーチ協会代表理事
1965年東京都目黒区生まれ。中央大学卒業。輸入雑貨事業や自然食事業等を経て、2003年株式会社エムアウトに入社。心理学に関わる事業開発を経験し、「小1の壁」の問題解決と非認知能力の教育を志し、2006年キッズベースキャンプを創業。2008年12月には東急グループ入りし、東急グループの子育て支援事業の中核企業としての展開を開始。一般社団法人民間学童保育協会、東京都学童保育協会で理事を務める。保育士資格保有。
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(東急キッズベースキャンプ代表取締役社長、キッズコーチ協会代表理事 島根 太郎)
