乾癬は皮膚の病気じゃない?人にうつらない…?「世界乾癬デー」に知る病気の正しい理解と偏見をなくす取り組み

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肌がかゆかったり、赤くなっていたとき、つい放っておいてしまう人もいるだろう。

そんな人には、「乾癬(かんせん)」という病気があることも知っておいてほしい。

10月29日は「世界乾癬デー」。

少しでも「乾癬」を知る人が増えれば、と啓発活動をするのが医薬品開発を行うアムジェン株式会社。治療薬の開発と提供にとどまらない、患者の生活や治療をサポートするための活動に取り組んでいる。乾癬の疾患啓発活動もその一つだ。

アムジェン株式会社 メディカルアフェアーズ本部 炎症・免疫性疾患領域 アソシエイトディレクターの小川竜一さんは、「患者さんがこの疾患について理解を深めることも大事ですが、まだ知らない方や患者を支える周囲の方への認知や理解も深まってほしい」とする。

まず、「乾癬とは何か」を解説。押さえておきたいのは、皮膚だけの病気ではないということ。

乾癬は全身性の慢性炎症性疾患

乾癬は、免疫反応の異常によって発症する全身性の慢性炎症性疾患。

日本における罹患者は40〜50万人以上と推計されているという。つまり1000人に4〜5人以上が発症していると考えられている。主に5つの病型に分かれるが、尋常性乾癬が最も多く見られるという。

銀白色の鱗屑(りんせつ)に覆われた境界鮮明な紅斑(こうはん・皮膚が赤みをおびること)が特徴で、主に肘や膝などの関節付近で確認されることが多いが、頭皮や爪にも症状が現れることもある。

また、8割以上の患者がかゆみを感じているという報告も。

発症の原因は詳しくわかっておらず、体内の免疫バランスの異常によって起こると考えられている。発症年齢は乳幼児から高齢者と幅広いが、ピークは20歳代と40〜50歳代だという。

皮膚に症状が現れたり、かゆみを伴ったりすることから皮膚の病気と思われがちだが、乾癬は全身の炎症性疾患。

体内にも疾患が生じていることもあり、「ただのかゆみ」などと放置することなく、病院で受診してほしいと小川さんは話す。

「受診せずに症状をコントロールできていない状態が長く続くと、重症化してしまうこともあります。重症化すると、例えば関節炎など生活の質を下げる合併症に発展してしまう可能性もあるのです」

大切なのは医師とのコミュニケーション

乾癬は人によって症状の現れ方も、重症度もさまざまで、医師による判断が必要になる。もちろん、乾癬かどうか、の判断も。

その際、どの専門医に診てもらうかだが、「まずは医師に診てもらうことを優先し、皮膚の異常があれば皮膚科に行ってください。普段から信頼するかかりつけ医がいる方は、その医師でも構いません。そこから専門機関に紹介してもらえる可能性もあります」と小川さんは話す。

乾癬は完治が難しく、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すことがある。そのため、多くの患者は症状の改善を望みながらも、長期間にわたる治療を続けることが困難となり、治療を中断してしまうことがあるという。

また、自分に適した治療法を見つけられずに諦めてしまうことも少なくないようだ。

治療のアプローチは、塗り薬や飲み薬、注射、光線療法などがあるが、患者それぞれの症状やライフスタイルで合う・合わないがある。

さまざまな治療法の選択肢と、人によっては長期的な治療の中で、ベストな選択をするためにも小川さんは「医師とのコミュニケーションの大切さ」を訴える。

そして、そのコミュニケーションで、患者の身近な人が間に入ることが、会話を円滑にすることもあるとアドバイスする。

「身近な人には生活のサポートもしていただきながら、患者と医師のコミュニケーションのサポートもしていただきたいのです。

今の治療法やご自身のライフスタイルなどを医師にうまく伝えられない患者さんが多くいらっしゃいます。身近な人が診察時などに間を取り持っていただくことで、患者さんを後押しできると思います」

病気への理解が進めば患者も過ごしやすい環境に

また、皮膚に症状が現れることや、かゆみを伴うことで、乾癬の患者は生活の質(QOL)に悪影響を及ぼしているといった報告もあるという。

「乾癬の患者さんは皮膚に症状が出るため、見た目や人目を気にしてしまいます。かゆみを伴うこともあり、コントロールできないと勉強や仕事に集中できないなど、社会生活に影響も出てしまいます。また、人目を気にしてしまうことで、人とのコミュニケーションを避けてしまうなど、さまざまな悩みを抱えているのです」

アムジェンもこれまで啓発活動を行っている。そのひとつ、WEBサイト「乾癬パートナーズ」では、病気の正しい理解や患者の声などの情報を発信してきた。

患者自身や周囲の人が疾患を理解するための情報から、乾癬という疾患はどのような病気なのかを理解してもらうものまでさまざまある。

皮膚に症状が現れたりすることから「うつるんじゃないか」と周囲が考えてしまったり、乾癬(かんせん)という言葉から、「感染」だと誤解され、「うつるもの」と思われてしまうこともあるようだ。

アムジェンの小川さんも「明確に、うつらない病気だとハッキリしています」と話すように、乾癬は「うつらない」。

「乾癬という病気を多くの方に知ってもらうこと。そして、病気の理解をしてもらう活動をしています。もちろん、すぐに何か行動してくださいというわけではありません。ただ、正しく病気を理解することが、乾癬の患者さんにとって過ごしやすい環境につながると考えています。そして、もう一つは、皮膚に異常を感じた際は、医療機関で受診してください、ということもお伝えしたいと思います」