玉木の犬となった石破「どんだけ要求飲めばいい?」自民関係者困惑…何がなんでも総理辞めない理由「自ら設定の勝敗ラインをガン無視」
10月27日投開票の衆院選で石破茂首相が率いる自民党は大敗し、公明党を合わせた連立与党の獲得議席は過半数を下回った。自民党内は「石破おろし」が始まり、相も変わらず国民を無視した権力争いに突っ走っている。石破氏は議席を伸長させた国民民主党に協力を呼びかけるが、来年夏に参院選を控える中での“共闘”は容易ではない。政界事情に詳しい経済アナリストの佐藤健太氏は「首相続投にこだわる石破氏は『前門の虎、後門の狼』の状況だ。いずれにせよ、どこかの時点で退陣不可避となるだろう」と見る。
それでも辞めない石破の意味不明…党内から公然批判続出
先の衆院選で自民党は191議席、公明党は24議席に激減し、連立与党は計215議席で過半数(233議席)を下回った。野党第1党の立憲民主党は148議席を獲得し、日本維新の会は38議席、国民民主党は28議席となり、与党以外が250議席を確保した。与党の過半数割れは自民党が下野した2009年衆院選以来となる。本来ならば、自民党の最高責任者である石破氏は引責辞任し、新しいトップの下で出直しを図るべき事態だろう。
だが、石破氏は10月28日の記者会見で「現下の厳しい課題に取り組み、国民生活を守る。日本国を守ることで職責を果たしていきたい」と述べ、退陣する考えはないことを強調した。選挙結果を受けて小泉進次郎選対委員長はすぐに辞任したが、石破氏は「国政は一時たりとも停滞が許されない」として自身の責任は棚に上げるつもりのようだ。
当然、責任問題を避けて評論家のように語る石破氏の姿勢には自民党内に怒りが充満する。小野田紀美参院議員は同日のX(旧ツイッター)に「選対委員長が選挙の責任を取るというのは分かります(前の選対委員長は全く責任取りませんでしたが)。しかし今回の選挙は自民党石破政権への信を問う選挙では?自民党石破政権への信を問うてこの結果、ということを軽視しすぎではないのか。」と投稿。山田宏参院議員もXに「選対委員長の辞任で済む話ではないでしょ。与野党過半数割れですよ。」と首相への不満を投じた。山口県連や千葉県連など地方からも首相の責任を問う声が広がる。
選挙前、石破首相は衆院選の勝敗ラインを「与党で過半数」と掲げていた。結果が伴わなければ責任が問われるのは当然だ。
1カ月で辞任すれば、「史上最短内閣」として汚名
しかも、石破氏は2007年の参院選で自民党が大敗した際、当時の安倍晋三首相に対して説明責任を厳しく追及した。2009年の衆院選前には支持率が続落していた麻生太郎首相に閣僚として退陣を迫ったこともある。
10月1日の首相就任から約1カ月で辞任すれば、「史上最短内閣」として汚名が残ってしまうが、これまでの言動との整合性はどう整理するつもりなのか。あらゆる場面で説明責任を問うてきた石破氏の“変節”は、さらに国民の政治不信を招くことにつながるだろう。これでは支持率続落から選挙前に自ら退陣の道を選択することになった菅義偉首相や岸田文雄首相(いずれも当時)は一体、何だったのかと感じる。
ただ、筆者は自民党が「石破おろし」という権力闘争に明け暮れることには嫌悪感を抱く。政権与党のトップ選びが重要であることは間違いないが、政局が長引けば長引くほど国民生活にはマイナスの影響が生じると思うからだ。代わるならばスパッと交代し、そうでないならば政府・与党が一丸となって国内外の重要課題に当たってほしいと感じる。誤解を恐れずに言えば、トップが誰であろうとも国家や国民生活にとってプラスになる政策が推進されるならば良いはずだ。その意味からは「誰が」よりも、「何が」進むのかを注視していきたい。
「部分連合」を呼びかける意向
少数与党になった石破首相は、公示前から議席を4倍増にした国民民主党に政策ごとに連携する「部分連合」を呼びかける意向を固めた。すでに幹事長レベルで協議しているとされ、国民民主党が衆院選で掲げた政策をできる限り採用することによって補正予算案や来年度予算案の可決などを目指す考えだ。
国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「石破首相の会見を聞いて、その通りだと思ったのは議席を伸ばした政党、それを支持してくれた人たちの思い、掲げている政策は今の民意だ。いま政権に求められるのは丁寧に多くの声に耳を傾けることだと思う」と説明している。記者からは連立政権入りはないかとの質問が飛んでいたが、玉木氏は「ありません。私たちが欲しいのはポストではなく、経済政策の実現が欲しい。そのためにやるべきは全てやりたいと思っている。とにかく政策実現に全力を傾けるので連立するつもりはありません」と明言した。
国民民主党が衆院選で掲げた主要政策はことごとく実現できる
玉木氏は10月29日のTBS「ひるおび」に出演した際も同様の答えを示しており、自公政権に入るよりも政策ごとに連携するか否かを判断するつもりのようだ。筆者は、玉木氏の方針に賛同するものだ。その理由は、伸長したとはいえ28議席にすぎない少数野党が、いずれの政党も過半数の議席を持たないことによってキャスチングボートを握る。比較第1党の自民党も、野党第1党の立憲民主党も国民民主党との連携を欲しており、予算や税制、法案の成否はもちろん、その気になれば内閣の信任・不信任すらも決められる。
つまり、国民民主党が衆院選で掲げた主要政策はことごとく実現できるということだ。同党は「手取りを増やす」と掲げ、消費税の減税や現役世代の社会保険料の軽減、家計支援策、高校までの授業料完全無償化などを訴えてきた。いずれも自民、公明両党で過半数を大きく上回っていた時には実現が難しいとされてきた政策である。だが、連立与党が補正予算案や来年度予算案を成立させるためには、他の野党が賛成に回らない限り可決できない状況にある。
そこで国民民主党が政策実現のため、与党に丸飲みを要求すれば断り切れないだろう。年収103万円を超えると所得税が課税される「103万円の壁」解消やガソリン価格のトリガー条項凍結解除などの政策が実現されることになれば、物価上昇に苦しむ国民にとってはプラスとなる。財政規律を重んじる財務省は反対するかもしれないが、今の政治状況を考えれば最終的には従わざるを得ないはずだ。玉木氏は「新しい与野党の文化をここでつくらないとダメだ。それがいま問われている」と強調する。
「一体、どこまで飲めば良いのかわからない」(自民党幹部)
もちろん、石破首相にとって国民民主党との協力関係は「賭け」だ。予算案や税制改正関連法案などで国民民主党の政策を採り入れることで可決・成立を目指すことはできる。だが、「一体、どこまで飲めば良いのかわからない」(自民党幹部)と不安視する向きは少なくない。自民党からすれば採用したつもりであっても、すべて丸飲みでなければならないのか。一部だけでも盛り込めば良いのか。少数与党である限り、その疑心暗鬼は生じることになる。
加えて、石破首相にとっては来年夏に参院選を控えていることも気がかりだ。選挙前になれば各政党は対決姿勢に転じざるを得ない。
内閣不信任決議案が急に可決・成立してしまうリスク
だが、来年度の予算案や税制改正は自公両党の成果として訴えることは難しくなり、さらに国民民主党の考えに反する法案も提出し難い。さらに言えば、いずれかの時点で国民民主党との協力関係が解消されれば内閣不信任決議案が急に可決・成立してしまうリスクも抱える。
石破氏からすれば、自民党内の「石破おろし」の動きを警戒しつつも、国民民主党をはじめとする野党の顔色を常に気にする必要がある。仮に首相続投を果たせたとしても、その先は茨の道が続いていくのだ。与野党が伯仲する結果となった今回の衆院選。ある自民党閣僚経験者は石破氏の今後をこう予想する。「『石破おろし』は急ぐ必要がない。来年度予算の成立と引き換えに、石破氏は来年春に退陣することになるのではないか。そこからが与党も野党も本当の勝負のスタートだよ」。