シンポジウム「タワーのある街・すみだ」で展示された新タワーの模型=29日、東京・墨田区で(撮影:吉川忠行)

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東京都墨田区内の自治会や商店街を中心とする新東京タワー建設の推進団体「新タワー建設推進協議会」は29日、シンポジウム「タワーのある街・すみだ〜下町文化の創成〜」を同区内のすみだリバーサイドホールで開いた。地元住民や商店主など320人が出席した。

 シンポジウムは「新タワーとまちづくり」をテーマに、小出治・東京大学工学部教授の基調講演で始まった。防災分野が専門の小出教授は、東京湾北部で地震が発生した際、同区で建物倒壊が起こる可能性が東京西部に比べて高いと指摘。現代の災害対策は、従来行われてきた建物の不燃化による「燃えない街」から倒壊を防ぐ「壊れない街」へ移行しており、延焼と倒壊両方の対策を考えたまちづくりを進める必要性を強調した。

 基調講演に続き、新タワーの事業主体「新東京タワー」(東京都墨田区)の宮杉欣也社長が、24日に発表したデザインなどの現状報告を行った。宮杉社長は新タワー事業について「単なる観光地を作るつもりはない。訪れたい街、住みたい街を実現することを目指している」と述べ、地元へ理解を求めた。同社は今後、放送事業者などへ出資を求めて経営基盤を強化。放送施設の使用料と展望台の観光収入で、500億円と見込まれる建設費を返済する。

 シンポジウム後半ではパネルディスカッションが行われ、都市計画の専門家らが「新タワーに望む、新しい下町文化の創成」をテーマに持論を披露した。

 小出教授は新タワーについて「高さで競うものではない。(将来)高さが世界一ではなくなるかもしれないが、(下町文化の活用で)ここに住んで良かったと誇りに思えるライフスタイルの提案ができればすばらしい」と高さ以外の要素の重要性を語った。建築家の彦坂裕氏は、観光と住民の生活の両立について「京都はすぐに外部の人が入れない"いちげんさんお断り"などの仕掛けで、観光も生活も成り立っているのではないか」と、まちづくりのヒントを示した。

 新タワーは高さ610メートルで、350メートル部分に第1、450メートル部分に第2展望台を設ける。2008年に着工し、地上デジタル放送へ完全移行する11年に開業する予定。【了】

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