22日、ライブドアの金融部門売却合意を受け、記者会見で握手するライブドアフィナンシャルホールディングスの清水社長(左)とアドバンテッジパートナーズのリチャード・フォルソム共同代表(撮影:吉川忠行)

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ライブドア(LD)は22日、東京都目黒区のウェスティン東京で記者会見を開き、金融部門を独立系投資会社のアドバンテッジパートナーズ(東京都千代田区)に売却すると発表した。

 LDは12月20日付で、傘下の中間持ち株会社「ライブドアフィナンシャルホールディングス(LDFH)」の全株式8010株を175億7700万円でアドバンテッジに売却。来年3月以降には、LDがLDFHに貸し付けていた約376億円も段階的に回収するため、売却総額は551億円となる見通し。LDは、売却益全額または一部を信託口座に入れ、株主らの損害賠償請求訴訟に備えるとしている。

 LDFHはアドバンテッジ傘下入り後に社名を変更、全従業員400人の雇用は維持し、清水幸裕社長も留任するが、兼任するLD代表取締役副社長の職は辞任する方針。アドバンテッジ側は支援期間を3〜5年程度としており、清水社長ら経営陣や従業員による自社買収(MEBO)やLDFHの株式上場などの手法で投資を回収する考えだ。

 証券取引法違反で罰金刑以上の刑罰が確定した法人は5年間、証券会社の親会社になれないため、金融部門の“屋台骨”であるライブドア証券の持ち株比率引き下げや切り離しの判断が懸案として浮上。10月26日には、LDFHが運営する株式情報サイトを来月15日で打ち切ることを発表していた。

 会見でLDFHの清水社長は、売却に至る経緯について「事業面での毀損(きそん)を食い止めるためには不可欠と考えた」とし今年5月から支援先探しに着手、日興シティグループ証券とモルガン・スタンレー証券の助言を得て、競争入札を行ったことを明言。アドバンテッジについては「信頼回復のためにはベストのパートナー」と支援を歓迎した。

 また、「LDの持っていた良さは非常に多くある。それを忘れずに、独立した金融機関として立派なものにしていきたい」と話す一方、今後の事業展開について「ヤフーでもドコモでも、シナジーがあればどことでも取引する」と独立した事業体として歩み出す姿勢を強調した。

 アドバンテッジのリチャード・フォルソム共同代表は「事件の影響で難しい状況にあるが、LDを離れればより一層の事業の拡大を見込める基盤が十分あると判断した」と述べ、LDFHの再建に意欲を示した。

 LDの金融部門は、LDFHの傘下に証券、電子マネー、貸金業、不動産担保ローン業などの7つの子会社がぶら下がる。粉飾事件発覚までグループの財務担当役員だった宮内亮治被告が会長を務め、逮捕直前の06年9月期第1四半期(05年10─12月)には、同部門が連結売上高の6割強、連結営業利益の9割弱を稼ぎ出していた。事件後は、主力の投資銀行業務を中心に顧客離れが進み、「信用の毀損(きそん)があり、収益構造が変わって、利益ベースでは貢献できない」(清水社長)状況になっていた。

 LDは、今後はポータルサイトを中心としたメディア事業や電子商取引事業、ソフト事業に専念する。清水社長によると、JCBやセブン-イレブン、ナイキなど大企業の広告主を獲得し、10─11月の広告収入見通しは事件前の70%まで回復しているという。

 売却先となったアドバンテッジは、粉飾事件を起こしたカネボウや経営難のダイエーの2社を産業再生機構入り後に再建を支援、今月10日には「牛角」を展開するレックス・ホールディングスのMBO(経営陣による自社買収)を手掛け、翌日から同株のTOB(株式公開買い付け)を開始した。

 平松庚三・LD社長が社長(現在は会長)を務めていたソフト会社「弥生」が03年2月に米国親会社からMBOで独立し、04年12月にLDに買収されるまでの間、役員派遣して経営改革を支援した関係もある。

 会見では、平松社長の姿はなく、LDFHの清水社長は記者の質問に対し、LD副社長としての発言を控える姿勢を繰り返し示していた。【了】

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