海底の「地下世界」で発見、火山洞窟に豊かな生態系 新研究
(CNN)海底の火山洞窟にチューブワームや巻き貝などの生物の群れが生息しており、これまで知られていなかった豊かな生態系が存在していることが分かった。学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に15日に掲載された研究で明らかになった。
研究者らは2023年夏、シュミット海洋研究所の研究船で東太平洋海嶺(かいれい)の一部である中米沖の海底火山を調査していたときにこの生態系を発見した。
火山活動が活発なこの広大な海嶺は、太平洋の海底で二つの構造プレートが出会う場所にできている。海嶺に沿って熱水噴出孔、つまり海底の開口部があり、そこで海水と地殻下の高温のマグマが集まり、一種の海底温泉を形成する。
さまざまな海洋生物が噴出孔の周りに群生し、噴出孔からはバクテリアやムラサキイガイ、チューブワームなどの生物が極度の深海で生き残るのに役立つ成分が吹き出している。噴出孔の生態系は詳細に研究されてきたが、その下の領域はほとんど手つかずだった。
研究者らは遠隔操作探査機を使って海底下の一部を露出させ、驚くべき事実を発見した。噴出孔につながる洞窟には最大50センチもの長さの巨大なチューブワームやその他の生物が生息していた。この発見は、海底と海底下の生態系がつながっており、海底の上下で生命が繁栄できることを示唆している。
海底の「地下世界」地球の構造プレートの移動によって時間の経過とともに新しい熱水噴出孔が生じ、チューブワームなどの海底生物がこれらの新しい噴出孔に数年でコロニーを作ることはすでに知られている。
熱水噴出孔から放出された流体のサンプルに基づいて、海底の下に微生物が存在することもこれまでの研究で示唆されている。また、チューブワームが噴出孔付近の亀裂から数センチの深さに生息しているのも観察されたが、長さ1ミリ未満の小さなチューブワームの幼虫がどのようにして流れに逆らって泳ぎ、これらの空間に定着して成長できるのか、研究チームは確信が持てなかったという。チューブワームはフジツボなどのように動かず1カ所に定着して成長する生物だ。
研究の共著者であるサビーネ・ゴルナー氏は「そのため、チューブワームの幼虫は温かい噴出孔の流体とともに地殻の亀裂を移動し、下から表面の噴出孔に定着できると仮定した」と述べた。
研究の主任著者であるモニカ・ブライト氏は、深さ2515メートルの海底にメッシュ状の箱を設置し、地殻の亀裂からサンプルを採取するという実験を行った。
研究チームは遠隔操作探査機を使用し、海底の岩に小さな穴を開け、持ち上げた。探査機のアームが火山地殻の小さな塊をひっくり返すと、24度の温暖な水で満たされた熱水噴出孔の下の空洞が現われ、チューブワームの幼虫と成虫、巻き貝などの移動性生物、化学合成細菌の存在が明らかになった。
太陽光が届かない海底では、化学合成細菌は太陽光の代わりに化学反応を利用して糖を生成する。噴出孔の周りに群生する他の生物はこれを使って生命を維持する。
ブライト氏は「噴出孔の活発な生息地が二つ存在する。表面上と表面下の噴出孔生物は、下からの噴出孔流体と上からの海水中の酸素に依存して一体となって繁栄している」と指摘する。
海洋生物学者のアレックス・ロジャーズ氏は、これまで知られていなかったこの海底下生息地での生命の発見は、科学者が海の深部や海底で記録してきたたよりもはるかに多くの生命体が存在する可能性を示唆していると述べた。同氏はこの新しい研究には関わっていない。